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想いは純粋なれど  作者: 宿屋
27/28

幕間 ~王と小娘~


『……ば―――っかみたい』

『うるせえクソガキ。俺だって必死だったんだ』


『あんなとこに壁作って。むちゃくちゃだよ』

『あー。あー。聞こえねぇ』


『あの人まで巻き込んでさ』

『ぁあん?俺はちゃんと言ったんだぜ!碌なことにならねえってよ!なのに力になるだの、放っとけるかだの、暑苦しくて煩いのなんの』


『え、あれ、そんな人、だっけ?』

『お前の知ってるアイツは、壊れちまったあとだよ。だから、お前を作ったんだ』


『……』

『そんな顔すんな。少なくともお前のおかげで、アイツは安らいで逝けただろうさ』


『ねぇ。なんで私は、あなたになれなかったの?』

『切り取った指から人形作って、本人になるかアホらしい。十人も作って、まともに動いたのはお前だけ。ナタリーだって、そんなもん作らされて最悪だったろうさ。だから逃げ出したんだ』


『そんなもんってなにさ』

『そんなもんはそんなもんだよ。なんだよその貧相な身体。真っ平らじゃねえか』


『あなたも同じじゃない!』

『俺様は男だからいいんだよ!』


『……でもついてないじゃん』

『ってめえええええ!クソガキぶっ殺す!!』

『やってみろ!!』









『あーあ……っこの、クソっ』

『あなたほんとに王さま?なんか弱い』


『うるせぇこちとら消えかけだぞ』

『あの大っきい身体使いなよ。強そう』

『いや、ありゃオマケだ。その頭らへんに生やしてるイケてる方がメインだな』


『……結局どれが本物なのさ』

『ホンモンも何もねえよ。俺もお前も群体だ。粘土こねるみてえに、好きな姿になるんだよ。アイツは、今のコレがお気に入りだった』


『だったら、そのままでいいじゃない』

『アイツの前ならな。でも人前だと恥ずいだろうが。王なら偉大じゃねえと』

『あー、だからキール気がつかなかったの』

『アントラーのじじいには見せてねえ、この姿は。北で知ってんのはアズールくらいだった』


『ゴメンね、身体。壊しちゃって』

『いいさ。アレは元から自爆用でな。お前の使い方は間違っちゃあいない』


『そうなの?』

『おう。国がフロイストに奪われそうになったら全部吹っ飛ばして、クレバスも塞いで通れなくして、ついでに全員埋めちまうための爆弾だ』


『埋める……』

『一人でも残すと火種になるからな。綺麗さっぱり滅ぼして、難民なんて作らねえのが一番だ。わかるだろ?』


『そう、かもしんない』

『ただテメエが無理に抑え付けたのだけは心配だ。ちゃんと崩れてくれたか――それとも、か』

『うん?』




『なあガキんちょ』

『なにさオッサン』


『お前の影、あれは大事にしとけよ。ホントは俺のもんなんだからな』

『……?』

『会って数日とは思えねえだろ。枝角に探させといた俺専用が、お前にもぴったりだ。よろしく言っといてくれ。壊してくれてありがとよ、ってな』


『何をどうやって言うのさ。私死んだんでしょ?』

『はぁ?』

『天国っていうところじゃないの?ここ』

『ばっか、無えよそんなもん。あったとしてテメエも俺も門前払いだ』


『じゃあ、なあにこのお花畑』

『俺の、あれだ、記憶だよ。魂の残滓、残り滓。アイツと最後に別れた場所だ』

『みれんたらたらだね』

『うっせ』

『あれ、消えちゃった』


『ああ、そろそろ時間だ』

『何の?』

『ガキの門限さ。家に帰れ』

『消しちゃった』

『じゃあ新しく作るんだな』



『あなたも帰るの?』


『いーや。世界に溶けて消えるだけ』


『私もそうなる?』


『いつかな。だが甘く見んなよ。死ぬに死ねねえ身体だ』






『――今更、後悔しても遅いぜ』







『……何を?』

『――そうかい。ま、いずれわかるさ』



『あばよ、レナーシア』

『ばいばい、ヒアリクス』


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