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二十話 天使様の手料理は相変わらず絶品

いつものようにエレベーターを七階で降りて、鍵を開けようとしたところで悠希は鍵を汐音に渡していたことに気づいた。

チャイムを鳴らす前にドアノブを回してみると鍵が開いていた。

汐音がカギを閉め忘れるとは考えにくいので、恐らく、悠希のためにわざとカギを開けているのだろう。


ドアを開けると肉と野菜が混じりあった芳醇な香りが悠希の鼻に飛び込んできた。

心なしかいつもより足早にリビングに足を運ぶ。


「ただいま」

汐音に声をかけると、「おかえりなさい」と返事が返ってきた。

何だか、夫婦みたいなやり取りだなと思いながら、汐音が手をかけている料理を覗き込む。

「これは?」

「今日はトマト風味のロールキャベツにしようと思ったのだけど、もしかして嫌いだったかしら?」

少し不安そうに汐音が質問してくる。

「いや、俺は特に嫌いなものはないぞ、しいて言うなら、レバーぐらいだ」

「それならいいのだけど」

安心したのか、汐音に安堵の笑みが浮かんだ。

「別に俺の好みに合わせて料理しなくてもいいぞ、柏木の料理なら美味いだろうし」

そう言うと汐音が恥ずかしそうに瞳を伏せた。

「その、もしかして今のってプロポーズだったのかしら、だったらごめんなさい、まだ、そこまで矢城君のこと知らないし……」

事実を言っただけなのになぜかプロポーズしたことにされてしかも振られてしまった。


「別にプロポーズじゃないんだが」

そう言うと、次は汐音が少しだけ残念そうな表情を浮かべた。

「そう……」

汐音に悲しそうな顔をさせたくなくて、つい、いつもなら言わない言葉が口から洩れる。


「柏木は良いお嫁さんにはなれる……と思うが」

そう言うと汐音から笑みがこぼれた。

思わず漏れてしまったような笑み。

少しばかにされているような気がして悠希はムッとなった。

「何だよ?」

「フフフ、矢城君がお嫁さんって言ってるのが面白くて」

数日間、一緒にいくらしているが、相変わらず、汐音の笑いのツボはよくわからない。

ただ、泣いているより笑っている汐音を見る方が心が落ち着くのは確かだが。

いや、そうでもないか。

時たま、汐音が見せる心の底からの笑顔に何度もドキドキさせられていることを思い出して悠希は考えを改めた。


汐音が料理を完成させたところで、悠希は配膳を手伝った。

汐音にばかり働かせるのも悪いと思ったからだ。

白米をお椀についでいると汐音から「ありがとう」と感謝の言葉が飛んできた。

少しだけ感謝されて照れる汐音の気持ちが理解できた。

当たり前のことをしただけで、感謝される。

そのことがこんなにこそばゆいとは。


配膳し終わった料理を行儀よく、いただきますをして食べ始める。

汐音の席は対角の位置で以前と変わりない。


じっとこちらを見つめてくる汐音に気づくことなく、悠希はまず、ロールキャベツに手をつけることにした。

トマト風味と言うだけあって、赤みがかったスープに浸されたキャベツが少し赤く染まっている。

一口大の大きさのそれを悠希は口に運んだ。

最初に広がったのはやはりトマトの味。

次にキャベツのシャキシャキとした食感。

キャベツの葉の中にもトマトの味がしみ込んでいるのか、キャベツの味にほんのりトマトが絡み絶妙な味を醸し出している。

キャベツの殻を破ると、中から濃厚な肉汁が溢れ出して、トマトとキャベツに加わり、味を変化させる。


控えめに言っても最高の出来であるロールキャベツに思わず、最初の一つをすぐに完食してしまう。

「美味いな」

見た目が赤々しかったので、どんな味かと思ったが、肉の濃厚さとトマトのさっぱり感がマッチしていて美味しい。

悠希としては普通のロールキャベツよりもこちらの方が好きかもしれない。

これだけ、アレンジして美味しいとなると汐音が作る普通のロールキャベツも気になるが。


悠希の素直な感想に「そう、ならよかったわ」といつものように素っ気なく返答してから、汐音がようやく料理に手を付け始めた。

何時ものごとく、少し耳元を赤く染めながら。


食事をある程度、食べ終わったところで悠希は熱いお茶をフーフーと覚ましている汐音に話しかけた。

「そういえば、今日、スーパーに行ってたか?」

「ええ、トマトとコンソメがなかったから」

「そうか」

「お金机に置いてあったのを使っちゃったのだけど、ダメだったかしら?」

「いや、別にいいぞ、食材を買いに行ってくれるのは正直助かるし」

「一応、領収書とお釣りそこに置いてるわ」

汐音が指をさした方を見ていると、確かに置いてある。

一緒に置かれていたレシートをちらりと見ると、トマトとコンソメ以外は購入していないらしい。

汐音は金銭面でも律儀らしい。

悠希なら、親からお使いを頼まれたら、欲しいものをついつい買ってしまうのだが。


ついでに汐音の誕生日の日付を聞こうと思ったが、何でそんなことを聞くのかしらと冷たい瞳で見られる気がして、悠希にはできなかった。

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