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二十四話 諒真と勉強会(美月付き)②

「悠希って部活に入りたくないから特進クラスに行ったんじゃないんだな、てっきりそこまで頭はよくないけど、部活に入るのは面倒だから、特進クラスに入ったのかと思ってた」

余りにも的確過ぎる諒真の指摘にこいつ心が読めるのかと思ったが、勝手に勘違いしてくれているようなので、そのまま流す。

「当然だろ、俺はいい大学に入るために特進クラスに入ったんだ」

汐音が言っていたような動機を述べると、諒真の膝の上でくつろいでいた美月から横やりが入った。

「えー、悠希、俺は絶対に部活をやらないために特進クラスに入ったって言ってたじゃん」

そういえば、美月には特進クラスに進んだ理由を話していた気がする。

二か月前くらいの事だったので悠希はすっかり忘れていたが。

厄介なことに美月はその事を覚えていたらしい。


一瞬で動機がばれそうになった悠希は話題を逸らすことにした。

「伏見と雪平はコーヒーいるか?」

そう尋ねると美月から「いる!いる!砂糖とミルク多めで」と元気な返事が来た。

「じゃあ、俺もせっかくだし、貰うわ」

単純な美月のおかげで話題を逸らすことができたらしい。


コーヒーを全員分入れて机に運び終わると同時、諒真がどきりとするような質問を投げかけてきた。

「悠希、お前女の人でも連れ込んでる?」

「……なんでだ?」

「いや、女の人が使う香水の匂いがするなと思って」

口調こそ、軽いものの、どことなく確信を持っているとでも言いたげな諒真の物言いに悠希は言葉を詰まらせた。

誤魔化すのは簡単、ただ、こういう時に中途半端に誤魔化すと、高確率でばれる。

それを諒真との付き合いの中で悠希は学んでいた。


しばらく、頭の中で作戦を練って悠希は全力で嘘をつくことに決めた。

「この前、母さんが来たからだろう」

「須美代さんが?」

矢城須美代(すみよ)、それが悠希の母親の名前だ。

何故、諒真が知っているのかと言うと、たまたま、この家で遊んでいた時に、須美代が来訪したからだ。

もともと、破天荒な性格で長年一緒に暮らしてきた悠希でも彼女の行動はほとんど予測できない。

思い立ったが吉日ということわざを体現したような存在。

それが悠希の母親だった。


性格といい、外見と言い、諒真の彼女、美月に似ているなと悠希は感じている。

外見と言っても似ているのは身長だけで、須美代の方は美月には絶望的なまでにない果実が二つ実っている。

美月に行ったら絶対に殺されるから言わないが。


諒真に軽く頷いて肯定の意を示すと諒真から「須美代さん香水変えた?」という発言が聞こえて悠希は耳を疑った。

何故、諒真が息子も知らない母親の香水の事なんか知っているのか。

少し考えて結論が見えた悠希が口を開く。

「伏見、犯罪だけはやめとけ」

「いきなりなんだよ」

意味が分からないと言った様子の諒真に優しく諭すように悠希が言葉を続ける。

「いくら、お前がロリコンだからって、母さんはやめといたほうがいい」

暫く、悠希の言葉の意味を吟味していたようだったが、ようやく、分かったらしく、慌てて諒真が悠希の言葉を否定してきた。

「いやいや、俺、別にロリコンじゃねえよ、たまたま須美代さんと美月が使ってた香水が同じだったから覚えてただけ」

「何だ、つまらんな」

「人をロリコン呼ばわりしておいてそれはひどいぞ」

心底つまらなそうな表情を浮かべた悠希に諒真が少し苦々し気に言った。

おおよそ、美月に勘違いされそうになったのを少し根に持っているのだろう。

幸いなことに、美月はお昼寝タイムにでも入ったのか、諒真の膝の上で頭を揺らしていたが。


それにしてもまさか匂いで汐音の存在がばれそうになるとは。

少しひやりとしたが、何とかごまかせたらしい。

膝の上で眠る美月を撫でる諒真を見て、悠希はホッと息を吐いた。


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