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ベネット遠征伝~女を汚す奴は、許さねぇ!~  作者: 神羅神楽
第五章 ハーマイオニー~ダーシーの家族愛~
18/42

ダーシーの秘密

イライザの正式名を訂正しました。サクラダファミリア→サグラダファミリア。イライザは素数の章に出てくる予定です。

 ユークリッド大陸上空、ヴァルキリア空賊戦艦内。

 金髪のハーマイオニーが、X字型の拘束具にブラウス一枚で拘束されていた。

 服は鞭で敗れ、傷がところどころできていた。

「へへへ……大空賊のボスが、ずいぶんエッロイ姿になったなぁ」

「なあ、お頭、こいつ犯していいっすよねぇ? こんなでけえパイオツして、犯させてくださいって言ってるようなもんじゃないすか」

 するとハーマイオニーは声を荒げ、

「好きにしな、こんな78のババアの肉体で良ければの話だがね!」

「うるせえんだよ!」

 構成員がまた鞭をふるう。ハーマイオニーは悲鳴を上げる。

 すると頭と思われる、帽子を被り、仮面に顔を隠し、マントに身を包んだ男が、

「やめておけ。ビショップ・ガール様に殺される。ビショップ・ガール様は、エリザベスとかいう女が来るまで、拷問以外一切この女に手を出すなと言っていたからな」

「性的拷問は拷問に含まれないんすかぁ~?」

 ゲラゲラ下卑た笑みを笑い声をあげるヴァルキリア一同。

 頭はハーマイオニーのところへ行き、

「いい加減吐けよ」


「お前のお孫さんは、どんな異能持ちなんだ?」

「……フライングだよ。飛ぶしかできない能無しさ」

 頭はしばらく黙ってから、

「そんな異能で、ビショップ・ガールズ様たちジョーカーズが、ダーシー・カリカチュアを恐れるわけがないだろ」

 鞭を持った構成員はたきつける。

「教えろよ。ダーシー・カリカチュアの本当の異能と、彼の正体をよぉ。早く言わないと、鞭でお前の豊満なボディが丸見えになっちまうぜ?」




 ウィッカムの所有する飛空艇で、クローバーズ一同はヴァルキリアへ向かっていた。

 ウィッカムはエリザベスに拳銃を渡した。

「え……いいんですか?」

「あんなことをされたときはさすがに焦ったが、チェアマンの言う通り、お前を丸腰にするのは危険なのであーる。ちょっと使い方が複雑だから、ヴァルキリアにたどり着くまでにレクチャーしてやるのであーる。くれぐれも、使い時をまちがえないよーにな」

「……はい!」

 エリザベスは強くうなずいた。

 ダーシーの母親は、今はシェルターに入っている。

 本当なら優先的にシェルターに入れるべきだったのだろうが、諸事情により遅れた、とダーシーは弁明した。

「作戦としては、まず外側から銃撃戦だ。それについてはウィッカムにお願いする。非常に危険な任務だが、できるか?」

「私を誰だと思っていーる。天下無双のウィッカム様であーるぞ?」

「ならいいが。そしてエルザのワイヤーで俺たちは潜入する。ベネット、コリンズ女史、エルザを中心に、敵たちを制圧する。そして内部に入り、おばあ様を救出だ。だが気をつけたいのは、ビショップ・ガールというジョーカーズだ」

「ビショップ・ガール? なんだそりゃ?」

 ベネットが首をかしげる。

「《エクトプラズム》という異能持ちだ。霊体を出現させ、武器を持たせて攻撃してくるそうだ。こいつらはベネットのポインターが利かない。霊体だからな。それだけが厄介だ。本体のビショップ・ガールも、高い戦闘能力を持っている。気をつけて臨むように」

「ラジャ」

 コリンズ女史が敬礼する。




──ヴァルキリア。

 甲板で、一人のセーラー服を着た、銀髪を髪留めで結った少女があやとりをしている。そこにヴァルキリアの副艦長が来る。

「……ダーシーのことは聞き出せたんか?」

「いえ、ハーマイオニーはなかなか強情でして……」

「はー、そうか。せやったらイライザ姐さんの命令には反するけど、脱がして滅茶苦茶に犯させたろか。お前らもうずうずしてんのやろ。パイオツでかいからなー。ムカつくわ、うちも揉みしだきたいわー」

 にっと笑みを浮かべる少女。歯の矯正具がむき出しになる。そう、彼女こそが、ビショップ・ガールなのである。

 そんななか、突如として船体が揺れた。

 構成員が駆け寄って来た。

「大変です副艦長! 何者かがこちらに銃撃戦を!」

「すぐにお頭に伝え、迎撃するよう伝えろ!」

 構成員は走って行った。

 ビショップ・ガールはくすくす笑い、

「ついに来たなぁ。愛しのエリザベスちゃん。早くあの子血まみれにして泣き顔見たいわぁ。可愛い泣き顔やろなぁ」




──クローバーズ飛空艇。

「おらとっとと落ちろやぁ! 全員ぶっ殺したるわぁ!」

 ウィッカムが発狂しながら、銃撃を始めていた。

「エルザちゃん、ウィッカムさんて、スイッチ入るといつもああなの?」

「そうだよ。気持ち悪いでしょ?」

 ベネットはヴァルキリアを睨み付け、

「ビショップ・ガール……どんな野郎だろうな。一戦交えるのが楽しみだぜ」

「ビショップ・ガールは野郎じゃなくて女よ、ベネット」

「ウィッカム、今ヴァルキリアとの距離はどれくらいだ?」

「あぁ!? うるせぇなぁ!? あと300メートルぐらいだよ! てめえらもそろそろ準備しろ!」

 ダーシーたちは、パラシュートを全員に着せ、ハッチを開けた。風が、彼らを強く打つ。

「エルザに捕まり、《ワイヤー》で一気に乗り込むぞ。風が強いから、俺は羽根を使わず乗り込む」

「ダーシー」

「なんだ、女史」

 コリンズ女史は心配そうな顔をして、

「あんた、自分が足手まといになるとか考えたことないの? ろくなギフテッドじゃないのに」

 ダーシーは暫く黙ってから、

「全然考えたことないね。俺がいないと、お前らまとまらねぇだろ。行くぞ! 頼む、エルザ!」

「《ワイヤー》!」

 エルザはワイヤーを放ち、敵艦の手摺に巻き付けた。

「飛ぶぞ、お前ら!」

 ウィッカムは叫び、みんなエルザにしがみつき、飛び下りる。ふりこのように糸は垂れ落ちたが、エルザがワイヤーを収縮させると一気に収縮し、皆飛び跳ねて、着地する。

「敵が来たぞ、撃て!」

 構成員たちが銃撃を始める。コリンズ女史とエルザとダーシーは銃撃を避けながら船内に潜入し、ベネットとエリザベスは甲板で戦った。

「エリザベス、今度はてめえがてめえを守ってみろ!」

「はい、ベネットさん! 《command:type-A》!」

 銃は機関銃のような形に変わり、レーザーガンとなって乱射し、敵たちを次々と倒していった。

「わ……わ……すごい……!」

「おらあてめえら余所見してんじゃねぇ《ポインター》!」

 ベネットも矢印を大量に発射し、次々に構成員たちの急所を貫き、倒していき、とうとう残された構成員たちはパラシュートを広げて飛び下り投降した。

 そして、残されたのは。

「うっふふ~♪ ずっと待っとったんやでエリザベスちゃん。なんやそんな物騒なもん持って。可愛げないなぁ」

「あなたが……ビショップ・ガール……!」

 セーラー服の少女はぴょんと甲板から飛び下りる。スカートがひらりと舞い、革靴の音をこつこつ鳴らし、彼らの前に対峙する。ベネットはエリザベスの前に出る。

「いけすかねぇ性悪女だ。早く前に出ろ。殺してやる」

「う~わ、ゴツイ男やなぁ。イケメンやけど、うちの理想は王子様タイプやからなぁ。その顔、血に染めたるでぇ」

「上等だ、《ポインター》!」

 黒い矢印を放つ。

 しかしビショップ・ガールはそれをいともたやすく手でつかむ。

「切れ味上等のつもりやろうけど、上級ギフテッドには効かへんのやで。あんたの本気はそんなもんかい!!」

 ビショップ・ガールはベネットの矢印を振り上げ、そして地面にベネットごと叩きつけた。

「ベネットさん!」

「《エクトプラズム》!」

 ビショップ・ガールの周囲に、白い精霊が7体出現する。それらは皆、機関銃を持っている。

「ベネットさん、起きて、殺されちゃう!」

「死ねや、ベネット」


「ビショップ・ガール、よくやってくれてるわね」

 突然声がした。そう、ベネットにとっては忌まわしい、聞き覚えのある声だ。

 ()()は、巨大な傘をパラシュート代わりにし、ふわりふわりと舞い降りる。

「姐さん!」

 ビショップ・ガールは歓喜の声を上げる。

 

白い着物を着た、イライザ・サグラダファミリアの姿が──。




 戦艦内。

「おらてめえら、俺はよぉ、エンプティと同じかもしれねぇ、だが、エンプティを見たら丸腰でないと思え!」

 機関銃を構え、そう叫ぶダーシー。構成員たちの死体が転がり、残されたのは、ダーシーの祖母と、ヴァルキリアの頭である艦長、サムズ。

「遅れましたが、おばあ様、お久しぶりです」

「ダーシー、馬鹿な真似はよしな! あたしなんかのためになんでこんなところまで来たんだい! とっとと逃げな!」

 ハーマイオニーが叫ぶ。

 サムズは仮面に表情を隠し、帽子を深くかぶり、マントを揺らしながら近づいてくる。

「ヴァルキリアへようこそ。私は艦長のサムズだ。悪いが、ハーマイオニーは渡せない。ビショップ・ガール様の命でな」

「うるせえ、とっとと死にやがれ!」

 彼は機関銃をサムズに乱射した。

 しかし。あろうことか、それはすべて貫通した。

「んなっ……」

「残念だが、このマントの下は空洞なんだ。私は悪霊で、しかもギフテッドなんだよ」

「くっ……じゃあ私の異能も通じないっていうの……?」

 コリンズ女史が唇を噛みしめる。

「その異能自体ももはや私の前では意味がない。《パンデミック》!」

 強い光がサムズから放たれる。三人は目を瞑る。

「何が起こったというの……?」

 女史が自分の手足を見る。

「試しに異能を使ってみるといい」

 サムズは勝ち誇ったように言う。そこでエルザが、

「《ワイヤー》! ……あれ?」

 ワイヤーが出現しない。エルザは全身の鳥肌が立った。

「嘘……でしょ……?」

「嘘ではない。現実(ほんとう)だ。私の《パンデミック》は、一定時間、光を浴びた者の異能を白紙にする。このハーマイオニーも、そうして捕えた。さて、私も武装しようとしようか。死ぬ時間だ。残念だったな」

 サムズはライフルに銃弾を装填し、構える。

「さよならだ」




「ダーシー!」

 ハーマイオニーが叫ぶ。 

「《キラー・チューン》と叫んでごらん!」

「えっ……!?」

 キラー……チューン……?

 なんだそれは。

「今ここで全部話す。ダーシー、あんたはまだ本当の異能に覚醒していない! 今しかないんだ、さあ、覚醒するんだよ!」

 ダーシーは戸惑ったが。

「……キ……《キラー・チューン》!!」

 すると。

 ダーシーは光輝き、同心円状の黄色い光に包まれた。

(俺の……本当の……異能(ギフテッド)……!?)

 俺の異能はフライングじゃなかったのか?

 ただ飛ぶだけの、能無し異能、それこそコリンズ女史に言われたように、足を引っ張るだけの異能じゃなかったのか?

 しかし。

 ダーシーは変貌した。


 白いタキシードを纏い、赤いゴーグルに、ヘッドフォン、そして口元にはマイク。なによりも、どういうわけか赤いエレキギターを持っている。


「な、なんだぁ!? こりゃぁ!?」


《キラー・チューン》。この瞬間から、ダーシーは未知なる異能に覚醒した。


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