ただそれだけなのだ
僕達はコテージに入る。
中には小さな棚があり、そこには何冊かの本がと箱が置かれていた。
箱にはラベルが張られていて、そこには紅茶の葉や調味料、缶詰、瓶詰、お菓子、瓶入りの飲み物などが入っている。
ここに来た客人用だろう。
それらを出したりして一通り見てから、クッキーを何枚か取り出してお茶を入れることに。
普通のものと、チョコチップクッキー、ドライフルーツの入ったものの三種類がある。
美味しそうだと思いながらまずはmお湯を沸かす僕。
「ここがコンロだから、魔石もあるけれどそれは使わないで僕の特殊能力で火を出してっと」
僕は魔法で火をつける。
こうやってこの世界では火をつけるのだとクルツが教えてくれて、前は火力の調節が微妙にうまくいかなくて、魔石を使ったりしていたけれど、クルツに教えてもらいここまでできるようになっていた。
また、他にも料理に必要な水を出したりできるようになった。
料理をする関係で使う必要があったとはいえ、頑張って覚え魔法だが大分上手く使いこなせるようになった気がする。
そう僕が思っていると、
「ルネは飲み込みが早いな。特殊能力があるからと言ってここまで簡単に魔法が使いこなせるようになるとは思わなかった」
「クルツに美味しい手料理を食べて欲しくて頑張ったんだ」
そう言うとクルツが小さく震えて顔を背けてから、
「……可愛すぎる。もう持ち帰りしたくなるな」
「? いつもクルツと一緒だから、お持ち帰りしているようなものでは?」
「そうだな……簡単に言うと、実家に連れて帰りたいといった所かな」
「実家? クルツの実家ってどんな所?」
「そうだな……少し窮屈かもしれないな。そこにいるよりも以前見た“騎士”に憧れて騎士団に入って、騎士団長にまで上り詰めたからな。そこまで実力で這い上がるまで身分は伏せる約束で頑張ったんだ。両親たちやオウル兄さんも途中で俺が音を上げるとおもっていたようだが……この通りだ」
そうクルツが笑う。
それがとても輝いて見えて、しばらく呆けたように見てしまう。
そこでクルツが、僕がクルツを見ていることに気づいたらしい。
「さっきから俺の方を見てどうした」
優しく微笑みなから僕にそう問いかけるクルツ。
僕の胸が早鐘のように大きくなって、クルツに魅入られてしまったかのように目が離せない。
そこでお湯が沸いた音がして、僕は慌てて火を消してポットにお茶の葉を入れてお湯を入れる。
後は蒸らしてお茶を淹れて。
このお茶を飲めば少しは落ち着くのでは。
そんな僕の淡い期待はすぐに打ち砕かれた。
クルツが隣に座ってお茶を飲んでいる。
本当にただそれだけなのだ。
なのに僕はそれだけで……。
意識をそらそうと菓子に手を伸ばすけれどそこで同じように手を伸ばしたクルツと触れてしまって、
「わ、わぁ」
「すまない、つい……ルネ?」
クルツは僕の名を呼ぶけれど、それだけで僕の体は熱くなって……。
思わず逃げるようにその場を僕は後にしたのだった。
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