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雲一つない青空に  作者: 凪浜てぃる
引っ越し
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序章②




 祖父母の家には、小さなお地蔵さんが立っている。もちろん庭に。帰省する度に帰る日の朝は挨拶の仕方もわわからない子供たちはいつもしゃがんで手を合わせていた。


 なので今日も今日とて、その習慣通りに、しゃがみ込んでから手を合わせる。


「今日からここの家主になります!

今までは帰り道の無事をお願いしてたけど、これからは、この生活の無事をお願いします。あとは、今後ともよろしくお願いします。」


 最後に一礼だけして、立ち上がる。膝くらいまでしかないけど、立派な祠付きのお地蔵さんだ。



 なんでここにお地蔵さんが立ってるか、祖父母に聞いたことなかったなぁ。なんて思い浮かべてた。別にホラーでもなんでもないよ。ただ知らないだけ。





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『家にあるものは大体そのままだから。』



 そう先日母は電話で言っていた。勝手口の鍵を開け、家屋へ入る。記憶にあった、祖父の釣り装備一式などがかかっていた帽子かけはなくなっていて、少し寂しく感じた。




「電気つけて、和室で荷物届くの待って、役場行かないと。母親にも無事着いたって連絡せねば。ま、お一人様なんで気楽にやりましょーか。」


 なんてぶつぶつ独り言を言いながら、一人でだだっ広い家の中を歩いて、奥の和室に着いて、畳の上に座った。



 正直、貯金はそんなにない。半年働かなかったらたぶんアウト。よくあるショッピングセンターで働く。というのも約1時間ほど運転しなければならないので、現実的には厳しい。


 近隣にあるのは観光名所。母はそこで学生時代にアルバイトでイカ煎餅を売っていたそうな。水族館や旅館などもある。観光産業で細々生きてる人以外は、みんな車で勤めに行く。



「私ここで何したいんだろ。結婚して住み続けりゃ親は大満足なんだろうけどなぁ〜。そんな気皆無だし、それはしばらく忘れて転職活動しながら1ヶ月くらいはまったりしよう。そうしよう。」


 とりあえずおなかすいた。そんなことを考え、脱力感から横たわる。しかし今は16時。夕食にはまだ、早いのだった。



「17時に荷物来るし、今のうちに邪魔にならないとこに持ってきた荷物運んでおこっと。」



 落ち着くまではしばらくは休めまい。もうちょっと。あと少しだけ。そんな抵抗をしていたが、諦めて動き出すまで10分程かかっていたのだった。




 

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