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第五十六話 日曜日の訪問者

 チャイムの音に、奥のリビングで寝ていた美冬と舞が目を覚ました。

 リビングにはインターホンがあったからだ。


「なに…?」


 布団から体を起こして、まだ眠そうな声でパジャマ姿の美冬が言う。


「誰か来た?」


 舞も布団から這い出て、パジャマ姿のまま、テーブルの上の眼鏡を探しながら言った。

 それから二人はいそいそと布団を畳み、部屋着用のトレーナー、スウェットパンツへと着替えた。

 それは時間にして七~八分程かかっただろうか。


    ドンドンドン!


 今度は突然、玄関のドアを強く叩く音が聞こえた。


「なに!?」


 着替え終わり脱衣場の洗面台で髪をとかしていた美冬が、びっくりして廊下に顔を出し、玄関の方を眺めて言う。

 そして流石に玄関側の部屋で寝ていた渡辺と安藤も、この音では目を覚ました。

 男達二人は最初からトレーナーにスウェットパンツで寝ていた。


「来たか」


 体を起こして渡辺が呟いた。


「渡辺さん」


 まだ布団から顔だけ出した状態の安藤は起き上がった渡辺を見上げながら言った。


「大丈夫だ。それより後の事は頼んだぞ」


 下を向き、安藤の顔を見ながらそう言うと、渡辺は部屋のドアを開けて玄関の方へと向かった。


「おじさん!」


 廊下に顔を出していた美冬が、出てきた渡辺を見つけると声をかける。

 渡辺は美冬の方を振り返り、口元で人差し指を立てては静かにする様にと促した。

 そして玄関の方に向き直ると、そろそろと近づいて鍵を開けた。



「娘を連れに来た。警備員を二人、頼んで連れて来た。手荒な真似はしたくない」


 ドアの向こうに立っていた光男の第一声がそれだった。

 確かに光男の後ろには二人のスーツ姿の男が立っているのが、渡辺にも見えた。


「来ると思っていました」


 渡辺は無表情な顔で言った。


「当たり前だ」


 そう言う光男の目は鋭かった。


「話をしましょう。十分待ってください。部屋を片付ける」


「変な小細工や考えはするなよ。あんたのしている事は、未成年者誘拐なんだ。犯罪なんだぞ! 警察を連れて来る事も出来たが、あんたを知っているから、穏便にしようと警備員だけ頼んだんだ」


「分ってます。本当に部屋を片付けるだけ。十分だけ待って下さい」


 光男の言葉に渡辺はそう言うと素早くドアを閉めた。

 そして廊下をリビングの方へと向かって歩いて行く。

 三人がリビングから顔を少し出し、玄関の方を覗いている姿が見えた。


「美冬ちゃんの、お父さんだ」


 そんな三人に向かって渡辺は無表情なままで言った。






つづく



 

 


 

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