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ラブホにて…♡  作者: NON
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マグロ様の巻

たまたま夜勤のフロントの子が体調を崩して、私が替わりにシフトに入った。夜のフロントは、その日が初めてだった。夕方17時〜翌日13時迄のフロント業務は、結構忙しいという事も初めて知る。『休憩』から『宿泊』に変わる時間帯が迫る頃には、フロント業務もバタバタする。風営法の変更に伴って、それまでは各部屋で自動精算を済ませて退店出来たのだけれど、今ではフロントで請求書を受け取り精算を済まさなければならなくなっていた。フロントの小窓も以前はお客様と顔を合わさない様に工夫されていたが、普通のホテルと同じオープンな作りに変わっていた。なのでお互い顔を合わせなければならない。中にはクレジットカードで清算されるお客様もおられるので、忙しい時には他のお客様同士も顔を合わせる羽目になる。何とも言えない気不味い空気が漂う。それでもここのホテルは結構繁盛していた。大阪万博の年にビジネスホテルとして開業し、その後ラブホに改装されたのだ。その頃の面影は全く無いが、ラブホ独特の派手な外観でなかったせいか利用しやすかったのかも知れない。


その日の夜中近くに1組のカップルが入店した。パネルの写真と部屋の価格を見てボタンを押してからフロントで部屋の鍵を受け取り、エレベーターで部屋へと向かう。少し前まではそれも全て自動で出来たのだけれど、それも風営法で禁止されていた。お連れの女性はベロベロに酔っ払っていてマトモに歩く事すら出来ない。取り敢えず男性は部屋を選び鍵を受け取りエレベーターへと向かった。女性はもう自分のバッグも靴も放り出して、男性に抱えられる様にして部屋へと向かった。防犯の為、各階のエレベーターから部屋のドアの前まではモニターで監視出来る様になっている。それもフロントの業務なのだ。勿論、中の様子を盗撮とか覗き見とかは出来ない。エレベーターから降ろされた女性は、何と両脚首を掴まれて廊下を引きずられて行った。ドアを開け中に入れた後、女性のバッグと靴を放り込む。そこまでして連れ込むか〜と、笑えてきた。


しかし30分ほどしたところで男性からフロントに電話がかかって来た。『精算をお願いします。』『この時間だと御宿泊の料金になりますが?』『解ってる。その代わりマグロを一匹ベッドに置いてあるから、明日のチェックアウト迄よろしく頼むわ。』声を出して笑いそうになるのを必死で堪えながら『かしこまりました。』と答えた。精算さえ済ませて頂けたら、明日のお昼迄は一人でも滞在可能だ。帰り際に男性は『えらいモンを釣ってしもうたわ!』吹き出しそうになる。それでもちゃっかりコトは済ませたのだろうか?などと下世話な事を考える。


夜中の2時〜翌朝迄は比較的のんびりと過ごせる。ルームサービスを頼むお客様も、もういない。皆、疲れた身体をダブルベッドに横たえて寝入っている時間帯だ。こちらも数ある映画のDVDを勝手に観ながら、モーニングサービスの時間まで仮眠も出来る。たまに真夜中に『大人の玩具』なるモノを注文してくるお客様の為にルームスタッフさんに届けてもらうくらいだ。これがまた面白い。初めて見るソレは、よくあるカタチのモノの他に、コレってどうやって使うのん?なんて不思議なモノまである。開封する訳にもいかず、スタッフさんに教えてもらって大笑いしたりする。何事も勉強だわ〜と感心するばかりだ。(笑)


翌日のお昼前に女性からフロントに電話があった。『あの〜私、どうしてココにいるのでしょうか?』全く覚えていない様だ。『お連れ様はお先に帰られました。御精算も済まされておりますので、12時迄ならお客様の御都合の良い時間まで御滞在頂けますので、またお電話を下されば開錠させて頂きます。』『はぁ、そうですか…』そしてキッチリお昼にフロントに電話があった。マグロ様のお帰りである。その後の二人の関係が気になるが、もう二度とそのカップルは来ないだろう。(笑)

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