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ベネット遠征伝~女を汚す奴は、許さねぇ!~  作者: 神羅神楽
第三章 セシル~ウィッカムのアメリカンドリーム~
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ウィッカムたちへの刺客

この回を読めば、もしかしたらあなたはウィッカムファンになるかもしれませんよ。お楽しみに。

 アラカルトはエルザを縛りあげ、城の拷問部屋でダジュールと共に放り投げられた。

「ふん! なにさ! あたしをまた好き放題犯そうってのかい!? 上等だよ! さっさと済ませろ、拷問でもなんでもすりゃいい!」

 エルザは自暴自棄になりつつ、恐怖に震えていた。

 アラカルトは卑しい笑みを浮かべ、ダジュールに耳打ちした。するとダジュールはにやりと頷き、

「おい盗賊の女、特別にお前の罪を赦してやろう。ただし、条件がある」

 え……? とエルザは声を漏らして首を上げ、ダジュールたちを見上げた。

 するとアラカルトが彼女の前に屈み、

「久しぶりにあ、あ、あ、会えてうれしいぞ。あーっ、あっ、あっ、出来損ないの、性処理係よ」

 ひどい冒涜に舌を噛んで自殺したくなったが、エルザは耐えた。

「と、と、特別に陛下のきょ、きょ、許可を得て、お、お、お前にチャンスをやる。あーっ、あっ、あっ、い、い、今紋章の展示会に、我々ジョーカーズにた、た、たてつこうとする、く、く、クローバーズとかなんとかいう組織の男が潜入したという情報が、監視カメラからは、は、入ってきた。あーっ、あっ、あっ、な、何が言いたいかというと、その男を捕えよ。と、と、捕えるのができぬのならこ、こ、殺せ。そうしたら、お前とセシル王妃を、こ、こ、国王の慈悲で解放してやる」

「セシルまで!?」

 アラカルトは、

「《パニッシャー》!」

 と異能名を叫び、鞭を指からしならせて、エルザの縄の結び目を打ち、結び目をほどいた。

「さ、さ、さあ、今は展示館は閉館中。あーっ、あっ、あっ、チャンスは一度だけ。監視カメラで常に貴様らを見張ってるので、へ、へ、変な真似をすると、あーっ、あっ、あっ、貴様を以前よりもひどい目に遭わせて殺してや、や、やるからな? わかったら、さ、さ、さっさと行け!」

「きゃっ!」

 アラカルトはエルザの背を鞭で打った。エルザは怯えるように、拷問部屋を飛び出していった。

 傍にいた側近が、

「本当にエルザの命を助け、女王陛下を離縁するおつもりですか?」

「馬鹿いえ、そんなものはただの大風呂敷だ。当然、きゃつが仕事を終えたらアラカルトにエルザを殺させるさ。本当にうまくいくのだろうな、アラカルト」

「あーっ、あっ、あっ、もちろんでございます陛下。四人まとめて殺すなど、わ、わ、私には朝飯前でございます」

「ふはははは、ではわしはセシルの許へ行き、夜伽を愉しもうかのう。奴にもお灸をすえねば。今夜は緊縛プレイでも楽しもうか。なに、断る理由など彼女にはないからな」

 側近は思った。つくづくこの王の趣味はサディスティックで悪趣味だと。


 そして、ウィッカムたち三人はもう、閉館になった展示場に来ていた。

「このローブを着ろ。これは、光を透過させる特殊な繊維でできている。顔を隠しながら潜入するんだ」

 ビングリーが二人に手渡し、三人が着ると、三人は顔だけが浮かんでいる在り様になった。

「おお、さすがデザイン工学のパイオニア。ただただ頭が下がるのであーる」

「そう浮かれるな。あとはファビアンの《レビテーション》で、俺たちの重力をゼロにする。しかし大丈夫ですか? 重力をゼロになんてしたら、宇宙空間みたいに我々は宙に浮いて移動なんてろくにできませんよ?」

「大丈夫だ。俺の異能は、俺の望むレベルで重力を軽減できる。ま、いっちまえば、異能が永続している間は、重力を俺の自由に操れるってことだ。というわけで、《レビテーション》!」

 三人は蒼い光に包まれた。しかし、変かがない。

「なにも変わらないのであーる」

「少し歩いてみな」

 ウィッカムが歩いてみると、ふわっとした感触で、足音がほとんど立たなくなった。

「おおおおおお!? これはすごいのであーる!! なんと都合のいい異能であーるか!?」

「さ、もたもたしてねぇで行くぞ!《レビテーション》!」

 ファビアンが小声で叫ぶと、ドアは蒼く光り、鍵がかかっているにも限らず、ファビアンの腕っぷしで簡単に開いた。


 そして突入。パビリオン内は、静かで、いつもならセキュリティシステムが張られていて、足音や体温などを感知して侵入者を察知し、防衛プログラムを起動させるはず……なのだが。

「なんだ? なんで今日はこんなに容易く進めるんだ?」

「よいではないーか。ほらファビアン、《レビテーション》で、あのガラスケースの中の王族の宝物をいただくのであーる」

 そんな感じで、次々と彼らは宝物を略奪し、ビングリーの作った圧縮ケースというものを圧縮して収納するケースに次々と宝物を回収していった。

 そして。

 最深部のだだっぴろい部屋の中心に、目的である、紋章があった。

 ビングリーが懐中電灯を照らすと、紋章は光を乱反射し、きらきら輝いた。六芒星の形をしている。オリハルコンでできているようだ。

「なんと綺麗な……しかし、本当にこんな簡単に手に入っていいものか……?」

 レビテーションをかけ、ガラス張りの窓をファビアンは突き破り、意図も簡単に紋章が手に入った。

「ふー。これですべての仕事を終えたのであーる。さて、かえって祝杯を……」


「《ワイヤー》!」


 どこからともなく少女の声がして、紋章に突然現れたワイヤーが絡みつき、ファビアンの手からそれは奪われた。

「なっ……誰であるーか!?」

 三人はファビアンの用意した拳銃を持って、紋章の方を見た。

 すると部屋の電気がついた。

 そこには。

 桃色の髪の小柄な美少女──エルザが、紋章をしっかりと握りしめていた。


「悪いけど、あんたたちにはここで死んでもらうよ!」

「ほう……こんなちっこい娘が。ギフテッドではあるだろーが、こんな小娘、三対一ではないーか。笑わせるなであーる」

 するとエルザはむきーっ、と、顔を真赤にして怒り、

「なめないでよね! あたしこれでも、前はジョーカーズの特攻隊長だったんだよ?」

「ジョーカーズ? 特攻隊長? 幹部ではないのか?」

 ふふん、とエルザはない胸を反らし、

「そうだよ。あたしの専門分野は盗難でね、多くのイヴを拉致して、イライザ様の元に送り、奴隷にしてきたのさ!」

「ガキの分際で、なんたるしゅーち、許せないのであーる!」

「だから、ガキってゆーな!」

「はーはっはっは!ガキにガキと言ってなにが悪ーい?」

「むきー!」

 ウィッカムの茶化しに、噛みつくエルザ。なんだか、二人とも敵同士にしては仲がよさそうだ。

「戯言を言っている場合か! 君が誰であるかは知らないが、ジョーカーズなら容赦は不要だよな? 撃つぞ、みんな!」

 三人は拳銃でエルザをリロードしながら撃ちまくったが、エルザは持ち前の敏捷さですべて交わし、ファビアンの前に立って、彼の腹部に蹴りを喰らわせた。

「うがあっ!」

 ファビアンはレビテーションで質量が軽くなっているため、壁に叩きつけられ、骨を折って動けなくなってしまった。

「まずは一人目、と」

 手を打つエルザ。苦し紛れにファビアンが、

「そろそろ《レビテーション》が切れる……お前らが突き飛ばされることはなくなる……安心しろ……すまねぇが、俺の分まで……」

「わかった。悪いが高度な医療道具は持ってこなかった。だから骨を治すことはできない。ウィッカム、エンプティの俺らでなんとかするぞ」

「おいおーい。私がお前を信頼していないわけないであろーう。いいからCUBEを駆使して乗り切るのであーる」

「あんたがウィッカムだね? あたしにさんざん暴言吐いてる悪には、ひょろくて弱そうじゃない?」

「ほーう? 私をスマートな紳士だと言っているのか? おほめに預かり光栄であーる」

「だーかーらー!! もう……なんであんたって奴は!」

 ウィッカムに茶化され、いい合いをしている二人。ビングリーは呆れつつ、これもウィッカムの時間稼ぎだと思い、リモコンのようなものを操作し、ウィッカムをエルザの許へ転送した。するとウィッカムは、エルザをお姫様抱っこしていた。

「なっ……なっ……なにしてんだよ変態!」

 エルザは思いっきり顔を赤らめた。

「なんだ顔を赤くして。さては貴公、私に惚れたな? それだけはほめたたえてやろーう」

「は、はぁっ!? 馬ッ鹿じゃないの!? あんたみたいな男最低だよ! 大っ嫌い! いい加減離さないと……しまった!」

 ウィッカムは手に持っていたキューブを落とした。するとそこからロープが飛び出し、あっという間にエルザを拘束した。

「くそー! ほどけー!」

「はーっはっは! 完全勝利であーる。どれおもしろいな、くすぐってやるかこちょこちょこちょ」

「触るな、やめっ、きゃはははははっ!」

 戯れているウィッカムを、CUBEから取り出した巨大ハリセンでビングリーは殴った。

「なにをするであーるか!?」

「仮にも女性だぞ。どれ。訳があるんだろう。申し訳ないが拘束は解けないが、話してくれないか」

 そうして、ビングリーとウィッカムはエルザの前に屈みこみ、話をすべて聞いた。

「そうであーるか。王女を守るためにこんな真似を。ま、貧乳のくせに生意気であーる」

「貧乳は関係ないだろ! とにかくね、今の私たちは監視カメラに写ってる。悪いことは言わない、逃げな! さもないとアラカルトがやってきて……あ……」

 二人が振り返ると、中年のタキシードを着た男が、鞭を持って満足げに立っていた。

「な……もしかして、奴がジョーカーズの幹部のアラカルト……って、おい、ウィッカム」

 ウィッカムは彼の前まで歩いたかと思えば。


 殴った。


「かわいい子いたぶっといて、エンプティ嘗めやがって。いい度胸だな。あんまり調子に乗ってると殺すぞ」


 その言葉は。

 ウィッカムのものだった。

 ビングリーたちは耳を疑った。

 倒れたアラカルトは笑い、

「あーっ、あっ、あっ、私はお前に罰されに来たようなものだな。もっとも、私に傷つけられ殺されながらでいるお前に罰せられるというのは、きょ、きょ、きょうみ深……ひっ」


 ウィッカムはアラカルトのこめかみに銃を突きつけた。


「まだ分からねぇのか。俺、今、相当キレてんだぞ」


 ビングリーもファビアンも知っていた。

 ウィッカムはひょうきんだが。キレるとものすごく恐ろしくなる人物であるということを。


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