作戦失敗
二話も見てくれる人がいるなんて思いませんが(笑)、もし見てくれる人がいるなら、本当に感謝すべきことだと思います。
自分の部屋に入った。窓から入ってくるかすかな夕暮れの光だけが、この部屋をオレンジ色に照らしていた。ベットに仰向けになる。日比谷みくは、突然現れて、突拍子もない話をした自分たちを、あっさり信じてしまった。正直、彼女を守れる自信がなかった。今までの依頼は、全部しおりに指示されて雑用のようなことをしていただけだったから、しおりから全面的に協力を頼まれたのは今回が初めてなのだ。深いため息が漏れた。明日は学校だし、夕飯を食べて早く寝よう。年は一つしか違わないが、俺は中学、しおりたちは高校なので明日は家に帰るまではしおりがひとりで彼女を守ることになる。女子高生二人で大丈夫だろうか。まあ多少心配ではあるが、しおりならなんとかやるだろう。
目が覚めた。ここは・・・ああそうか、昨日のことは夢じゃなかったんだ。あれはにわかには信じがたい話だった。そういえば、なぜ私はあの二人の言うことをあんなにも簡単に信じることができたのか。あのときは、そもそも『疑う』という概念がなかったように感じる。この人たちの話は信じてもいい、そう感じた。昨日露田さんに借りた服を脱いで、制服に着替え、部屋を出た。
テーブルの上には、朝食が置いてあり、リュウと露田さんが座っていた。
「おはようございます。」
「おはよう、みく。」
「おはよ~。」
平和だ。なんて平和なんだ。私に何らかの『危険』が迫っているなんて、考えられない。
朝食を食べて、身支度を整え、先に露田さんと二人で家を出た。
冬は日が落ちるのが早い。もう空は薄暗くなっている。
学校が終わって、露田さんと一緒に帰る。今日は一日中露田さんと一緒にいた・・・というか、監視されていた気がする。
「今日も疲れたー。」
背伸びをして、体をほぐす。
「気を抜いちゃだめですよ。」
「はーい。」
家に入って、寝転がった。まだ一日しか経っていないのに、この家が我が家であるような感覚になった。
「お腹すいたなー。」
「じゃあ、なにか買ってきますね。」
「え、じゃあカップラーメンよろしくおねがいします!」
「了解です。」
そう言って、露田さんは家を出た。それにしても、あんなに一日中べったりと私に張り付いていたのに、こんなに簡単に傍を離れて大丈夫なのだろうか。
_ボンッ!
突然、部屋に何か投げ込まれた。部屋に霧がかかってなにも見えなくなった。
_ガチャ
ドアが開く音がした。
「やっぱりですか・・・!」
露田さんだ。そうか、一度私の傍を離れたのは、敵をおびき寄せるための罠だったのか。さすが露田さん!言おうとしたけど声が出ない。意識が朦朧としてきた。この霧のせいか・・・。遠のいていく意識の中で、人の倒れる音がした。
「露田さん・・・。」
ガチャ。鍵が開いている。その瞬間すべてを悟った。すごい勢いで家へ駆けこんだ。思った通り、家の中は散乱していて誰もいなかった。
すぐにパソコンを開く。カチッ。部屋にはマウスの音だけが響いていた。目的のソフトを開いた。マップの中で赤い点と青い点が点滅している。はあ、よかった。今朝、しおりとみくにはGPS入りのカプセルを飲んでもらったのだ。場所を確認してリュウは家を出た。フルスピードで走り、しおりから事前に聞いていた『深柳まこ』がいるはずの場所へ向かった。
眼を開けると、最初は視界がぼやけていたが、段々とピントが合ってきた。隣を見ると、露田さんが横たわっていた。
「露田さん!露田さん!起きて!死んでないよね?」
うっすらと露田さんの目が開いた。
「みくさん・・・ここは?」
ここは・・・どこなんだろう。部屋全体が白い。壁も、床も、天井も。壁のところに、ドアがついている六畳ほどの狭い部屋だった。
「ごめんなさい、私が頼りないばっかりに。」
彼女は本当に申し訳なさそうに、そう言った。
「ううん。それより、ここはなに?私たちを連れ去ったのは、誰なの?」
「それは、分からないんです。すみません。私はあのとき、部屋の中で誰かの気配がしたんで、炙り出そうと思ったんですけど・・・相手を甘く見すぎていました。」
「それはもう大丈夫だから。」
なるべく明るくそう言った。
「よし、切り替えて、ここから脱出する方法を考えよう。」
そのとき、急にすごい唸りをあげて何かが動き始めた。
「あれは、換気扇?」
「おしいです。真空ポンプですね。」
「真空!?」
まずい。このままでは死んでしまう。そういえば、さっきから気になっていたんだけど・・・。
「あのドアになにか付いていますよね。」
「なんだろ。」
近寄ってみる。機械から、透明な管のようなものがのびていた。警戒しながら触ってみても、なんの反応もなかった。
「こういうのって、大抵暗号とかあるもんだよね。」
「はい、探してみましょうか。」
二人で見回してみる。すると、
「あ!ありました!」
「ほ、ほんと!?」
この狭い部屋で何もないから、何かあったら分かりそうなはずだが、真っ白なため、白い封筒はそれに隠れて見つけにくくなっていたようだった。
封筒の中には、一枚の紙が入っていた。
「どれどれ。」
”この部屋は外からしか開けることができない。運よく助けが来るまで待て。”
「・・・・・。」
「・・・・・。」
は!?それじゃあそのうち私たちは・・・。
「こんなに時間がたっているのにまだなんの症状もありません。おそらく、外へ運び出されている空気の量はものすごく微量でしょうが、このままずっと助けが来なければ、死ぬことになるでしょう。みくさん、」
「・・・・・。」
何とかしなければ。
タイムリミットが、私たちを飲み込む前に。
はあ、はあ、息が、苦しい。
リュウは、しおりから聞いた目的地に向けて、懸命に走っていた。この角を曲がれば・・・。
「着いた。」
でも安心している暇はない。一刻も早く二人を救わなければ。
ここは廃工場だ。中には何もないと聞いている。
ガラガラガラガラ、と大きな音を立てて力いっぱいその扉を横に引き、中を見た。真っ暗の中に、少女のシルエットが浮かび上がっている。
「深柳まこさん、ですよね。」
彼女はこちらをみつめたまま動かない。警戒しているようだった。
「日比谷さんが、みくが、危ないんだ。助けて。」
「え!?」
一瞬で理解したようだった。やはり、知っているのか。すぐに深柳まこは走り出して、俺はそれについていくという形になった。彼女は二人がどこにいるのか知っているようだった。さっきまで走っていたのに、また走るのか。いい加減、体力が持ちそうにない。
「電車にのるわ。お金は?」
良かった。もう走らなくていいんだ。ポケットを叩く。
「ないね。」
「しょうがないわね。」
そう言って彼女は、ポケットから高そうな財布を取り出した。切符を買うのに並んでいる。こうしている間にも二人が危険にさらされているかもしれないと思うと、胸が締め付けられる思いだった。でもそれは、彼女も同じだろう。ものすごく不安そうな顔で、焦っているようだった。
電車の中は思ったより空いていた。
「君、名前は?」
「リュウだよ。」
「どうして私の名前を知っているの?」
「それは、話すと時間がかかるから、後で話す。それより、あんた、みくがどこにいるか知ってるの?」
「うん。心当たりはある。」
なぜ、知っているのか。それは、今聞くべきことではないだろう。
「今どこに向かってる?」
「私の家。」
驚いたけど、これ以上質問しても自分には何もわからないだろう。
_次は、○○○です。
「降りるよ。」
「うん。」
電車を降りたら、改札を出てまた走った。
森の中を抜ける。
「ねえ、あんたの家って森の中にあるの?」
「あんたって言うな。研究所だから。」
彼女はそれ以上なにも言わなかった。
走って走って走って、一つの巨大な施設にたどり着いだ。ポケットから、端末を取り出す。どうやら二人はここにいるようだ。
「もう少し先を行ったところにある。」
「ここじゃないのか?」
「うん。」
その施設の裏に、小屋があった。
「みく、みく・・・。」
彼女は小さな声で震えるようにそう呟いている。
ドアを開けようとしたけど、開かなかった。代わりにドアに何か管のようなものがついていた。その先には機械がある。
「うっ。」
言葉にならないといったふうに顔を歪めた。彼女は自分の指を噛んでいた。
もうここまで読んでくれる人がもしいたら泣きますw




