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それでも作品を人気にさせたいあなたへ

 さて、色々と厳しい事ですがこれが、まあ、八年くらいこの業界を見てきて抱いた感覚です。

 これを読んでなお、俺TUEEEやテンプレよりも自分の書いた物はなろう内部で注目される! 人気になる! なりたい! と思うのなら、相応の努力をしましょう。


 まず、絶対に更新を止めない事。たかが十万だの二十万文字だの書いたくらいで、反応がないからモチベが、なんて言うくらいなら素直にテンプレ書きましょうよ。どこかの誰かは三千万文字を書いて伝説の怪物として崇められていますよ。


 で、もちろんマーケティングと、宣伝戦略をしっかり練っておく事。

 アマチュア創作とはいえ、今のネット上でのアマチュア創作、特に一次創作は≒商業進出の足掛かりです。もう、「俺らが作った画像切り貼りして替え歌流すフラッシュ映像をみんなでシェアして笑おうぜ!」の時代ではないのです。周りは野獣の眼光でプロを狙っています。その中に、生半可な気持ちで入り込んでも埋もれるだけです。


 具体例で言えば、ニンジャスレイヤーなどが成功例です。

 ニンジャスレイヤーは元々、2002年前後にはプロトタイプが、2006年くらいにはmixiでの連載という形で僅かですが存在した作品です。ですが、どちらも完全に無名のまま消滅しました。

 が、作者というか翻訳者は諦めず、作品をTwitterで読みやすい形式に書き直し、Twitterで更新を再開しました。

 Twitterという完全にネット小説としてアウェーな場所で、最初の数か月間は百もいかないフォロワーを相手に、虚無感と戦いながらも更新を続け、

 ニンジャスレイヤーに興味を持ちそうな、サイバーパンク好きのアカウントを片っ端からフォローすると言う飛び込み営業戦法で読者を少しずつ増やし、

 作品をネットミーム化させ、作者や作品自体にドラマ性を持たせる事で一種のキャラクター化して作品自体の特別・謎っぷりを作り上げ

 Twitterという場所の性質、文字数制限、ハッシュタグを最大限に利用し、約140字、大体1行単位を数分おきに投稿する「リアルタイム更新」によって、同じ時間に同じ更新を同じペースで読み、ハッシュタグ上で感想を言い合う「実況」システムを構築し、小説という媒体に動画的な概念を持ち込む事で、成功を収めました。ひょっとすると、世界で最も一行ごとの文章に感想がついた小説かもしれません。


 この成功の影にはもちろん運もありますが、なろうに投稿するのではなく、流行するSNSに投稿するという選択をした目の付け所の良さ、そして、客層に既存のネット小説ユーザーを想定しないという適格なマーケティングがあります。

 Twitterだからこそ、Twitterで人気が出せる様に作品を調整したからこそ、きちんと人気を出せる作品となった。小説投稿サイトでは今の様に書籍化するのも難しかったでしょう。

 更に、ニンジャスレイヤーはサイバーパンクや伝奇ファンタジーの色合いがかなり強い作品です。ラノベ全体はともかく、ネット小説としての人気は獲得しづらいジャンルだと言ってよいでしょう。だからこそ、なろうを含む、いわゆる現代のアニメ・ラノベ好きではなく、もっと別な、SFなどの愛好家へ働きかけたのです。

 自分の作品の方向性や雰囲気を理解した上で、それをよく読み、よく楽しむであろう客層へアピールをした。それが上手くいった。

 どこで連載するのか、どうやって連載するのか、作者はどういう言動を取るか、どんな場所で宣伝するか、どうやって宣伝するか、どう拡散するか、どう人気を出すか

 作品の出来と同じか、それ以上にそういった物が重要視される時代です。人気を出したければ、相応の研究が必要なのです。



 もしも、自分はストイックに描く作家だ!アーティストだ!と思っているのなら、「非現実の王国で」のヘンリー・ダーガーを見習って一生誰にも見せずに書き続けるか、素直に出版社へ送りましょう。

 というか、創作する楽しさ、書いているという楽しさが読者の反応より遥かに勝っていて、読者の反応なんてあれば嬉しいけど無いなら無いで別に良い、という方なら、こんな話を読む必要はありません。

 なろうは小説専門のオンラインストレージ、いいね? という事です。


 趣味だし、そういう面倒なのは抜きで、同好の士と盛り上がるくらいでいいのに、と思う方。

 残念ながら、なろうはマイノリティが集まる場としては弱いです。

 そして、ネット小説はパソコン通信のエヴァFF時代から俺TUEEEがマジョリティです。(この辺は私が書いた『なろうテンプレの中身はなろうで生まれた物じゃないからね!?』を参考にすると分かり易いでステマ)

 なろうではなく、別の、もっと一ジャンルに特化したサイトを探す方がいいでしょう。特に純文学は専用のサイトが幾らか存在します。



 正直な所、現状のネット小説はラノベとアニメの混合で発展してきたジャンルが一強という偏った状態です。

 ケータイ小説が衰退した今、なろうと、なろうテンプレがネット小説の支配者です。住み分けは今の所、できていません。特に男性読者をメインターゲットとした作品に関しては、なろう以外の盛り上がりはほぼ皆無に等しいです。

 (二次創作界隈は十分に盛り上がりを見せていますが、一次創作の話なので割愛)

 更に言ってしまえば、一般文芸に位置する作品はほぼ蚊帳の外と言っても過言ではありません。

 期待されていたカクヨムも、今の所はなろうとの差別化を行えているとはいいがたいでしょう。

 その中で評価されたいのなら、評価される様に自分の作品を変えていかなければなりません。それが良い事かは、さあ、どうでしょうね。





終わりに


 ……何? さっきから偉そうに言う割にはお前は実行してない?

 当たり前だろ! 書き終わったら満足よ!

……どこかでも、というか以前からなろうのエッセイジャンルでもカクヨムでも散々に言われていた話ですが、作品に対する権威づけが弱いのがなろうひいてはネット小説の最大の弱点だと思うのですよ。

ランキング以外、何が面白いのかを分かり易く判断させてくれる基準がない。

理想郷の様にランキングと言う物が存在しない環境下では、声の大きい読者がどれだけ外に喧伝するかで勝負が決まりましたね。理想郷では声の大きい読者が全てだった。なろうはランキングが全てだ。

それでいて素人の書いた物を読ませようというのだから、当然テンプレ化は避けられないと思うんです。


もしも、もしもですよ。カクヨムが完璧な形で成功を収めて、公式アカウントがちょくちょく作品をレビューし始めていたら、本当に終わっていたかもしれません。ゲームセットです。

実際にはカクヨムが色々と対応や仕様でボロボロだったのでなろうは現行王者のままでしたが、KADOKAWAが本腰をいれて「ランキング以外の権威創り」に力を入れたら本当に終わっていたと思います。

有名なラノベ作家に何か月か給料込みでカクヨム作品を漁ってレビューしてもらい、その作家が選んだ作品を書籍化ではなくても賞金くらいは渡す、とかね。大資本を持っているからこそできる事が幾らでもあった。

その気になればなろうの利用ユーザーなんか無視して別の部分にアピールすれば良かった訳です。なろうユーザーは多く見積もっても二百万にはいかない。世の中にオタクはもっと居るのですから、なろう層を切ってネット小説ユーザーの間口を広げる賭けに出ても良かったと思うのです。


映画なら興行収入やランキング以外に、批評家による高・低評価がある。音楽も、小説もそう。

商業から出ている物は、プロの目という物に晒される代わりに、上手く行けばプロからのお墨付きが得られて、それがランキングとは関係ない権威となる。小説で言えば、直木賞とか芥川賞とかがまさにそれ。本屋大賞もそうだ……あ、なろう出身の膵臓が本屋大賞になったのは喜ばしい事です。本当におめでとうございます。

もちろん、普通の読者の口コミも有効ではありますが、やっぱりそういう、商業主導での大賞や、高名な評論家の言葉は相応の権威となって売り上げを伸ばしてくれる物です。(直木賞とか芥川賞の受賞作はやっぱりネームバリューや、受賞作というハク付けもあって抜群に売れます)


 ……しかし、アマチュア創作であるネットでの活動はそれらの職業批評家が弁舌を振るう相手としては立場が弱すぎるんですよね。

 金を貰ってやってるプロと、趣味でやってるアマチュアでは、批評家が堂々と叩いて良い度合がまるで違う。映画サークルの自主制作映画をジーン・シスケル辺りに公の形でボロクソに叩かせても、周りは批評家を批判するかドン引きでしょう。そういう事です。


 となればアマチュアのレビューですが。昔と比べて、正直、個人でのレビューが本当に弱体化しています。ランキングの方がみんな注目する。

 昔は良かった論とかではなくて、熱心にレビューをする人が減った。ランキングなど無かった時代に比べれば、レビュー自体の需要が減っているのだから当然です。

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