第2話
僕はまたもや見知らぬ部屋で目覚めた。しかし今度は、誰かそばに座っている。
「おお、やっと起きましたか。」
そこには小柄な女性がいた。すこし長めのボブカットで白いシャツに淡い色の長いスカートを履いている。事務の仕事でもしていそうな姿である。
「あなたは?さっきの人みたいに天使やら死神やら言うんじゃないでしょうね?」
「まさか。私はただの人ですよ。さっきの人って言うのは、私にはよくわかりませんが。」
「(何だかとても無表情で淡々と喋る人だな...)僕、いまいち状況が理解できてないんですけど。何か教えていただけないですか?その、さっきの人曰く僕は死んで異世界に飛ばされたとか何とか...」
「まあそんなところです。あなたはもといた世界で死んでこの世界にやってきたのです。そこは事実です。まあそれに関しては追々説明します。理解するには時間がかかりそうな話なので。とりあえず説明すべきことから順に説明します。」
その女性は無表情のまま、淡々ととんでもない説明をし出した。
「まずあなたにはこの世界でスパイになってもらい、世界のバランスを整えてもらいます。その為にあなたは召喚されたのです。私の所属する組織によって。あなたもそこに入ってもらいます。」
「異世界召喚にありがちなやつですね。でも何故僕が選ばれたんですか?他にもっとこう、あったんじゃないですか?僕の世界にもスパイみたいな人は居たし...」
「別にあなたである必要はなかったんですよ。私たちの組織が求めたのはあなたのいた世界を知っている人。その中でいなくなっても大きな影響がない人。つまりあなたが選ばれたのは偶然。政治家やら社長やら芸能人やらそう言う人でなければ本当に誰でも良かったのです。」
「そんな...」
「スパイになる為に必要な能力もこの世界に来る時に与えられることになっています。そこそこ強い力がついていると思いますよ。魔法とかもある程度揃えてあります。」
「いかにも御都合主義って感じですね。で、僕はスパイになって何をすればいいんですか?世界のバランスがどうとか言われても分かりませんよ。」
「そうですね。百聞は一見にしかず。一度外に出て見てみましょう。今更ですが一応。私の名前はテレーゼ。組織のスパイの1人です。今日からあなたの世話係兼教育係を務めます。以後宜しくお願いします。」
「よ、よろしくおねがいします!」
テレーゼは表情を変えないまま僕を建物の外に連れ出した。
町はすっかり夜になり暗くなっている。起きた時にはすでに外は暗くなっていたので、既に夜中になっていた。
「ここはコリヌヴィルの街です。世界的に見てもかなり大きい街になります。我が国アヴィブールの首都でもあります。この国は王政をとっているのでここから南の方、コリヌヴィル川の手前に王宮があります。まあでも、王政とは名ばかりで実際は私たちスパイが政治を動かしていると言っても過言ではないです。」
街には石やレンガで作られた西洋風の建物が綺麗に立ち並んでいる。道も整備されていて非常に綺麗である。
「とても綺麗な街だ。いかにも中世のヨーロッパって感じだ。」
「ヨーロッパ?中世?あなたの世界のことは知りませんがそんなところでしょう。」
「でもこれを見た限りこの世界は平和そのものじゃないですか。世界のバランスとやらも保たれているようですが?」
「そうです。平和が保たれて世界はバランスを保っている、ように見えるのです。」
「"ように見える"とは?何か裏でもあるんですか?」
「さっき申し上げたように今政治を動かしているのは私たちスパイです。全世界5つの国のスパイが裏で手を回し、密約を交わし、隠れて悪事を働く勢力を一般市民にバレないよう影で抑えている。そんなギリギリの状態でこの世界の平和は成り立っています。しかし、このところそのバランスを根底から覆す事態が起こりかけている。そこであなたをお呼びしたわけです。」
「なるほど、僕はそのバランスを崩す事態に対処する手伝いをしろと。」
「そんな感じではあるのですが、少し足りません。私たちはあなたにスパイ制の廃止を手伝っていただきたいのです。」
(つづく)
1話で断念しかけましたがせっかく描き始めたので飽きるまで書こうと思います。相変わらずのゴミ屑語彙力ですが読んでいただけると嬉しいです。