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ZEROをAIに書かせたらどうなるのか? これならすぐ出来るので実験します編  作者: じゆう七ON


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AI 第17話 はじまりの朝、田中リルの選択

多分、こっちの方が面白いね。 現代来たっぽい。 その手があったのかあ。

 頬を撫でる風は、驚くほど優しかった。


 リルは呆然としたまま、自分自身の身体を見つめた。


 白銀の鎧は消え、身に纏っているのは調整施設で渡された、あのボロボロのインナーだけ。


 神獣としての強大な魔力は、時空を越えるための代償として、そのほとんどが霧散していた。


「……みんな……いなくなっちゃったのね」


 手首から風に舞う腕輪の灰を、切ない目で見つめる。


 パピーたちの笑顔も、モッスン様の厳格な声も、もうこの世界にはない。


 かつて神界の第三席として君臨したフェンリルは、今、名もなき荒野に一人、放り出されたのだ。


 ――ふぎゃあぁっ、ふぎゃあぁぁぁ……!


 不意に、足元から小さな泣き声が響いた。


 驚いて視線を落とすと、そこには布に包まれた、小さな、本当に小さな命が転がっていた。


「……赤ちゃん? なぜ、こんなところに」


 恐る恐る手を伸ばし、その温もりを抱き上げる。


 神界では決して感じることのなかった、柔らかで、壊れそうなほど繊細な重み。


 その子の瞳がぱちりと開くと、透き通った瞳がリルをじっと見つめ返し、泣き止んだ。


「あ、ぅ……」


 小さな手が、リルの白銀の指をギュッと握りしめる。


 その瞬間、リルの胸の奥に、かつてないほど熱い感情が込み上げた。


 博士が言った「すべてをやり直す」という意味。


 ゴトーが言った「君の意志で牙を剥け」という言葉。


「そうか……。私は、守りたかったんだ。誰かに命令されるからじゃなくて、この温もりを」


 赤ん坊の隣に落ちていた手紙を拾い上げる。


 そこには、震える文字で一言だけ、こう記されていた。


 『この子を、どうか。――未来を託します。』


 それが博士のものなのか、あるいは時空の悪戯で結びついた誰かの願いなのかは分からない。


 ただ、リルは決めた。


 この日から、彼女は戦うための神獣フェンリルであることを捨てた。


「よし……今日から私は、田中リル。そしてあなたは……」


 リルの口から、自然と名前が溢れる。


 それは神界の言葉ではなく、この人間界の穏やかな響き。


「……今日から、私があなたの『お母さん』よ」


◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇


 ――それから、数年の月日が流れた。


 「リルさーん! 田中リルさーん!!」


 エプロン姿でスーパーのタイムセールに並んでいたリルは、近所の奥さんに呼ばれて顔を上げた。


 かつての殺気立った瞳はどこへやら。


 今の彼女は、一円でも安い卵を求めて目を光らせる、どこにでもいる(?)主婦である。


「あら、佐藤さん。今日の卵、もう売り切れちゃったかしら?」


「卵もそうだけど、見なさいよテレビ! また変なニュースやってるわよ!」


 街頭の大型モニターには、神界の残滓とも言える、不気味な黒い霧が映し出されていた。


 100年の時を経て、再びこの人間界にも「魔素」の影響が忍び寄ろうとしている。


 だが、リルは怖くない。


 彼女の背後には、元気に走り回り、転んで泥だらけになった「あの子」がいる。


「ママ、お腹すいたー!」


「はいはい、今夜はハンバーグよ。……世界がどうなろうと、うちの食卓の平和は、私が死守してみせるわ」


 リルの瞳が、一瞬だけかつてのフェンリルのように鋭く、けれど慈愛に満ちて輝いた。


 神界十二神、第三席。


 白銀の死神と呼ばれた彼女が、今、最強の武器「お玉」を手に、愛する家族のために立ち上がる。


 田中リルの、本当の戦いは――主婦としての毎日は、これからが本番なのだ。



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