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優雅なクルージングの理由

 さて、アングラ技術者の集まる鼠の巣穴とやらへの旅だが、実の所これ以上ないほど快適だった。

 いやマジで敵が出てこねえ。

 こちらに来てから一度も遭遇していない宇宙怪獣……まぁあいつらは条件満たさないと出てこない事が多いが、そういうのも含めて宇宙海賊や、突発的軍事衝突の類も一切ない。

 もしかしてこのクライアント、フラグブレイカーとか面倒ごとクラッシャーの類か?

 だったら雇い入れたいくらいなんだが……いや、普段は邪魔になるからいいか。


「それにしても優雅なクルージングね」


「お気に召したようで何よりだ」


「広々とした船内、ホログラフとはいえ映し出される宇宙空間。そしてキンキンに冷えたシャンパンのある豪華な一人部屋ともなればね」


「部屋は無駄に余ってるんだ」


 バチクソ拾い船で、今も一日一部屋くらいのペースで成長しているからな。

 ルディはアロアニマの発展形で小柄な産まれながらに成長のよりを残しまくっていた。

 結果的にめっちゃ広くなるし、俺もガイドがないと迷う。

 むしろメリナやノイマンはなぜ迷わないのか不思議で仕方ないが……そろそろ自転車か原付の導入でも考慮するサイズになってきたな。


「他の傭兵もこうなのかしら」


「あー、それは明確に否定しておく」


「あら、きっぱり? ここが特別なわけ?」


「まぁそうだ。普通傭兵ってのは男ばかりか女所帯のどちらかだ。半々ってのはほとんどないという前提で聞いてくれ」


 ふむふむと面白そうに首を縦に振るクライアント。

 実際優雅なクルージングとは京言葉かブリテン式の皮肉だったのだろう。

 何もない方がいいのはそうだが、暇すぎるという遠回しな話だ。

 だからわざわざ談話室でシャンパンをがぶ飲みしていたとしか思えない。


「まぁ少数派から説明するが男女半々のパターン、これは基本的にカップルだったり夫婦だったりする。二人で一部屋を使っていることが多いから空き部屋はあるが、それぞれやる事があるから空き部屋の掃除なんかしない。他の場合も同様だが、空き部屋は物置にされるのが決まってる」


「つまり埃っぽいだけならまだしも、雑多に物が積まれてたり?」


「そうだな。男ばかりの場合だが大抵どこぞの娼館から見受けした女が乗ってたりする。危険手当やらなんやら、まぁ夜の相手という仕事がある以上見受け金以外にも給料が出るから脱走の話は滅多に聞かないが、そういう女は昼間こそ休憩時間でありしっかり睡眠をとっておく。でないと夜がつらい」


「昼夜逆転ね」


「あとの男連中だが大抵砲座をケツで磨くか、力仕事で走り回って空き部屋は物置だ」


「それは変わらないんだ」


「女所帯の場合腿の翁のは変わらんが、はっきり言って俺は入りたくない。そういう場所だった」


「なに? 爆弾とか地雷でもあった?」


「そんなもん男所帯の船にもある。だがある意味地雷だな……購入したは良いが、あまり好みじゃなかった高い化粧品やらが転がってる。うっかり踏んだら賠償請求だ」


 とまぁこの辺は軍の人間に聞いた話である。

 そういう不幸な事故を防ぐためにも臨検を受ける側が協力するのが一般的になっているし、あまり協力的でないと違法行為の可能性と判断されて賠償受け付けませんといわれるからな。

 だからこそ普段からの整理整頓が大切なのだが……。


「あとはニュービー、新人に多いんだがそもそも客を運搬できるほどの部屋がないパターン。超小型機とかに乗ってるとコックピットで睡眠をとる」


「うわぁ……腰痛めそう」


「実際超小型機乗りの医療用ポット入りの理由の大半が腰痛らしいが、部屋に余裕のある小型機に乗り換えても内装を充実させられるほどの金は無いし、掃除する時間もない」


 なにせ空飛ぶ家みたいなもんを、運転しながらレーダーとにらめっこして警戒が基本だからな。

 睡眠時間を削って、こっちの世界じゃありふれたエナドリもどきがぶ飲みして徹夜で次の目的地までかっ飛ばすのが普通だとか。

 時折ルート上や、少し道をはずれたところにあるコロニーに立ち寄って泥のように眠るという風習もある。


「というわけで、全部がオートメーション化されてるうちならではの利便性と快適性ってところだ」


「へぇ、面白い話だった。けど一つ気になることがある。この船、なんか日に日に広がってない?」


「そういう船だ」


「……何か隠してる?」


「ヘパイストスのアルマってやつを調べればいい。そんで質問はあいつにぶつければそのうち返事が来るだろう」


 機密事項です、ってな感じでな。

 俺相手なら語尾に星マークくらいは付けてくれるだろうが、他の連中には業務的な内容だろう。


「他に質問は?」


「この船のエネルギー源」


「俺達と同じ食べ物」


「やっぱり変な船……」


 ルディは俺達と変わらない食事をするからな。

 しかもエネルギー効率が馬鹿みたいにいい。

 10人前のカレーみたいなの食わせれば三日くらい平然と動き回る。

 ルディさんや、ご飯は一昨日食べたでしょうとなるのだが、まぁ面倒なので毎回食堂で飯を食う時一緒に用意して専用のダストシュートに放り込んでいる。


 これでも一般的な船よりよっぽど維持費安いんだよな……。

 エンジン動かすための燃料費だけでギリギリって連中もいると思えば十分だ。

 それに生き物だから頑張れば食料切れ起こしたとしても適当なコロニーまでワープして、ドッキングして位は可能だろう。

 そうならないように気を付けているが補給が難しい場合もあるからな。

 必要な時は小惑星とかから氷を採取しているし。

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― 新着の感想 ―
>ルディは俺達と変わらない食事をするからな。 >しかもエネルギー効率が馬鹿みたいにいい。 暴食さん「絶対に相容れないわね。 ………いえ、ちょっとあげれば後は私の分になるから、邪魔にはならない……?」
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