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ベネット遠征伝~女を汚す奴は、許さねぇ!~  作者: 神羅神楽
第九章 小夜~イジワール紳士とオリジン・イヴの剣~
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眠らない月

いろいろマンネリ化してきたなぁ……と、思う。

 桃介は、意識を取り戻して、仰向けに倒れている状態から起き上がった。


「ん……なんだ、ここ?」


 そこは白い大理石の円盤の上で、円盤と円盤の間にいくつも橋がかかっている、空中庭園のようだった。


 そして彼の前に、一人の美しい女性が座っていた。彼女は羽衣を着て、天使のようだった。桃介は一気に緊張した。


「あ、あ、あなたは?」


 女性は手を羽衣の袖で覆い、


「みなさんを招集した、サイフォスという者です。第七天使です」


 次々に小夜や竜一、そしてイジワール紳士も起き上がる。


「なんだ、ここは?」


 イジワール紳士はぽつりとつぶやく。


「助けて欲しいのです」


 サイフォスが言った。


「詳しい説明は省きますが、神の御計画に必要な、『オリジン・イヴの剣』が、ジョーカーズという悪の組織に狙われているのです」

「ほーう」


 イジワール紳士はあくどい笑みを浮かべて聞く。


「どうかその剣の封印を解き、それを『エリザベス』という女性に渡していただきたい。私の要求は、それだけです」

「報酬は幾らだ」


 イジワール紳士がすかさず口に出す。


「あなたの望みのものを何でも差し上げましょう」


 小夜はその言葉を受け、


「そんなことより、私たちを元の世界に帰してよ!」


 サイフォスはほほ笑み、


「ええ、剣の封印を解いたら帰してあげましょう。それではみなさんを遺跡へとご案内します」


 サイフォスは手を掲げた。


 すると上空に巨大なワープホールができて、桃介たちはそこへ呑み込まれた。


「「わあああああ!!」」




 気が付くと、みんなは砂漠に転がっていた。


「うぇっぷ! 口に砂が入りやがった!」


 桃介がぺっぺっと砂を吐き出した。

 そこは青空と地平線、そして砂以外、何もない、太陽の照りつける砂漠。

 水も何もない。


「こりゃあ……大変なことになりそうだねぇ……」


 竜一は呟く。


「遺跡なんてどこにあるのよ! つか、大体アンタ誰よ!?」


 小夜がイジワール紳士の方を指差す。


「うるせえガキ共だ。俺様はイジワール紳士。世紀の大怪盗さ。それ以上の質問は受け付けねぇ」


 イジワール紳士はごく簡単に自己紹介した。

 桃介たちも自己紹介した。


「で、遺跡なんてどこにあるのよ」

「さぁな、どっかに埋まってんじゃねぇか?」


 桃介はぼんやりと呟く。


「まぁ……手分けして探すしかないようだねぇ……」


 そうして照り付ける太陽の下、四人はひたすら砂漠を探索した。


 が、微塵も見つけられず、どんどん陽が沈んでいった。


「うぇ~ん!! おうち帰りたい! ママのごはんが食べたいよぉ! 喉渇いたよぉ!」


 小夜は大声で泣き出した。


「確かにこのままじゃ、野垂れ死にだな」

「そんなんやだよ! 星空愛花ちゃんのDVDまだ全巻揃えてねぇのに!」


 桃介も半泣き状態。

 そして、夜を迎え、みんなは砂の上で眠り始めた。


 ただ一人、イジワール紳士は目を覚ましていた。


「やはり夜の砂漠は寒いな……」


 そして砂漠の砂をひとつまみした。


「やけにガラス質が多いな……」


 不思議に思っていると。


「!?」


 月明かりを反射して、硝子でできた巨大な建物が聳え立っているのが見えた。


「嘘だろ……」


 これが、オリジン・イヴの邸宅『眠らない月』であることを、彼らは知らない。


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