異世界には女性というものが存在している
可愛いと言われてしまった。
だが今までの経験上、女の子に間違えられてしまっているような気がする。
もともと背が低くて童顔で女顔という、かっこいいイケメンになるんだと筋トレなどをしていた僕自身の努力を無に帰したその姿。
それは僕のコンプレックスでもあった。
だからほほを膨らませて、
「僕、女の子じゃないです。男です」
そう言い返した。
可愛い女の子だから助けたといわれるのはその……なんとなく、目の前にいるクルツに言われるのは嫌だったから。
けれどその答えを聞いてくるとは数度目を瞬かせて、
「? 分かっているよ。……ああ、なるほど。異世界には女性というものが存在していると聞いたことがあるな」
そう困ったように苦笑して返してきた。
だがその話を聞いて僕はある不安を覚える。つまり、
「あの~、そう聞くと、この世界に女性がいないように聞こえるのですが」
恐る恐る聞いてみると、クルツは更に困ったように笑い、
「異世界人は、大抵その話に驚くらしいな」
そう、何かを思い出したようにクルツは答えたのだった。
どうやらこの世界には女の子がいないらしい。
女の子が大好きな僕には絶望的な話だが、それより気になるのは、
「あの、もしやこの世界では男同士が当たり前?」
「そうだが、それがどうかしたのか?」
クルツは不思議そうに言うが、僕としては大問題だ。
もともとかわいいだのなんだの言われて男に告白されてしまう僕が、男しかいない異世界に……。
「どうして僕がこんな目に」
僕は涙目でそう、小さく呟いたのだった。
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