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舞い踊る胡蝶の愛  作者: 武田コウ
7/11

冷静な刃

 警察に事情聴取された。警察は嫌いだ。あの無能集団はなんの役にも立たない。


 唯ちゃんはかなりショックを受けたらしく今はカウンセラーのお世話になっている。まあすぐに元気になるだろう。私もカウンセリングを薦められたが急遽やるべきことができたので隙を見て逃げてきた。


 警察が精神的にショックを受けた私達を迎えさせるために両親に連絡したらしい。本当によけいなお世話、親が来ると行動が制限されてしまう。しばらく家に監禁されること間違いないだろう。


 コンビニに立ち寄る。廉価のレインコートを一つ購入。怪しまれないように細々とした雑貨も一緒に購入した。場所を変え、百円ショップで小ぶりな果物ナイフを購入。


 店を出る。


 さて、

 はじめようか。








 しっかりと記憶に焼き付けた不良たちの制服を調べ、学校を特定、その学校まで移動する。


 時間は午後二時、まだ授業中だろうか? いや、不良だからさぼりかな? 


 しばらくその学校のまわりをウロウロした後気がつく。たぶん不良たちも警察に事情聴取されているんじゃないだろうか。馬鹿か私は。自己嫌悪に陥りながら踵を返す。


 不意に目に飛び込んできた不良集団の姿。反射的に姿を隠す私。なんて運が良いのだろう、見つからなければしらみつぶしに不良の行きそうな場所を探すつもりだったのに。


 不良たちは何やらしばらく話をした後に解散した。皆別々に別れる。私の狙いはただ一人、リーダー格の三白眼男だ。


 静かに三白眼男の後をつける。まだだ、まだ早い。まだここは人通りがある。じっくり、じっくりだ。私は逸る気持ちを押さえつける。


 しばらくすると三白眼男は裏路地に入った。


 やっと、やっとだ。私は自分の顔が狂気にゆがんでいくのを感じた。


 通りに誰もいないことを確認するとすばやくレインコートを羽織り、果物ナイフを握り締める。ゆっくりと息を吐き出して呼吸を整える。そして私は音もなく男の背後に近寄ると、その無防備な背中に果物ナイフを深々と突き刺した。


 男が短い叫びをあげる。私は冷静にナイフを引き抜いた。血がレインコートに飛び散る。大丈夫、私はまだ冷静だ。


 自分がどんな状況にいるのかわかってない様子の男はフラフラと振り向いた。


 私は全力で男の首めがけてナイフを振るった。男が動いた為、照準がズレて男の肩付近に突き刺さる。


 肩に刺さったナイフを見てやっと自分の危機に気づいたのか、男は情けない声を上げながら逃げ出す。


 逃しはしない。


 大丈夫、私は冷静だ。


 私の方が冷静だ。


 男は恐怖と痛みでまともに走れないらしく、足をもつれさせながらフラフラと走る。


 いくら私でもあんな走り方の奴に追いつけない道理はない。


 人が来ると厄介だ。一気に終わらせるとしよう。猛ダッシュで男に追いつくと思い切り突き飛ばして男を転がす。男の顔は恐怖にゆがんでいた。


 突き刺す。引き抜く。また刺す。


 何度繰り返しただろう?気がつくと男は物言わぬ肉塊に変わっていた。ナイフが手から滑り落ち、コンクリの道路に当たって乾いた音を立てた。


「くふ、ふふふ」


 私はおかしくなっているのかな?なぜだろう笑いが止まらない。


「あはははははは!」


 空を見上げ、目玉をひん剥き、狂ったように笑う。ねえお姉ちゃん、すぐに生きがえらせてあげるよ、待っててね。











「ただいま」


 ナイフとレインコートを処分し終えた私は家に帰る。警察の事情聴取から逃げ出したことで母さんが色々と言ってきたが私の耳には入らない。今日はずいぶん汗をかいたのでお風呂に入る事にした。


 お風呂から上がった私は何気なしにテレビの電源を入れる。ちょうどニュース番組がやっていた。画面の向こう側にいるアナウンサーが言うには、今日この町で殺人事件が起こったらしい。


 男子高校生が一人、ナイフでズタズタにされたんだそうな。この事件は最近巷を騒がせている連続殺人犯による犯行として扱われているという事だ。どうやら私は知らないうちに連続殺人犯に便乗していたようだ。私はここ最近まで病院で過ごしていたので殺人犯のことは知らなかったが、まあ結果的に犯行がバレにくくなったからよしとしよう。


 今日は長い一日だった。もう寝るとするか・・・



 (そして物語のバトンは僕に引き渡される)

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