表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

自殺寺

作者: 小雨川蛙

 そのお寺は自殺の名所。

 入った人間は必ず自殺をしてしまう。


 来訪者を若い尼が出迎える。


「そんなにも死にたいのですか」


 尼の問い。

 これは最終確認でもある。


「死にたくありません」


 そして、今回の来訪者は『正しい答え』を口にした。


「では、何故この場所に来たのですか」

「そうしなければ、あなたがこの土地を滅ぼすからです」


 その言葉を聞いて尼は満足げに笑う。

 にんまりと笑った口がだんだんと裂ける。

 引き伸ばされたようにして身体が伸びる。


 寺の中。

 本尊が見守る中、尼は一匹の大蛇となる。

 ぽっかりと大口を開けた、この土地の神様。


 来訪者は泣きながら問う。


「俺の命でこの土地は何年平和となりますか」


 大蛇は答えない。

 蛇に人の言葉など話せやしないから。


「あなたはあと何年こんなことを続けるのですか」


 *


 本尊が見下ろす先に一人の尼がいる。

 この場所を自殺寺と名付けた当人だ。


 そして、いつだって自殺寺には彼女以外に誰もいない。


 彼女は満足気に呟いた。


「慈しみ深い人間が消えたなら、この寺は自然と消えるだろう。あぁ、人間とはなんとも美しく愛おしいものだ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ