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ちょっと真面目な話

+ 真面目な話 +


 なろうが商業に出始めてから今に至るまでよく言われる「現代のオタクは苦労する展開が嫌いで」っていう、なろうテンプレ系統俺TUEEEへの評価、あれ、私は間違いだと思ってるんですよね。

 いや、完全に間違いとは言いませんよ?バスタード、HELLSING、果ては007にシャーロックホームズなども含め、スーパーマンが無双するのはみんな大好きです。無双、大暴れ、結構じゃないですか。

「自分ではないが、自分が持っている一要素を持ち上げる事で自分を特別な存在だと思いたい」というのも、間違いではないんだと思います。そういう側面、ありますしね。


 ただ、ラノベが学園・恋愛に舵を切っていく中で、ネットでは異世界、バトル、俺TUEEEに向かっていったという点に着目して欲しいなって思うのです。

 環境が違う。場所が違う。マンガにはマンガの進化がある様に、アメコミにはアメコミの、バンドデシネにはバンドデシネの進化が有るのです。ガラパゴス諸島の生物が独自進化を遂げる様に、場所が変われば文化は変わる。ネット小説は小説と言う業界から派生したものではありますが、その発展した形はまるで違う物です。異なる文化圏での違いを、あれは俗悪な文化だから、と切って捨てるのでは余りにも気が早すぎる。


 話数ごとに区切りが存在するネット小説に置いて、話が続くかどうかは作者すら知らない未知数です。いつエタ―なっても不思議ではない。

 味方サイドのピンチで、ここから華麗に逆転!という寸前でエタ―、どん底に落ちた主人公がヒロインだか家族だかに励まされて立ち上がる……前にエタ―、よっぽど面白く無きゃ読めない!


 というか、話がピンチに入った! 続きが今すぐ読みたい! でも更新は明日だ! 他にも読みたい作品が沢山あるし待ってられない! だいたい明日は確実に更新されるんだろうな!?締め切りでケツを蹴り上げる編集はいねえんだぞ! というのが、私も含めた読者の素直な感情ではないでしょうか。



 それに、紙の本は出版社から出ている、編集の目があるという、一応の品質の保証があります。「この作品は出版社という後見人がいる」という付加価値があり、その価値を信じて人はオリジナリティに溢れる作品を買う事ができ、読む事が出来る。

 しかし、ネット小説にはそれが無く、代わりに、テンプレという、「こういった展開で、こういう内容の話で、品質はこんな感じですよ」と示してくれる指標が存在するのです。


 ひと昔前は、ネット上でも作品のレビューが盛んだったので、個々のレビュワーが品質を語る事で一定のオリジナリティが確保されていました。

 が、ランキングというシステムが一般化して以降は、ランキングが一定の品質保証となり、必然的に「サイトのメインユーザーが読みやすい、ランキングに入りやすい作品」が優先される様になり、

 そのままの流れで、「ランキングに入りやすい要素」がこれでもかと凝縮された作品、つまり「なろうテンプレ」が成立した、というのが、私の見てきた中での事実です。




 ……つまり、そういった、ネット小説でテンプレ展開が人気になる背景には、掲載方法における違いがあるのではないのかと。

 読んでいる人間が変わったのではなくて、読まれている場所が変わった結果の変化ではないかと思うのです。

 ネットと紙の本では見られ方が違い、楽しみ方が違うのです。

 ネット小説が紙の本になる現象が一般化して、同じものの様に見られがちですが、そもそもどこで連載され、どこで人気を出して、何処でファンを獲得しているのかを忘れてはいけません。



 それでも昔は、アマチュア創作の場として読者も作者も手探りで作品を読み、書いている時代がありました。パソコンがネット小説の主体となって読者が集まり、テンプレ的な作品が週に一回、大作が月一回くらい更新される時代の話です。

 あの当時であれば、週に数回の更新なら十分早い方でした。そもそもの読者数も今とは違いますし、パソコンで腰を据えて読むのですから、一話が少し長くても良かった。いえ、長くないと読み応えがなかった。

 ニッチなマニアの遊びだった時代です。


 しかし、ネットがスマホ主体になり、オタクという概念がどんどん一般化し、娯楽も以前より増して多様化した現代、ネット小説はオタクの中で一般的な存在となりました。その中では「他にも沢山遊びたい事が有り、文章にばっかり時間はかけられない。タダで軽く読める物が」というニーズが一般化しています。

 必然として、早く読めて、軽く読めるものを求められます。

 話の展開、文章量、更新、全て含めて、ゆっくりとした速度では読者が待ってくれない時代に入ってきているのです。



 そもそも、素人がみんなでワイワイ楽しむ(ブーイング含む)場で発展してきた文化です。その文化が成長するにつれて商業的な価値を帯びてきただけで、依然としてラノベとネット小説の間には深い溝が有ります。

 卓球とテニスを並べて、似た様な競技だから同じものだ、と語るくらいに違う物です。


 何が言いたいかというと……ネット小説と小説を混同して語ってはいけない(戒め)

正直な所、なろうテンプレの隆盛を「ルサンチマン(使ってみたかった言葉なんだ)的な作品が受けがいいから」と一言で片づける事は出来ます。

が、それだけじゃ材料として浅いと思います。

だってそうでしょう。本当に今のオタクがなろうテンプレ以外受け付けない身体なら、漫画もアニメもなろうテンプレが全てになっていないとおかしい。でも実際には、漫画は多様なまま、アニメも多様なまま、実を言えばラノベだって、なろう系とそれ以外で沢山の枝分かれが有る。

メガヒットした深夜アニメは、どう考えてもなろう系とは程遠い。

だとすれば、一言で、なろう読者はみんなクラスの底辺だから!なろう系以外受け付けない読者だから!みたいに扱うのは浅いじゃないですか。

むしろ、ウェブ上である、連載形式である、という部分を意識して、「なろうという場所に読者が求めている者がなろうテンプレである」と考えた方がきっと正しい。


その場で求められている物が何なのか、その場でのスタイルとはどういう物なのか、文脈を理解して物を語った方がいいよ、という話です。


また、作者と読者がほど近い位置にある分、出版物とは違って読者の要求がダイレクトに作者に影響する、という面もあるでしょうね。

出版社という盾を持つプロと、何も持たずにノーガードで受け止める事になるアマチュアでは、読者の言葉の距離が違うのですから。

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