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ベネット遠征伝~女を汚す奴は、許さねぇ!~  作者: 神羅神楽
第六章 ドロシー~エルザのトキメキ☆クリスマス~
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クローバーズのクリスマス

今回の登場人物の出典元は、「オズの魔法使い」です。つっても、ドロシー以外出てきません。

 12月を迎えた。

 大陸ユークリッドの一部の国には「クリスマス」という行事が、我々の世界と同じようにある。

 イエス・キリストがお生まれになった日、ではなく、かつてのユークリッド創成期に、大戦争があり、天からのみ使い「サンタクロース」が現れ終結させた日、と、なっているが、偶然にもその日は我々のクリスマスと同じく12月25日なのであった。そしてその前日のイヴ、ユークリッドの一部の文化圏ではお祝いし、「サンタクロース」と称される戦士に扮して父親たちは子供たちに夜こっそりプレゼントを寝ているところに置くのだ。子供たちはもちろん、英雄「サンタクロース」が本当にやってくると信じている。


 そして、クローバーズ本社。

 みんな、今日はどことなく落ち着かない。

 仕事の依頼も入ってはこない。良いことではあるが。


「あの……べネットさん」

「何だよ……」

「今晩……デートしません?」

「まーな……俺も連れていきてぇところを考えてたところだ」

「本当に!?」

 エリザベスはベネットにくっつき、目をきらきらさせた。

「ダーシー」

「なんだ、コリンズ女史」

「……今夜、仕事終わりそう?」

「……まあな」

「……一応、レストランとホテル予約取ってあるんだけど」

「そうか……じゃあ、まあ、頑張るよ」

 そのやりとりを見てベネットが、

「お前ら、いつから付き合いだしたの?」

「「……さあ?」」

 正確には、あの閉じ込められた事件以来だろう。

「あーあ、あたしのところにサンタさん来ないかなぁ」

「まったく。これだからおこちゃまは平和で羨ましいのであーる」

「あんた、予定ないんでしょ? プークスクス、顔そんなに悪くないくせに、変態な性格で、女寄りつかないんだ」

「エルザよ」

「あん? なんだよ」


「残り物同士、今晩我々も、一緒に夜の街に出かけようではないーか?」

「えっ……」

 顔を真赤にさせるエルザ。

「それって……デートのお誘い?」

「何とでも受け取ればいいのであーる。尤も、私にそんなつもりはないーが」

「ふん……考えとく」

「来ても来なくてもよいーが、午後8時30分、エンパイアタワーの前で待っているのであーる。30分経ったら帰るのであーる」

「勝手にしな!」

 エルザは面白くなかった。

 だが、不思議な感覚。

「……なんで、胸の鼓動が止まらないんだろう……」

 嬉しかったんだろうか。

 あんなに嫌いだった奴と、憎い奴と、クリスマスの夜を過ごすなんて……。

 でも、

「あいつ……あたし嫌いなはずだけど……あいつはあたしが本当に嫌なこと何ひとつしてこなかった……むしろ、笑わせてくれたことばっかり……」


「あたし……ウィッカムに恋して……いやいやいや、そんなことありえない! ありえない!」

 首をぶんぶん振るエルザ。

「おーい、お茶もらえるかー」

「は、はーい!」

 エルザはダーシーの声に急いで給湯室へ向かう。


……………………


 午後二時。

 ひとりの少女が、家に籠っていた。

 学校にもいかず、ベッドで小説を読んでいた。

「……パパ。どうしてサンタさんは来なくなっちゃったの……? 私が異能を使ったから……?」

 両親との家族写真。一人っ子の彼女、ドロシーの両親は、ジョーカーズに殺されたのだ。

「パパ……ママ……私、寂しいよ……こんな生活やだよ……」

 ドロシーは涙が目からあふれ、何回流したか分からない涙を流した。


……………………


 午後六時


「「メリー、クリスマース!」」


 クラッカーが鳴る。

 クローバーズ本社では、定時後、午後7時までちょっとしたクリスマスパーティーをやることになっていた。まさにホワイト企業である。

「賛美歌でも歌うであーるか」

「俺そんなもん歌ったことねぇ」

「ケーキ! ケーキ!」

「エリザベス、よだれ、よだれ!」

「ダーシーチェアマンも可愛いことするのね」

「うるせえな。親睦を深めるのは結束を固める。ちなみに、今夜は禁煙だ」

 ベネットはちっと舌を鳴らす。

 シャンパンを開け、グラスに注ぎ、乾杯し、全員口をつける。

「経費削減で、スーパーのシャンパンにしちまったんだが、どうだろうか」

「まあ、悪くはないわね」

「ケーキも美味しいです!」

 エリザベスは甘いものに目がないのだ。という設定を今付けた。

「それじゃあプレゼント交換! 好きな相手に各々のプレゼントを!」

「じゃあ私から! ベネットさん、いつもありがとうございます! 愛してます!」

 そう言って、箱を渡した。

「開けていいのか?」

「どうぞ!」

 開けると、ネックレスが入っていた。

「私を抱くときは、必ずそれつけてくださいね。ベネットさんのワイルドなボディに似合うと思います! 私、メロメロになっちゃいますから!」

「お前には節制というものを教えねぇとな……まぁ俺からもプレゼントだ」

 ベネットはブランド物の財布をプレゼントした。

「ホント、ベネットって、無難なもの選ぶわよねぇ……」

「でも嬉しいです! ありがとうございます!」

 エリザベスはベネットの頬にキスした。

「次は俺かな。コリンズ女史、いつもありがとう」

 そう言って私のは。

「何よ。ネックレスじゃない。被ってるじゃない。私にも脱げっていうの……?」

「イエ……ソウイウワケデハアリマセン……」

 ふん、と女史は鼻を鳴らし、

「いちおー、持って来たわ。感謝しなさい、スケベチェアマン」

「だからちげーって!」

 女史は、ピアスを渡した。

「こんなもん職場につけてられっか」

「だからぁ……もぅ、職場じゃなくても私たちだけのとき……その……ええいもうとっとと受け取って!」

 女史は顔を真赤にしていた。ダーシーは女史を見上げ(女史より背が低いため)、

「ありがとう」

 と微笑んだ。

「次は私であーる。エルザ」

「えっ……!?」

 まさかのウィッカムの声に、エルザは驚く。

「お前、そんなビッチな恰好で寒いであろーう? コートを買ってやった。感謝するがいーい」

 ウィッカムはコートを渡した。

「あ……ありがと」


 このとき、エルザは困惑していた。


「じゃあ……あたし……」


「ダーシーチェアマン、いつもありがとうございます」

「お? なんだこれ、マフラーか。何、俺の名前が入ってる! 自分で編んだのか?」

「うん……そうだよ?」

「ありがとう、大事にするよ」


 名前を編んだのはミスだった。

 そうでなければ、ウィッカムに渡せたのに。

「さて、私はこの辺で失礼するのであーる」

「ウィッカム、どうしてだ?」

「なんだか今、こういう気分になれなくなったのであーる。帰るのであーる」


 ウィッカムは何も渡されないまま、出社した。


 私の……せいだろうか。


 ふん、あんな奴……!


 エルザは自己嫌悪と葛藤していた。


「どうしたエルザ、顔が暗いぞ?」

「う、ううん! いいの、続き楽しも!」


 そうして、パーティーは再開された。




……………………


 夜になり、ドロシーの家を、人影が屋根の上から見下ろしていた。


「HAHAHA! ターゲットの家についた。ほう……数年前のジョーカーズ抗争で生き残ったギフテッド、実に価値がある、HAHAHA! さて、あとは彼女をスマホのカメラに撮り、クローバーズに脅迫状を送信、と。HAHAHA! エリザベスとやら、姐さんがてこずったらしいが、この私が必ず略奪してみせるさ! HAHAHA!」


 ジョーカーズの魔の手が、ドロシーに伸びようとしていた……。


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