フロント業務
私が勤務する時間帯は、いわばフロントさんの《繋ぎ》だった訳。それまでは3人のフロントさんが24時間勤務で交代制だったのだけど、労基法で24時間連続勤務は不可だったからね。…で次のフロントさんが来るまでの間に私が入るようになった訳。丁度お昼が一日の締めだったので、売り上げや釣り銭等の引き継ぎもあった。一日の売り上げはPCで自動的に締めて上がって来る。それと各部屋の精算書をまとめてチェックして報告書に記載していく。これが結構大変で、慣れるまでは30分くらいかかる。その間にも来店退店のお客様の対応があるので一時間は二人体制が必須。
引き継ぎが終わって一人になると、あとは自分だけで対応しなければならない。約50室の全てはフロント内にある壁面のパネルによって管理されている。入室中、清掃待ち、清掃中、清掃完了、入室待ち、宿泊と休憩の違い、売り出し中止、メンテナンス中…全てが一目で解る様になっているが、ボタンの操作はスタッフとフロントでしなければならない。勿論、間違いがあれば大変な事になる。部屋の開錠には特に注意しなければね(笑)なので常にパネルとモニターの睨めっこ状態だ。モニターはパネルの上に四つ切り画面のものが6台も並んでいた。
お客様の入退室時には、ルームスタッフさんはエレベーター横にあるスタッフルームに待機するか清掃中の部屋に居るかで、顔を合わさない様に細心の注意を払う。気付かずに廊下に居るスタッフを見つけると、直ぐにスタッフルームに連絡する。『○○号室、退店します。』『○階エレベーター、上がります。』といった感じだ。だいたいがスタッフルームにもあるパネルで把握出来るのだが、たまに見落としてお客様と顔を合わせるような事があると、ソレはフロントの責任となるから大変なんです。
そんな訳で、昼間の短い時間とはいえ決して気の抜けない業務だった。客室の清掃にかける時間は休憩で約15分。宿泊で約30分。その差は掃除機をかける為である。静かな音の掃除機を使い、細かい所はコロコロで塵を取り、水周りとベッドメイクのスタッフが一部屋に三人で行なう。忙しい日には、三部屋ある狭い待合室を利用してもらう事もある。そこでウェルカムドリンクをサービスしてTVやゲームをしながら、お待ち頂く。昼間の『休憩』時間帯にも時々その部屋を使うことはあった。
風営法が変わってからは、管轄が警察と保健所の両方になった。それまでは《旅館業》という形で、いわばお目こぼし的に営業出来ていたのである。管轄が二つになると時折監査が入るので、これまたバタバタと大変である。その上、消防署からの立ち入りもある。当たり前のことではあるが、各部屋のスプリンクラーの点検に消火器の設置、避難通路の確保、厨房内の点検等である。時折、本社からサクラの電話があり、ホテルへの道順や時間帯ごとの価格等を質問される事があるので、ロールプレイング的に対応方法も予習しておかなければならない。抜き打ちテストの様なものだ。あとは定期的なエアコンの洗浄を業者に依頼…大変な金額である。TVが地デジになった時の費用も莫大であっただろう。各部屋にあるアメニティグッズのサービスも充実していくばかりである。食事もレストランに引けを取らない物を提供する。その為のスタッフもいた。それでもドッコイ営業は成り立って居るのだから、恐ろしきかなSEX産業である。