代償
自室のベッドで目覚めた瞬間、私は勢いよく起き上がった。
夢の内容を思い出し、口角が吊り上る。
やっと、やっとだ。西の魔女はお姉ちゃんを蘇らせてくれた。代償などいくらでもくれてやる。私にはお姉ちゃんが居れば何もいらない。
ドアを開け、隣にあるお姉ちゃんの部屋へ向かう。高鳴る胸を押さえ、私はお姉ちゃんの部屋の前に立つ。控えめにノックを行い、二回、三回。返事は無い。眠っているのだろうか?
「お姉ちゃん、入るよ?」
一言声をかけてからドアノブを捻る。鍵などは掛かっていないようで、ドアは何の抵抗も無く開いた。私は部屋に入り、そして絶句する。
「なん……で?」
かつてセンスの良い小物で埋め尽くされていたお姉ちゃんの部屋は、何故か物置へと変わっていた。そこにお姉ちゃんがいた痕跡は残っていない。
「なんで? どういうこと?」
私は震えの止まらない体を引きずって一階に下りる。ちょうど朝食の準備をしていたらしいお母さんが、私の足音を聞いて振り向いた。
「彩ちゃん?どうしたの、顔が真っ青よ」
私を心配して駆け寄ってきたお母さんをギロリと睨み付ける。
「どういうこと?なんでお姉ちゃんの部屋が物置になっているの?」
私の問いに、お母さんは訳がわからないといった表情で答える。
「何を言ってるの?アナタは一人っ子よ」
その言葉を聞いた瞬間、私は理解してしまった。「死者を蘇えらせる為には、それ相応の代償がいる」気づいてしまったのだ。
向こうの世界でお姉ちゃんが蘇る代償、それは、こちらの世界でのお姉ちゃんの存在そのものが無くなってしまうことであると。
「はは、許さないよカイン君」
君だけが幸せになるなんて決して許さない。そして、お姉ちゃんが消えたこの世界にも未練は無い。この世界と向こうの世界はつながっている。そして、私だけ奪われて君が奪われないのは不公平というものだ。だから……。
「私が君から奪ってやる」
私はお母さんをすり抜け、台所へ立った。野菜を刻んでいた包丁を手に取ると、ごく自然な動作で自分の喉を切り裂いた。
(そして、彼女は笑いながら死んでいった。
この世界と僕の世界は繋がっている。この世界で彼女が死んだのなら、近いうちに僕も死んでしまうだろう。
だが、後悔はない。姉さんを蘇らせた時僕は自分の命と引き換えにする覚悟はできていた。
ただ一つ心残りがあるとすれば、それは彼女が絶望のうちに死んでしまった事だ。もう叶わぬ事だが、僕は彼女にも幸せになって欲しかったのだから)
二匹の蝶は舞い踊る
その命が尽きるまで




