表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベネット遠征伝~女を汚す奴は、許さねぇ!~  作者: 神羅神楽
第四章 コゼット~エリザベスの大切なともだち~
15/42

エリザベスとコゼット

短いです。

「……コゼットちゃんって言うの」

「そう。あなたは?」

 エリザベスは涙をぬぐい、闇夜の中で微笑んで、

「わたしは、エリザベス」

「エリザベス」

 コゼットは静かに反芻した。

 花火が上がっているので、コゼットの顔はその明かりでなんとか判別できた。

「コゼットちゃんも、迷子?」

「ちがう。ここ、わたしの家の近く」

 エリザベスは胸をなでおろした。

「そっか。じゃあ家族がいるから安心だね」

「わたし、家族、いない。ジョーカーズに殺された」

「えっ……」

 エリザベスは言葉を失う。

「ごめんなさい……」

「なんであやまる。あなたも、親いない」

「なんでわかるの?」

「匂いでわかる。ついてこい。ヤシの実でも飲もう」

「う、うん」

「《アクセラレート》!」

 突然当たり前のように異能を発動するコゼット。エリザベスは口を手で覆った。

 すさまじい速度で駆けていき、ヤシの実の木に猛スピードで昇って、二人分の実をとってくる。

「す、すごいね。コゼットちゃんはギフテッドなんだ」

「滅多に使わない、この能力。ただ早く走れるだけ」

 そう言ってヤシの実を差し出し、石で打って器用にふたつに割り、

「これ、食べろ」

「……いただきます」

 ヤシの実のジュースを啜るエリザベス。

「……美味しい」

「あなた、すごく綺麗。わたし、羨ましい」

「えっ……そんなこと言わないでよ、困っちゃうじゃない」

「だってわたし、男のひと知らない」

 ヤシの実を味わい終えたエリザベスは、コゼットの頭を撫で、

「コゼットちゃんも可愛いよ。イヴはみんな可愛い容姿になるんだって。そういう決まりらしいの。でもいいことだけじゃないよ。可愛いイヴは私みたいに乱暴されるから」

「乱暴ってなに」

 エリザベスは言葉に窮した。そのうちこの少女がこの言葉の意味を知るようになるのが嘆かわしいのであった。

「とりあえず、ありがとう。私を助けてくれて」

「礼いらない。わたし、ずっと独りぼっちだったから、一緒にいてくれるともだちいて幸せ、あ、でも、ともだちひとりだけいる」

「え、誰? 紹介してよ」

 コゼットは指笛を鳴らした。そして彼女は、海に潜った。

 彼女はイルカを抱きかかえて水面から顔を出した。

「この子、マムー。わたしの唯一のともだち。大切なともだちなの」

 マムー、と声をかけると、イルカは嬉しそうに背を向けた。

「乗れ。楽しいぞ」

「え、ええ?」

 エリザベスは恐る恐るコゼットにしがみつき、マムーの背に乗った。

 すると、マムーはすごいスピードで海面を走った。

「わ、わ、わわ」

 月明りの下、夜の海を猛スピードで走る快感は、なかなかのものであった。

 スリル満点で、エリザベスは絶叫した。

「すごーい! 夜風が気持ちいい!」

「そうだろう、わたし、マムーと一緒にあの島までよく行った」

「島?」

 前方には、小さな無人島がある。

「行くか?」

「うん!」

 マムーは無人島にまで二人を運んだ。


 二人がついた島には、小さなログハウスが建っていた。

「これ、わたしの、秘密基地」

「へー、すっごーい!」

 中に入ると、コゼットは玄関に置いてあるマッチを擦った。そしてキャンドルに火をつけると、中に明かりが行き届いた。

「一部屋しかないけど」

「ううん。素敵よ」

エリザベスはカーペットに座った。ログハウスは缶詰や釣り糸などぐらいしか置いていなかった。缶詰は恐らくマムーのエサで、釣り糸は釣りを楽しむためのものだろう。

「てきとうにくつろげ。ヤシの実ジュースはいるか?」

「ううん。お構いなく」

「じゃあ、ともだちになってくれた記念に、これやる」

「え……」

 当たり前のように、ともだちになってくれた、と言うコゼット。

 よっぽど寂しかったのか、彼女は嬉しそうだった。

 コゼットはログハウスの裏の倉庫に回り、何かを漁っていた。

 出て来たとき、エリザベスは目を丸くした。

「真珠のペンダントじゃない!」

「なに、真珠、珍しくない。売っても安い値段しかつかない。やる」

「いいの……?」

「わたしたち、ともだちでしょ?」

 にっこり笑みを浮かべ、そっとエリザベスの首にペンダントを掛けた。

「ありがとう!」

 エリザベスは、ベネットにするように、コゼットに抱き付いた。

 コゼットはくすぐったそうに笑った。

「本当にきみは、可愛い女の子だね」

「ベネットさんによく言われるの」

「ベネット?」

 コゼットは顔を少し顰める。

 エリザベスはなだめるようなまなざしで、

「私を、助けてくれた人。大好きな、カッコいい、男の人」

「そうか。今度挨拶させてくれ」

「もちろん!」

「そんなことより、朝が来るまでここにいるつもりか?」

「それしかないかなー、あ、ごめん」

「いい。誰かと一緒に朝まで過ごすの、初めて」

「そっか。じゃあ、いい? 添い寝っていうのを教えてあげる」

「そいね?」

「そう、ベネットさんの常套手段。いい。まず二人並んで横になります」

 ぎこちなく横になるコゼット。するとエリザベスも横になり、豊かな胸にコゼットの顔を押し付けるように抱きかかえた。

「な、なにを」

 エリザベスはコゼットの黒髪を撫でた。

「ずっとそのまま。目が覚めても、わたしが寂しいとき、やめてって言うまで一日でも一週間でも抱きしめてやるって、ベネットさんは言ってくれた」

「……なぁ、エリザベス」

「なあに」

「……どこにも行ったりしないよな?」

 胸が締め付けられる思いがした。明後日にはここを発つ予定だからだ。

「……もしわたしが、一緒にわたしの家に来てって言ったらついてくる?」

「外国か?」

「一応……」

 するとコゼットは伏し目がちになり、

「マムーがいるから、無理……」

「そっか……ごめん」

 コゼットの抱き付く腕が、いっそう強くなる。

「離れないで……」

「うん……今はずっと一緒にいてあげる」

 そのまま二人は、朝まで眠り明かした。


 目を覚まし、エリザベスが外に出ると朝焼けが綺麗だった。

「コゼットちゃん、見て、綺麗だよ」

 コゼットも目を覚まし、出て来た。

「なにあれ」

 海岸の方を指差すと。


 魚介人のような容姿をした、白塗りボディのサイボーグが、ぶっ倒れていた。

「スマヌガ……セナカノゼンマイヲマイテクレヌカ……?」

 サイボーグの背中には、大きなゼンマイがついていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ