久しぶりに秋葉行った
「それで、あたしの部屋は?」
「んー、好きな部屋使っていいぞ。エンジンルームだけはやめとけと言っておくけど」
もともと入れないようにしているが、あそこは春夏秋冬関係なく暑いから。
ルディの方は生暖かい感じで、ホワイトロマノフは暑い通り越して熱い。
ついでに反物質使ってるからちょっとトラブルがあると死ぬ。
「じゃあ武器庫は?」
「構わんがベッドがない」
「いいのかよ……」
「ぶっちゃけ観賞用以上のものは無いに等しいからな。銃火器使うより殴るか蹴る方が早い」
「……蛮族」
「そうだよ、傭兵なんて基本蛮族だよ」
敵からすれば合法でお行儀のいい海賊と変わらないからな。
撃沈しただけじゃなく戦利品も持っていく。
奪えるものは全部奪うし、相手が合法的にぶん殴れる宇宙海賊なら一切の遠慮はいらない。
一般の船には手を出さないし、軍と揉め事を起こす事も無いが仕事の邪魔をするならなぎ倒すというのがセオリーだ。
まぁこれはあくまでもお行儀のいい傭兵の場合だけどな。
酷い奴らは一般の船を見殺しにしてから宇宙海賊を蹴散らして双方の貨物を奪い、泣きながら遺族へ「これしか取り返せなかった」とそれっぽい物を差し出して終わり。
もっとあくどい連中は宇宙海賊がわかりやすいように救難信号出したりするが、そういうのはある程度検知されるようになっていて誤射しても許されるという法律ができてる。
救難信号ってそれくらい重要な代物だからね、悪用しようとか考えた瞬間ぶっ殺していいという扱いになるわけだ。
あとは単純にバーサーカーというか馬鹿というか、相手を考えずに喧嘩を売るタイプ。
軍服の人間に殴りかかるやつは流石に少数だが、非番の軍人に絡みに行くような連中だっている。
だから傭兵は嫌われやすいんだが、逆に言えばお行儀よくしてれば仕事は勝手に入って来るもんだ。
「とりあえず今仕える部屋マップに表示して送ったから確認してくれ」
「……このコックピットに近い部屋にする」
タブレットから情報を送ると、クライアントは空中を見ながら返事を返してきた。
なるほど、これが強化インプラント……確かにあれば便利程度の機能は持っているみたいだが、それ以上でもそれ以下でもないな。
俺が今やってるみたいにタブレット操作で十分だし、メリナなんかは「キーボードの方が早いです」とかいいそう。
「シャワーとかトイレはここな」
マップを共有しながらどこに何があるかを教えるが、向こうは澄ました顔をしている。
俺としてはあの程度の運転で吐く奴はトイレの場所しっかり覚えておいてほしいんだがなぁ。
「で、送り先はβ星系のコーネリウス第三衛星軌道上コロニーでよかったか」
「あぁ、別名ブルーラット。私らみたいな技術者の集まりだ」
「ほう?」
技術者の集まりというのは興味深い。
実の所アンドロイドのマリアを預けたままにしてあるわけだが、その強化オプションの一つでも見つかれば面白そうだ。
「まぁ技術者といっても質より量というべき連中の集まりだけどな。質を求めるならみんなヘパイストスに来るから量でも劣っているけど」
……ダメじゃん、と喉元まで出かけたけど言葉を飲み込む。
そしてすぐに理解した。
多分アングラな技術者連中ってことだ。
まともな研究者や技術者はヘパイストスに行くが、その中でもネジが一本吹っ飛んでる奴がその鼠の巣穴に立ち寄ったりするわけだ。
なんて言えばいいのか……PCの専門家が秋葉原の裏路地に行くような物とでもいうべきか?
自前のルートを使って高性能品を作る事と、アングラな店でなんの意味があるのかわからないガジェットを購入して面白半分に組み立てる違いとでもいうべきか。
そういう意味だとゲーマーも似たような所あるな。
自分好みの設定で見た目も好みにしたパターンと、ネタキャラとして用意したパターンって結構多いし。
結果的にシステム内でできる事はたかが知れているが、それでもゲームによっては差異が出てくる。
カードゲームなんかその代表だな。
ファンデッキといわれる「強くないけど主人公が使ってたカードを生かすデッキ」と、環境と呼ばれる「今の環境では最強の性能を誇るデッキ」の二つを持ち歩くパターン。
ちなみに俺はファンデッキ一択だった。
「意外と掘り出し物があるかもな」
「その考えに行きつく時点であたしらに似てるよ」
うれしくねぇ……。
アース・スターノベル10周年イベントで秋葉原行ってきました。
あと新作でローファンタジー一本登校しました。
最新話には私が経験した怖い話のおまけつき。