TS童話赤ずきん
元ネタと同じように、性的暴力を匂わせる描写があります。
むかしむかし、あるところに、とても可愛らしい子供が住んでいました。
赤いずきんが似合うだろうと考えたお姉さんが、子供をおめかして赤いずきんを身に着けさせると、あまりにも似合っていたため、彼女は「赤ずきんちゃん」と呼ばれるようになりました。
ある時、赤ずきんのお母さんが言いました。
「森に住んでいるお姉さんが病気になっちゃったの。可愛がられていたあなたがお見舞いに行けば、お姉さんも元に戻ると思うわ」
赤ずきんはお菓子とブドウ酒の入ったバスケットを受け取ります。しかし、それだけでは味気ないと思う赤ずきん。
赤ずきんは氷を入れてブドウ酒を冷やし、退屈しのぎの絵本をバスケットに入れました。
「お姉さんのお家に行ってくるわ」
「行ってらっしゃい。寄り道をしてはいけません。それと、知らない人について行っちゃだめですよ?」
「はーい!」
一人で森に入ったことの無い赤ずきん。お母さんは心配になり注意します。
赤ずきんが元気に返事をしたので、安心して彼女を送り出しました。
――
――――
村の隣の森に入ってお姉さんのお家に向かう赤ずきん。
言いつけ通り、寄り道もせずに進む赤ずきんの前に、優しげな雰囲気のオオカミが現れます。オオカミは赤ずきんに声をかけました。
「やあやあ、赤いずきんが似合う可愛い女の子。これからどこに行くんだい?」
赤ずきんはお母さんの言いつけを思い出します。知らない人について行ってはいけないのです。しかし、話すだけならいいだろうと思い、オオカミの問いに答えます。
動物好きの赤ずきんには、優しく笑うオオカミが悪い男には見えなかったのです。
「あのね。お姉さんのお家に行くの。お母さんは病気だって言ってた。赤ずきんがいけばきっと元気になるわ」
「そうなんだ。赤ずきんちゃんはとってもえらい子だね」
オオカミは悪巧みを思いつきます。内心でほくそ笑みますが、その素振りを決して表に出すことはしませんでした。
(このガキは喰いごたえがなさそうだが、姉は旨そうだ。二人纏めて喰ってやる)
オオカミは赤ずきんに質問を重ねます。
「ところで、とてもいい匂いがするけどなんだろう」
「お菓子とブドウ酒よ。お母さんがお姉さんのために用意してくれたの」
「それはいい。とても美味しそうだね。お姉さんのお家はどこにあるんだい?」
「道なりに森の奥に行けばすぐに着くわ」
「そうなのかい。……そういえば、周りにいっぱい花が咲いているね。とっても綺麗だ。赤ずきんちゃんもお姉さんに何か贈り物をしてはどうかな?」
赤ずきんはオオカミに言われた通りに周りを見渡します。そこには視界一面に色とりどりの花が咲いていました。
これだけ綺麗なお花ならば、花束にしてプレゼントすれば喜ばれること間違いありません。赤ずきんは嬉しそうに言いました。
「ほんと! お姉さんも喜んでくれるわ! ありがとう、オオカミさん! わたし、お花を摘んでからお姉さんのお家に向かうわ!」
そして、赤ずきんはお花を丁寧に摘んでいきました。あの花もこの花もと集めているうちに、少しずつ道から逸れていく赤ずきん。赤ずきんはその事に気が付きません。
いつの間にかオオカミの姿は煙のように消えていました。
――
――――
さて、赤ずきんと別れたオオカミは森を道なりに進み、お姉さんのお家に向かっていました。
しばらく歩くと、赤ずきんの言った通りにお家が一軒ありました。これがお姉さんのお家で間違いなさそうです。
オオカミは思わず溢れ出た唾液を舐めとって、扉を叩きます。
「はい、どなたでしょうか?」
オオカミは女の子の声を真似て言いました。
「赤ずきんよ。お見舞いにブドウ酒とお菓子を持ってきたの」
「まあ、本当? どうぞ入ってきてちょうだいな。手が動かなくて扉は閉めていないの」
「そうか。では遠慮なく」
オオカミは勢いよく扉を開けて、お姉さんに飛び掛かかってしまいました。
――
――――
「大変! お姉さんのお家に行かなくちゃ!」
バスケットの中がお花でいっぱいになったころ、赤ずきんはようやくお姉さんのお家に向かう途中であったと思い出しました。
「急がなきゃ」
このままではせっかくの氷が溶けてしまいます。
急いでお姉さんのお家に向かうと、入り口の扉が開きっぱなしになっていました。赤ずきんは首を傾げながら中に入ります。
不思議に思いながらお家に入った赤ずきん。奥に入るとお姉さんがベッドで眠っていました。
「こんにちは、きれいなお姉さん」
赤ずきんが挨拶をしますが、返事はありません。
赤ずきんはお姉さんに問いかけます。
「お姉さんはとても大きな耳をしているのね。とてもふさふさで触り心地がよさそうだわ」
「そうとも。だからお前の甘い声がよく聞こえてしまう」
返事が返ってきた事に赤ずきんは気を良くして問いかけます。
「お姉さんはとても大きな目をしているのね。くりくりで可愛らしいわ」
「そうとも。だからお前の姿がよく見えてしまう」
お姉さんは赤ずきんに問いかけます。
「赤ずきんの手は小さいんだね。薪を割るのにも難儀しそうだ」
「そうよ。それでも人を抱きしめる事はできるわ」
「赤ずきんの口は小さいんだね。食事をするのにも難儀しそうだ」
「そうよ。それでも……」
「……それでも?」
赤ずきんは妖しく笑って言いました。
「あなたを食べる事はできるわ!」
赤ずきんは飛び掛かり、お姉さんを食べてしまいました。
――
――――
しばらくして、いつも森で狩りをしていた猟師がお家の前を通りかかり、女の子のすすり泣く声を聴きました。
「何の声だ?」
猟師は気になってお姉さんのお家を覗きます。すると……
「ふぇぇ……、もう、お婿に行けない……」
TSF使いである『赤ずきんのお姉さん』にケモ耳美少女にされた『お姉さん風の』オオカミが、満ち足りた笑顔で眠る赤いずきんの女の子に抱き着かれてすすり泣いていたのです。
動物好きの赤ずきんにとって、彼女は辛抱たまらん姿をしていたのでした。
ケモ耳美少女と赤ずきんちゃんの持ってきた絵本、さらにお菓子とブドウ酒で体力を回復した『赤ずきんのお姉さん』は、腱鞘炎で腫れた腕を氷で冷やしながら言いました。
「これで薄い本の続きが書けるわ!」
彼女の肌は妙にツヤツヤとしていました。
お母さんの気遣いは、彼女の病気を余計悪化させただけだったようです。
赤ずきんはオオカミに『お姉さんのお見舞いに来た』とは一言も言いませんでした。
身体の病気ではないお姉さんは、声の主が赤ずきんではないと気が付いて、TSF能力でオオカミを迎撃したのです。
その光景をみた猟師は思わず呟きました。
「なんだこのカオス」
彼女たちに関わりたくないと思った猟師は、足音を殺して立ち去ります。それが彼の男としての身体を救う事になったのです。
それからしばらくして、目を覚ました赤ずきんは固く心に決めました。お母さんの言いつけは守ろうと。
かつて処女厨の少年だった赤ずきんは、初物をお姉さんに取られた事を心の底から後悔したのでした。