ジョーカーズを助けよう!?(挿絵あり)
初めての挿絵。構図クソムズイ。お見苦しかったらすまないのであーる。
「スマヌガ……ゼンマイヲ……」
魚介人のようなサイボーグが、ぴくぴく腕を痙攣させながら波打ち際に倒れている。
「なにこれ……サイボーグ?」
「さいぼーぐってなんだ?」
「うーん……なんて説明したらいいんだろう?」
腕を組むエリザベス。
「とりあえず、ゼンマイまいてやろう」
「そうだね……ちょっと怪しい人だけど……」
二人がかりで、ゼンマイを巻く。
数分後。サイボーグは立ち上がり、二人を指差して、
「フ……フハハハハ、マンマトダマサレタナエリザベス、オレハジョーカーズ十三部隊ノ一員ノ『バルトロイ』ダ!」
なんだかめんどうくさいので地の文で説明しよう!
バルトロイはジョーカーズ十三部隊のギルバート・サインという科学者によって作られた最高傑作のサイボーグなのだ! だがギルバートは過ちを犯した。バルトロイの人格を制御する機能をつけなかったことで、ギルバートはバルトロイに殺されてしまったのだった! とはいえこのへっぽこ科学者、他の分野の科学技術は天才的なのに、ロボット工学はちんぷんかんぷんで、何故かゼンマイ式でないとこのサイボーグを作れなかったため、バルトロイは自分でゼンマイを巻くことができず、いろんなところで優しい人たちに巻いてもらいながら生きながらえ、戦闘能力だけはめちゃくちゃ高いので、イライザ・サクラダファミリアの命でホテルを停電させてエリザベスを迷子にさせ、そこを襲おうとしたのであった!
「ククク……アネサンノネライハ、エリザベス、オマエノイノチ!」
「ど、どうして私の命を?」
「シラナイノカ、オマエハ、《オリジン・イヴ》ノ血ヲヒク唯一ノイキノコリナノダ!」
「オリジン・イヴ? そんなの私知らないですよ……?」
「ダマレ、コウシテクレルワ!」
バルトロイは右腕をカッターに変え、エリザベスに切りかかった。
「きゃあ!」
ところが、それは金属音と共に受け止められた。
コゼットが、トンファーの鎖で受け止めたのだ。
「キサマ……」
「わたし、戦闘民族。大切な友達傷つける奴、許さない」
コゼットの服には、数種類の武具が装填されているのだ。
「フン……ダガオレノスピードニツイテイケルカナ?」
「手の内ばらす奴、馬鹿。《アクセラレート》!」
二人はすさまじい速さで、バルトロイが殴り、コゼットがそれを受け止め、そのまま背負い投げし、バルトロイは着地した反動で突進、そこをコゼットがひらりとかわし、そのついでに蹴りをかます、しかし鋼鉄のバルトロイには無力、バルトロイはジェットを噴射しレーザー光線を放つ、しかしコゼット当然のようにかわし、ワイヤーを取り出してバルトロイを拘束、しかしバルトロイ、怪力で拘束を解く、再びバルトロイの右ストレート、しかしコゼットそれを受け止める!この間約10秒!
「ハア……ハア……キサマ……ヤリオルナ……」
「お前、弱い、全然余裕」
「キサ……マ……」
そこでバルトロイはぶっ倒れる。
「ん、どうした……?」
「ク……ゼンマイガ……キレタ……オネガイ……タスケテ……」
「コゼットちゃん、チャンスだよ、逃げよう!」
呆気に取られていたエリザベスは大声でコゼットに呼びかける。
しかし、コゼットは。
「ちょっと、コゼットちゃん、何してるの!」
なんと、バルトロイのゼンマイを懸命に回していたのだ。
「なんで……どうして……そいつはコゼットちゃんとわたしを殺そうとするんだよ?」
「わたし……困ってる人、ほっとけない」
わたし、数年前、ジョーカーズに島を襲われた時、一人だけ強いジョーカーズいた。そのジョーカーズ、同じ他のジョーカーズが女に乱暴してるの見て、「姐さんはそんな命令してねぇだろ!」って、そのジョーカーズ、殺した。それ見て、私学んだ。どんなことがあっても、困ってる人、助けなきゃだめ。
姐さんというのは、イライザのことを指すのだろう。
その話を聞いて、エリザベスは。
「そっか……わかった、私も手伝うよ」
「アア……アリガトウ……モウオマエタチヲ襲ウノハヤメヨウ。ネジガマケタラニゲテヤル」
もちろんバルトロイは本気でこんなことを言っているわけではなかった。
(ククク……チョロイオンナドモダ……今度コソコイツラヲ……)
「あ」
「あ」
率直に申し上げよう。
バルトロイのゼンマイが取れた。
「テンメエエエエエエナニサラシトンジャワレエエエエエ!!」
「ひ、ひいっ、ご、ごめんなさい……」
「す、すまない。力の入れ方間違えた」
「オレイッショウウゴケヘンネンゾ、ドナイシテクレルンジャボケエエエ!!」
何故か関西弁で罵るバルトロイ。
どうしてかジョーカーズ十三部隊の面々は笑いを取るスタンスのキャラばかり。
「と、とりあえずベネットさんに電話しなくちゃ」
「ベ、ベネット!? チョ、ソレダケハマジヤメテ、アイツマジツヨイカラ!」
お前、ジョーカーズ十三部隊の一人じゃなかったのか、と誰もが突っ込みたくなる。
エリザベスは水着のパンツに挟んでおいたスマホでベネットに電話しようとする、が。
「おーい」
男の声。だが、それはエリザベスには聞き慣れた声だった。
ダーシーがベネットを抱えて飛行してくるのだった。
「ダーシーさん! ベネットさん!」
着陸するやいなや、エリザベスはベネットに抱き付いた。
「無事だったか? なにかひどいことされなかったか?」
「大丈夫です。この子が守ってくれたから」
「エリザベス、こっち来い」
ドスの効いた低い声でダーシーがエリザベスを呼ぶ。
エリザベスはびくりと怯えつつ、ベネットから離れ、涙目でダーシーの許へ行く。
小柄なダーシーだが、エリザベスは更に小さい。
ダーシーがエリザベスを見下ろす形になり。
完全におこなわけで。
「ご……ごめんなさい……」
ダーシーは。
こつり、とかるくエリザベスをげんこした。
「二度とこんな真似はするなよ。どれだけ俺たちが心配したか、よくよく反省するようにな。でも、まあ、無事でよかったよ」
ダーシーの笑顔に、緊張が解かれ、エリザベスは号泣した。
ベネットはさっとエリザベスの側にまわり、肩を抱いてなだめた。
「で、そのサイボーグ、どっからどう見てもジョーカーズのものだな。ロゴマークのJがばればれだぜ」
「チガイマス……ジョーダンジャナイデス……ジョーカーデス、ア、ジョーダン、ジョーカーズ、ニテマスネ、オモシロイデショ……? ネ……?」
「ノルマの取れない営業マンかお前は」
ダーシーのツッコミに、ベネットは怪しい笑みを浮かべ、
「俺にいい考えがある。こいつをウィッカムの友人のビングリーとかいう科学者に、ウォッシュレット付き便器に改造してもらおう」
「そいつはいい考えだベネット。じゃあCUBEに収納して、持ち帰るか」
「ヤメテエエエエ!!」
そうして朝を迎え、コゼットを連れてコリンズ女史のいるホテルに戻ると、女史はエリザベスに泣きながら抱き付いた。
「あああああ私の大事なエリザベスちゃああん!! 無事でよかったわあああ!!」
「ごめんなさい、コリンズさん」
エリザベスはくすぐったそうに、女史の胸の中で笑みを浮かべた。
「ちょっとダーシーチェアマン、あなたエリザベスちゃんにひどく叱りつけたんじゃないでしょーね!?」
「なんだよ、ちょっとげんこで殴っただけだよ」
「なんですって!? って、何この子、すごく可愛いんですけど」
「可愛くない、あなたの方が美人」
「きゃあああああ!!」
コリンズ女史はコゼットに抱き付いた。
「やめろ、苦しい」
「この子うちの子にしましょ、ね? ねぇ、お小遣いあげるからウチで働かない?」
「その件なんだが、女史。エリザベスの話によると、このコゼットちゃんにはマムーというイルカの友だちがいるから、離れられないそうだ」
「そんなもん、あんたがアクアリウム買って飼えばいいだけの話じゃない」
「ちがう。そういう問題じゃない。マムーはこの海がすきなの」
小さい子供に正論を突っぱね返されるコリンズ女史。
「そう……じゃあ、帰国するまで、みんなで一緒に楽しみましょ!」
「「イエーイ!!」」
そうして、帰国の時が来た。
みんな私服に着替え、エリザベスはコゼットと二人きりで話すことを許された。
「もう、行っちゃうんだな……」
「うん……でも、ダーシーさんはお金持ちだから、また会いに来れるよ」
「エリザベス……」
コゼットは、目に涙を溜めて、ひくひく肩をひくつかせ、泣かないようにがんばっていた。
エリザベスは、そんなコゼットを、そっと抱きしめた。
「エリザベス……傍にいてくれ……せめて一週間、いや……一日でも……」
「ごめんね……わたし、ベネットさんじゃないから……でも、コゼットちゃんは……」
「一生で一人だけの、わたしの大切な友達だよ……」
エリザベスも、泣いていた。
「またな……エリザベス……」
「じゃあね……コゼットちゃん……」
そうして、エリザベスは空港を発った。
事務所のビルに着く。エレベーターの中、エリザベスは肩を落としていた。そんなエリザベスを、ずっとベネットはなだめていた。
「さーて、わが家がやっぱりいちばんだな!」
「そーね、でも、なかなか楽しいバカンスだったんじゃない?」
なんてことを言って視線が二人合うと、二人とも顔を真赤にして背けた。
「なんかあったのか?」
「「別に」」
そうして事務所に入ると……。
「フハハハハ! 社長の椅子は座り心地がいいのであーる」
「もう、そんなことやってたらまた怒られるよー!」
「「え?」」
エルザと四人が顔を合わせた途端、沈黙が流れた。
「あんた、誰?」
「なにしてんの、ウィッカム?」
「そこ、俺の席なんだが……」
「ウィッカムさん……?」
「ふはははは、紹介するのであーる。わが社のお茶汲み第二号、エルザ・チャーチルなのであーる。安心したまえ、まだ彼女に手をつけてはいなーい」
「誰があんたなんかと寝るか!」
コリンズ女史は、笑顔をひきつらせながら、
「あなた、私たちがいない間、何してたの?」
「なーに、ちょっとした冒険であーる。聞きたいか? えぇ聞きたいか?」
そうして全部話したら、コリンズ女史にボコられまくったウィッカムであった。
第四章 完




