9話:白い街
ようやくライスコーフに着きました。
ライスコーフ。そこは異国情緒漂う、砂漠の都。
「へぇ、賑やかね」
マールは街に入ってすぐの広場を見渡してみた。広場中で店が出され、色んな物が売られていた。テントを張って商品を並べただけの露店だったが、その数が半端じゃない。ところ狭しと敷き詰められた露店は、ざっと見ただけで100は超えているだろう。
広場では店で買い物をする人や商人、呼び子など大勢の人が行き交い、賑わっている。街の住人は大抵、白い布のような民族衣装を纏っていて、それがまた一層ここが異国だということを認識させた。
そんな中で、普段着でいるセシル達三人は浮いていると言えば浮いていた。
「この街で一番大きい、メイン広場です。行商人が集まってフリーマーケットみたいになってるんですねぇ」
「ふぅ……これは見て回るだけでも一苦労しそうね」
「うわ、なんか豚の頭が売られてるぞ!?」
早くもカルチャーショックを受けた彼らはきょろきょろと辺りを見回しながら先へ進んだ。
ラクダが行き交い、普通の食品やアクセサリーから、よく分からないサソリやヘビの漢方薬なんかが売られている雑多な商店街。
商魂がたくましいのか、足早に歩いているセシル達にまで強引に物を売ろうとしてくる程だ。
そんな区域を抜けて、丘になっている場所にそれはあった。
「こりゃあ、すごいな……」
「ライスコーフが元々金持ちな国だってのは知ってたけど、ここまでとはね……」
二人は驚きを隠すこともなく、その建物を見上げた。
白を基調とした実用性重視の強化コンクリートの壁面に、美しい宝玉がバランスよく埋め込まれた外壁。
いくつもの巨大な大理石に支えられ、屋根には黄金の、丸いキューブのような装飾が施されている。
砂漠という乾燥帯にあって、噴水が湧き出る中央広場。
荘厳にして優雅、学園というよりは宮殿と呼ぶに相応しい場所だった。
周囲は砂に覆われているにも関わらず、その敷地内だけは緑の芝生が敷き詰められていおり、広く見渡せるように設計された開放的な庭園には喫茶店まである。なんともセレブな場所だ。
セシルはその規模に目を丸くしながら
「先生、あれがアカデミーだって?」
「はい、ライスコーフ王国立士官育成学院……通称ライスアカデミーです。私も来るのは今回が初めてです」
「へぇ〜」
そうして、もう一度中を見回してみる。セシルやマールと同じ年代の、士官候補生が数人、楽しそうに談笑しているのが見える。
ここでは制服が決まっているらしく、みんな同じ格好だった。
やはり白を基調とした軽量な装束に、布を腰回りに巻いて固定している。「砂漠特有の戦闘服で、通気性や動きやすさを重視したものらしいですよぉ」とテアナが言う。
見回すと誰もが育ちが良く、賢そうな顔立ちだった。
「ここは由緒ある軍人の家系の人間しか入ることの出来ないんですよねぇ。だからここにいるのは、みんな国内選りすぐりのエリートさん達です」
「ふーん。じゃあ強いんだ、ここの連中。面白そう」
クスクス、と悪役にしか見えない笑みを浮かべる。
普通の学園生活を送ってくれ、と言われていたが意外と刺激になりそうだとマールは思った。
「俺エリートって苦手なんだよなぁ……」
横で悪い笑みを浮かべているクラスメートをちらっと見ながら言うセシル。
「とりあえず挨拶に行きますか」
そう言って、宮殿のような建物の中に入っていった。
時折、通り過ぎるライスアカデミーの生徒たちが、物珍しそうに彼らを見ていた。
「あれが噂の留学生か?」
「どうやら、そうらしい。アルバートの最優秀なやつららしいな」
「くくく、早く戦ってみてぇなあ」
「アルバートってどんなとこなんだろ?」
「仲良くなれるかなー。特に女の子の方と」
「あ、あの子……か、彼氏とかいるのかな? はぁはぁはぁ……」
「いや、あっちの先生もなかなか」
「あの男の子も可愛いわねぇ。はぁはぁ……う……はぁ……」
「おい、早くカメラ持ってこい!」
反応は様々だった。
ちなみに、通り過ぎた生徒は全員男だった。
「……外は暑いのになんか寒気がするなここは」
とにかく、三人は奥にある執務室へと通された。
そして手続きと挨拶を終え、それぞれの寮へと案内された。
テアナは、教官専用の寮の空き部屋へ。セシルとマールは、一般生徒寮の中にある留学生専用の部屋だった。二人の部屋は隣同士だ。
「遠路はるばるお疲れ様でした。生徒さんお二人の授業は明日からとなっていますので、今日はゆっくりなさって下さい」
いろいろあったが、ようやく腰を落ち着けることが出来た。セシルは荷物を放り投げ、置いてあるベッドに横になった。
(あ〜疲れたなぁ……とりあえず、今日はゆっくり寝るか)
そう思っていた矢先。ドアをノックする音が聞こえた。
「セシルー! 入るわよ」
マールが入ってきた。着替えてきたのか、いつもの赤い上着ではなく、白いTシャツだった。なんとなく、周りの環境に合わせたのだろうか。
「あー? マール、悪いけど俺はこれから……」
「テアナ先生からの伝言で、これから地理を把握するのも兼ねて、街の探索に出かけるように、だって」
「え〜!?」
これから寝ようと思っていたところなのに、と悲鳴を上げる。
「勘弁してくれよ、疲れてるんだって」
「敵は待ってくれないのよ。ここにだってたった3ヶ月しかいられないんだから、今から出来ることをやって情報集めといたほうがいいでしょ?」
「そらそうだけど……」
「じゃあ、行くわよ」
初めからセシルに拒否権などないようだった。
セシルは泣く泣くベッドから起きあがり、マールと共に集合場所へと向かうことにした。
街の入り口に集合した三人は、すぐに動きを開始した。
三人はひとまずばらけて行動する。何かあったら、通信機で連絡すること。後は自由に街を見て回り、地理を頭に叩き込みつつ可能な限り情報を集める。
これだけ決めて、マールもテアナも街の雑踏の中に消えていった。あの二人のことだから、それなりに働きを見せるのだろうが……。
そしてその場に残されたセシルは……
「二人とも行っちゃったし、俺はどうしようかなー……」
街をぶらぶら歩きながら、呟く。
というのも、セシルはこの街では知り合いもいなければ、道も分からない。情報収集とかそんなことよりも、迷わないようにするのが大変だった。
とりあえず通行人の様子を観察してみると、やはり皆一様に白い布を織り込んだような民族衣装を着込んでいた。
軽くて涼しい上に、洗濯するさいに必要な水も、普通の服よりも節約できるということで水が貴重な砂漠の生活では便利な日常の品らしい。
と……テアナの言っていたことを思い出す。
「俺も着てみようかなぁ」
あまりに暑いので、脱いだ上着は宿屋に置いてきた。
Tシャツだけのラフな格好だったが、やはり暑いので汗は噴き出てくる。
どうせなら現地人に紛れ込んだ方が情報収集しやすいのではないかと考えたが、金がないので止めておくことにした。
しばらく歩き続けていると、屋台や露店が建ち並ぶ広場に続いていた。
祭りのような活気に包まれた広場。多くの人がここに集まり、買い物をしたり食事をしたりする。
元々は観光客相手の土産屋が集まって出来たところだが、今では現地の人も多く活用している。
「これだけ人が集まってれば情報も手にはいるかな」
人が集まるところに情報も集まる。情報収集をするなら、ここはもってこいの場所だ。
そう思い、さっそく行動を開始しようとする。
すると
「てめぇどうしてくれんだ、こら!?」
「兄貴の服がいくらするか知ってんのか? シミになってるじゃねぇか!」
……突然、広場の一角から怒声が聞こえてきた。その異変に、周囲の目はその一角に集中する。腹の底から響き渡るような大声に、辺りが一瞬で静まりかえる。
何事かと思い、セシルも人の群れの中から様子をうかがってみる。どうやら、大男が二人いて露店の店主に向かって怒鳴り散らしているようだ。露店では絵が売られており、布を敷いたスペースの中に並べてある。そしてよく見ると一人の男のズボンには、少し絵の具が付いていた。
「あ〜アレか。まさか他国に来て現実に見るとは思わなかったけど……」
呑気にその様子を遠巻きに見ているセシルの前では、漫画のようなシチュエーションが繰り広げられていた。
絵描きが、柄の悪い男二人に脅されている。
置いていた絵の具が服に付いたと言っているが、実際には男が自分からぶつかって来たというのは誰の目にも明らかだった。 だが、誰かが仲裁に入ることもなくみんな遠巻きに見ているだけだ。
まぁ世間とはそういうものだろう……と、完全に他人事でセシルは思った。
柄の悪い男達はさらに声を挙げる。
「弁償しろやこら! それとも金がないなら体で払うか? そっちでも俺は構わねえがな」
そんなことを言ってゲラゲラ笑う男二人。
品性の欠片もない言動。どこの街にでもいるならず者のようだった。
膨れあがった筋肉に黒いタンクトップ、スキンヘッド、顔にヘビのような刺青が入れてあるという、悪役であることをを全力でアピールする風貌だ。
似たような二人だが、兄貴と呼ばれた男は白、もう一人は赤のズボンを履いている。
セシルは心の中で、白パン、赤パンと単純に名付けた。
「…………」
一方、店主の方は服の上から華奢な体格が見て取れる。どうやら女のようだった。
男達の気迫に圧倒されているのか、頭にフードを被ったまま俯いているので、顔は見えない。
「びびって声も出せねぇか? まぁいい、ちょっと来いよ」
そう言って、白パンが手を伸ばして女の体に触れる……瞬間、白パンの体は見えない力に操られるようにして宙へ舞い上がり、そのまま背中から地面に叩き付けられた。
その一瞬の出来事に、誰もが息を呑んだ。
「は?」
「痛てぇ……」
白パンは痛みに悶絶し、赤パンは唖然としている。
「へぇ、やるなぁ」
周りで見ていた観衆が呆然としている中、セシルは感心していた。
(あれは柔術、それも長い間訓練を積んだ動きだ。ただの臆病なお嬢さんじゃなさそうだな)
しばらく驚いていた赤パンだったが、しばらくしてようやく正気に戻り、当然のように食ってかかる。
「あ、兄貴!? くそ……てめぇ何しやがった?」
「触るな汚らわしい」
のびている白パンと、予想外の出来事に慌てふためいて喚き散らす赤パンを真っ直ぐに見据え、女は顔の布を外して淡々とした口調で言った。
アルバートでは余り見かけない、水色の髪。青い目。
砂漠特有の褐色の肌を陽光の下に晒して、男達を睨み付けながら
「お前らが自分から私の商売道具にぶつかってきたのだろう。それなら自業自得だ。私を脅して金と身体を奪おうというのなら、無駄なことだ。身の程を知れ下郎」
そう言った女は、既にさっきまでとは明らかに違う空気を纏わせていた。
どこか気高い風格のような……ただの絵描きの女が何故そんなものを纏っているのかは分からないが。
赤パンは、それに気圧されていたが、やがて顔を真っ赤にして目を見開く。
「うるせぇ! なめてんじゃねえぞ!」
怒鳴りながら懐に隠していた拳銃を取り出した。
途端に、行方を見守っていた観衆はそれを目にした途端、悲鳴を上げて逃げ出す。
わーだの、きゃーだの、人々の怒号と悲鳴で広場は大混乱に陥った。
セシルだけは混乱した人並みを避けながらぼーっと様子を見ていたが。
「ぶち殺されたくなかったら大人しく……」
ダァンダァンダァン!!
赤パンの言葉はそこまでだった。突然の銃声に遮られてしまったから。そして、持っていた銃がいつの間にか木っ端微塵に破壊されていることに気付いた。
驚いて振り向くと、ほとんどの観衆が逃げてしまった所で、銃を抜いたセシルが少し離れたところに立っていた。
目は半開きで、腕の力はまるで入っておらずにブラブラしていたが、銃弾は一発も外れることなく、赤パンの持つ銃身を砕いていた。
だが、セシルは顔を歪めて、手にした銃を見る。
「なんだこりゃ……反動がまるでない。撃ってる感じがまるでないな。羽みたいに軽い上に反動はないし、おまけに軽く絞っただけで連発されてるし。一体どうなってんだろなーこの銃」
そう言って、白銀色の銃身に珍しい金色の螺旋模様が入った、まるで芸術品のような銃に目を落とす。
テアナが「ある人からのプレゼントです」と言って木箱に入れて持ってきた、ヴィアゲイターというらしいその銃は、マールの持つ重厚で大型なエア・アンカーとは対照的な軽量で細身の銃だ。
とはいえ、実際に使ったのは今が初めてだったのだが。
「誰からの差し入れか分からないけど、気味悪い銃だよなぁ……。よし、金貯まったら新しいやつ買って売っ払おう。うん、それがいいな」
そういうセシルは、まだマールへの借金も返していないのだが……借金を返すということは収入の問題ではなく、性質の問題でもあった。そして今度はどんな安物の銃を買おうかと考えを巡らせていると
「な、なんだてめぇは!!」
「…………」
銃を壊されて、混乱している赤パンがうろたえながら叫ぶ。
水色の女は、安堵……ではなく、警戒した目でセシルを見ていた。
まぁそれは当然だろう、とセシルは思った。彼女にしてみたら、どちらも不審者には変わりないのだ。
セシルは両者の視線を受け流しながら、赤パンの方を見て
「俺? あー……ただの通行人だよ。ただのカツアゲかと思ったら、銃出してきたからさ。さすがに駄目だろと思って注意しようとしたら、これだ」
やれやれ、といった様子で得体の知れない自分の銃と粉々になった赤パンの銃を見ながら言う。
本当は一発だけで銃創を壊そうと思っていたのだが、慣れないせいか完全に大破させてしまった。
だが、赤パンにしてみればたまったものではない。
弱い女を狙ったはずが逆に倒され、最終手段として銃を出したがそれも破壊された。
彼は完全にヤケにになっていた。
「ふざけんな!! こうなったら女共々ぶっ飛ばして……」
あと頼れるのは、己の肉体のみ。セシルに向かって殴りかかろうと走りだしたは良いが、それも長くは続かなかった。銃が離れた時点で、水色の女はすでに至近距離まで接近していた。そして、足を引っかける。
「愚図め」
そうして体勢を崩し、倒れそうなところで襟首を掴み、思いっきり投げ飛ばした。
ドシャァ!
数秒後に、嫌な音と共に赤パンは気絶した。今度は頭から落ちたようだ。
「……っておいおい。殺すなよ」
「心配ない。弱者をいなす術くらい心得ている」
いなしてない、思いっきり手荒だ。……とセシルは思ったが自分も投げられそうなので止めておくことにした。
水色の女は振り返ってセシルをにらみ据えて
「それよりお前は誰だ。いきなり現れて」
ごく当たり前の質問だった。それにセシルは言い訳を考えながら
「あー、えっと……だから通行人だって。エキストラとかそんな感じ」
言い訳になってない言い訳に、さらに水色の女の追求が続く。
「嘘を付け。あの銃さばき、何かの訓練を受けているのか。……それとも軍がなりふり構わず私を暗殺にでも来たか?」
そう言って、睨み付けてくる。本気の目だった。
アルバートではほとんど見かけない、鋭く研ぎ澄まされた青い目がこちらを射抜いてくる。
「何の話だよ!?」
物騒な単語に、慌てて聞き返す。
水色の女はそれでもしばらくの間、セシルを睨んでいたが、やがて何か納得した様子で
「まぁよい。私がまだ生きているということは、お前は暗殺者ではないのだろうな。あれだけの銃技があれば、お前はわざわざ姿を現すこともなく、瞬きする間に私を殺せたはずだ。とりあえず、助けてもらったことには感謝しておこう」
「買い被りだって。あんただって派手にやったもんだ」
セシルは肩をすくめる。そして辺りを見渡してみる。
幸いさっきの騒ぎでほとんどの観衆が逃げてしまったために、広場はいつになく静まりかえっていた。
水色の女は、ふっと笑うと
「何、あれくらい造作ない」
「いや、そう言う問題じゃなくてね……まぁいいや。広場の人達は逃げちまったし、どうしたもんかね……」
もともとは情報収集のために広場に入ったのだが、肝心の聞く人間がいなければ話にならない。普段は活気に満ちあふれている広場が、今は静寂に包まれている。
時折ヒューと吹く風に砂が舞い上がり、騒ぎで崩された屋台がどことなく哀愁を漂わせている。
こんな状況で話を聞ける人間など……いや、一人だけ目の前にいた。
セシルはげんなりしつつ、一人目の聞き込みを行うことにした。
「……えっとさ、あんたがここで商売してるんなら聞きたいことがあるんだよ」
「何だ? 私に分かることなら答えてやろう」
そう言われ、セシルはしばらく考えていたがやがて
「それじゃあ……最近この広場で動きが活発になってきた店とか組織とか知らないか? あるいは、ここ一週間以内で入ってきた新入りで……武器や資源なんかを扱ってるところとか。それか、この辺であんまり人が立ち寄らないような、廃屋とか洞窟とかない?」
とりあえず、スパイ活動をするのならある程度力を蓄える必要があるだろう。それに人に見つからないような拠点も。
どこから支援を受けているのなら話は別だが。
その質問に、水色の女は少し考えて
「私がここで絵を描くようになったのは最近のことだ。この広場の勢力はよく知らない。
……だが、人が立ち寄らない洞窟ならあるぞ」
「マジで? どこ?」
「教えても良いが、入れない。あそこは王家の所有地だ」
「王家ねぇ」
アルバートでは聞かない言葉。
同盟国とは言え、ライスコーフとアルバートは政治の仕組みが全く違うのだ。ライスコーフで王家といえば、最高権力者。
スパイがまさか王家の所有地に潜伏してるとは思えないが……。他に情報らしい情報はないので、聞いておくことにする。
「まぁ入れなくてもいいや、見物だけして帰るから場所教えてくれよ」
とりあえず、場所を教えて貰う。今日は基本的な下調べだ。
礼を言い、その場を去ろうとしたセシルだったが、それを水色の女が呼び止めた。
「待て」
肩を落としながら帰ろうとするセシルに、水色の女が後ろから声を掛ける。セシルが気怠げに振り向くと
「お互い名も知らないわけだが。私はステレイア・ハイラルドと名乗っておこう」
何て言ってくる。突然自己紹介されて、若干戸惑うセシル。
「あぁ……俺は、セシル・クラフト。でも何で?」
「恩人には礼を尽くす。それが家訓だ。何か困ったことがあったら、私のところに来い。私はいつでもここにいるから」
言い終わると、水色の女……ステレイアは布を被り、人気のない広場を去ってどこかへ行ってしまった。
「なんなんだぁ、あの女」
後に残されたセシルは、首をかしげるばかりだった。