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第三十七話 ディスカッション【discussion】その⑧ 美夏?美冬?

 美冬は笑っていた。

 そして言った。


「それも、答えられません」


 それで一同は一瞬静まり返った。が、直ぐに声は出た。


「それはない! それはちゃんと言うべきだ」


 それは半ば叫ぶ様な安藤の声だった。


「待って、隠すとすればいるからじゃない。もう一人」


「そうか、そうも考えられる」


 舞の言葉に渡辺が乗っかった。


「ん? そうか? 答えられないという事はそういう事か」


 安藤も舞の考えに納得したかの様に呟く。


「そうなると、さっき渡辺さんが言っていた『一度死んでいるから』の意味が繋がりますね。瀬川さんには美夏と言う双子の姉か妹がいて、その子が流産か、生まれて直ぐ死んだ。そしてその子の想いを背負って瀬川美冬は生きて来たが、しかし母親の虐待によって瀬川さんも段々洗脳されてしまい死にたい気持ちになって来たと」


「そういう事なのか」


 安藤の説明に渡辺は簡単に納得した様子を見せる。


「そうなの?」


 しかし舞は何か釈然としない様だった。


「佐々木さん、さっき自分で言ったくせに。じゃあ他にどう考える。後考えられるのは、此処に居るのは実は美夏さんの方で、死んだのが美冬さん。それなら一度死んでいるは、より鮮明になる」


「おお」


 安藤の説明に渡辺は思わず声をあげた。


「ちょっと」


 その流れに思わず美冬が声を出す。

 しかしみんなは聞こえない振りで、美冬双子説で盛り上がるのを止めようとはしなかった。


「確かにそれなら辻褄が合う。いや、寧ろそれしかない」


 渡辺は興奮した様に言った。


「でも何かが引っかかる。美冬にお姉さんがいたなんて」


「お姉さんとは限らない。妹さんかも知れない。大体此処にいるのは美夏の方かも」


 そんな舞の言葉に安藤は更に自論を展開する。


「なるほどなるほど」


 渡辺が相槌を打つ。

 そんな感じでいつの間にか三人はテーブルの上で顔を近づけて、美冬を蚊帳の外にして話を始めていた。


「ちょっと!」


 その様子に思わず美冬は少し大きな声を出す。

 だから三人は一斉に美冬の方を向いた。

 ただしそれが美冬か美夏かの判断が付かず、少し胡散臭そうな目で。


「なーに?」


 その言葉に安藤が尋ねる。


「何って? あなたたちこそ何やってんのよ。人の話も聞かないで」


「だって、聞いたって教えてくれないじゃん。俺達今、謎を解きつつあるんだ」


 美冬の言葉に安藤が答えた。


「だから謎解きをしたいなら私の話を聞きなさいよ。何で無視するの」


「無視した?」


 舞が安藤の方を見て言った。


「いや」


 安藤は渡辺の方を向いて言った。


「俺も、無視なんてしていない」


 渡辺はそう美冬の方を向いて言った。


「そう、あ、そう。じゃあいいわ。いい? 今からさっきの質問の答えをやっぱり言います」


 美冬がそう言うと、三人は次の一声を固唾を呑んで見守った。


「私には姉も妹も、双子もいません。一人っ子です」


「やっぱり…」


 美冬の話に舞が呟く。

 安藤と渡辺はその言葉に固まって、声も出なかった。


「それだけ。質問には答えたからね。あーもうこんな時間、そんなくだらない事に時間を使うから。私そろそろ帰る。おじさん、送って」


 美冬はスマホの時計を見ながらそう言った。


 時間は夜七時をとうに過ぎていた。

 だからこの美冬の言葉を最後に、この討論会はお開きとなった。






つづく


いつも読んで頂いて、有難うございます。

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