いつものこと
ラデュレの言葉に、クルツは頭が痛くなった。
「ラデュレさん、今度は一体何をやったのですか?」
「オウルを見ていたら、可愛い事を言うのでつい襲い掛かろうとしたら、本気の魔法攻撃を食らってしまいました」
あはは、と朗らかに笑うラデュレの言葉を聞きながらクルツは、
「兄さんの本気の魔法攻撃が放たれたらここ周辺は更地のはずですが」
「うん、全部、魔法無効化しておいたから何も起きなかったけれど、それの処理をしていた関係でオウルに逃げられちゃって」
さらっと怖い話とラデュレの実力などを語ったラデュレ。
そして大変なことになりかけていたのを事後に聞かされたクルツは、何も起こらなかったので問題ないとそちらは脳内で処理しながら、
「……全く、どうしてオウル兄さんとラデュレさんはどこからどう見ても両想いなのにそうなのですか?」
「素直にならないオウルが悪い」
しれっとラデュレはオウルのせいにした。
この人は……とクルツは徐々に痛みを増す頭を感じながら、
「ラデュレさんがもう少し我慢してくれれば完璧なのに」
「え~心外だな。こんなに僕は我慢しているのに」
「何処がですか」
「オウルが行方不明になっていないじゃないですか」
遠回しに自分のものにするために監禁してやると、ヤンデレじみた事を目だけが嗤わずに告げたラデュレを見てクルツは、基準がどう考えてもおかしいと思った。
もっとラデュレも“普通”にオウルを愛せばこんな風にならなかったのではという気がする。
だが、遠回しどころか直球で今まで何度かラデュレに言ってきたクルツはその無意味さをよく知っていたので、
「……できればもう少し我慢してください」
「う~ん、そろそろ婚約指輪を受け取って欲しいけれど、毎回逃げられちゃって。本当は、今日ここに来たのもそれが理由だったんだけれど“いつもの逃げ場であるクルツ”のいない場所を僕は選んだはずなのだけれど。……偶然鉢合わせちゃったんだよね」
「……それなら襲う前に渡してください」
「だ、だってオウルが可愛すぎるし、仕方がないだろうと思うのです」
「分かりました、いつもの展開ですね。はあ、それで俺はこれから用事がありますので失礼します」
またいつもの事だと思ったクルツは、どうせ元のさやに戻るだけなのが分かっていたのでそろそろルネを探しに行こうと思った。
ラデュレの話には突っ込みどころがありすぎるものの、オウルとの関係に関しては放っておいてもいつもの通りになるだけだと、経験的に知っている。
それならば話を聞いていても無駄だ。
それにルネはこの世界に疎いのだと思い出してクルツは探しに行こうとするが、そこでラデュレが不思議そうに、
「用事? なんの?」
「ルネが飛び出して行ってしまいまして。どうも俺を意識し題したようです」
「それはおめでとう。オウルと付き合い始めたころもオウルは、よく僕から恥ずかしがって逃げ出したりしていたな。それを追いかけて行って抱きしめるのが日課だったな」
「そういえば一時期オウル兄さん、『自分から抱きついてくる男がいるが、あいつは私が好きなのだと思っていいのだろうか』と言って悩んでいたような。あの頃kじゃら両想いだったのですか。……一体何年付き合っているのですか」
つい突っ込んでしまったクルツだがそこでラデュレは肩をすくめて、
「愛は育てるものだよ」
「途中で拗れたような気がするのですが」
「そんな事はないと思うよ~」
「そのあたりの話はどうでもいいです。俺はルネを探しに行かないと……」
そんな焦るクルツにラデュレが苦笑して、
「少しは一人にさせてあげたらどうかな。そういった恋愛事で混乱した時は、一人の時間が欲しいものだよ」
「でも一人で……ルネはあんなに可愛いから悪い人にさらわれるのではと心配です。しかも最近どんどん可愛く見えてきていて……」
「クルツも恋に落ちるとこうなるんだね。でも少しは落ち着いた方がいいよ」
そうラデュレは言ったのだった。
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