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尋問だこれ!

「それでは質問です、貴方は宇宙海賊の仲間、あるいは関係者ではありませんね」


「仲間じゃないし関係者でもないよ。どっちかというと狩人と獲物、機械に乗った害獣とハンターの関係で私がハンター側。油断すれば返り討ちに合うという意味でも同じ」


 のんびりはできなかったよ……居住区に着くまでに質問しますねって言われてこのざまです。


「では、未開惑星出身のためナノマシンが導入されていないのは事実ですね」


「事実だよ。技術力という意味ではだいぶ遅れてたんじゃねえかな」


「ではあの船、そしてあなたが先程話したエースパイロットの船ですが随分性能がいいと思われます。なぜですか」


「知らない。携行可能なビーム兵器とか家電とかの仕組みや出自を知らないように私も知らん」


「……ここまで嘘は無いようですね。では道中撃破した宇宙海賊に対して何か感じる事は?」


「今更だが人殺ししたなぁという実感がわいてきた。童貞卒業といったが人間をぶち殺すってのは……あー、初めてってわけじゃないんだが殺意を持ってというのは初めてだからな」


 実のところ試合でかなりやばい当て方してしまい相手がノックアウト、緊急搬送されたがそのまま帰らぬ人になったという事があった。

 破竹の勢いでスターダムを駆け上がる、なんて言われていたがそれが原因でスポンサーが軒並み降りて貯金を切り崩す生活になっていたのだ。


「なるほど。では危険な兵器の設計図を持っているという事実、そしてそれはあなたの肉体情報で厳重にロックされており開示する気はないというのは事実ですか」


「イエス、あんなもん外に出したら常識がひっくり返る。普通にコロニー内部に戦艦のビームお届けなんてこともできるだろうしな」


「……それは嘘であってほしかったですが、今後それを使うつもりはありますか?」


「いざとなったら作るし使う事も視野に入れている。ただホワイトロマノフとは相性が良くないからアセンブルを最初から見直す必要があるし作るまで時間もかかるだろう。当然依頼するなら軍関係の企業にするつもりだがな」


 ゲーム時代でもコロニー襲撃自体はできた。

 その際にこの手のユニーク装備は作るのが面倒くさいだけで、一度生産してしまえばほぼ負けなしだったのだが動画映えしないから封印して笑いを誘ったのである。

 今は必要とあれば使うかもしれんけど、ユニーク装備なんてのは大抵作るために無茶苦茶資金と資材を求められるので序盤で設計図手に入れても使えるのは終盤とかになる。

 あと対単体戦用か対集団戦用で区分がされているが、俺が持っている設計図は前者だ。

 集団戦用のはもう船に実装している。

 作る際に設計図を消費する設定だったから文字通りユニーク、単一の武器だったわけだ。


「他にその手の武器は持っていますか?」


「ある。それを使えばさっきのシミュレーターでやった結晶体相手の殲滅戦は速攻で終わっただろうけど被害が大きすぎるから使うつもりは無いし船にもロックをかけてある」


「どのような兵器ですか」


「一発ぶっぱなせば恒星系一個吹き飛ばすような代物でな、反応弾に使われてる反物質を粒子単位で散布する。触れた瞬間に対消滅を起こすが、普段はこれをエネルギー源として船を動かしている」


 正しく言うならユニーク武器ではなくユニークパーツであり、エンジンとして破格の性能を持っているのだが特殊な攻撃方法として転用ができるというものだ。

 ちなみにそんな物体なので自爆したら太陽系どころか銀河系が吹っ飛ぶ。

 ユニークパーツエンジン種、その名をラスプーチン。

 不死身だのなんだのと言われた有名人の名を冠したそれは非常に攻撃的で、同時に持ち主が死ぬようなことはほぼあり得ない。

 そんな物体だが、生産コストが洒落にならない。

 ユニーク系の中でも頭一つ抜けて値が張るのだ。


「そんな危険な装備を個人が持つことが許されると思っていますか?」


「思ってない。だが名実ともに私の船の心臓だ。機能の一部を制限しようにもそんなことしたらオーバーヒートでこの銀河が吹っ飛ぶ……いや、空白地帯になるな」


「では同等の性能を持つ船を用意することでこちらに譲渡していただくという方針は」


「ありえないな。あんたらが私を信用していないのと同じで、私もあんたらを信用できない。気が付いたらアレに巻き込まれて死んでましたなんてのはごめん被る」


 実際ラスプーチンを手に入れるためのミッションは初見殺しもいいところ、慣れたパイロットでも失敗確率は80%を超えている。

 不可視の粒子を避けながらその発生源に接触、破壊工作の後また粒子を避けながら他の銀河系へ逃げるという内容だった。

 何が恐ろしいかってワープすると粒子も一緒に巻き込んでとんでくるので油断した瞬間消滅することになるのである。

 設定的には廃棄された謎の建造物周辺で船が消えるという現象を調べてこいってミッションだったが、それをクリアするとそこそこのお金がもらえる。

 そう、クリアだけじゃ設計図は手に入らず限られた時間内で設計図を探さなければいけないのだ。

 配信を持ち掛けられた際に、テストプレイをしてこのエンジンの存在を知ったことでプレイヤーネームも、船の名前もロマノフ王朝で固めたのである。


「説得の余地はなさそうですね」


「あぁ、ついでに言うなら無理やりどうこうって言うならこっちも暴れるぞ? さっきの模擬戦みたいな手抜きはしない」


「あら、本気で殺そうとしてませんでした?」


「死ねとは思ったが加減はしていた、本気で同じことをやれば確実に殺せる」


 たしかにこの人は強い。

 もっと強いお目付け役もついてくるだろう。

 だとしても、その気になればやってやれないことはない。


「なるほど……いいでしょう。あの船に関する全てを機密とすることで今後も運用を許可します」


「許可されるまでもなく私のものだっての」


「随分喧嘩腰ですね……私何かしました?」


「いや、性分。上から目線で命令されるようなの苦手でな……それで以前上司ぶん殴りかけたことがあってフリーになった」


 武闘家、格闘家、どちらにせよ一般人に手を出すことはできない。

 ちょっとコンビニでアルバイトしてた時、店長のパワハラセクハラが酷くてぶん殴りかけたんだが自制してレジ台ぶっ壊して親会社通して双方お咎めなしの代わりに双方賠償も無しという形で落ち着いたのである。

 以後コーチに紹介された安全なバイトしかしていない。


「デンジャラスですねぇ……傭兵の仕事には護衛もあるってわかってますか?」


「選り好みはできるだろ。単騎突撃なら任せろ」


「自殺なら銀河を巻き込まないでくださいねー」


 くっ、メリナがどんどん塩対応になっていく。

 いやまぁ俺の態度が悪いのは重々承知してるけど一度ラーニングしたらなかなか抜けないんよ。

 戦闘一発くらいで終わらないように慣らしちゃってたからなぁ……試合によってはラウンドとかあるから最低でも数日はこのままの態度になってしまう。


「質問、続けてもらっていいか?」


「あ、そうでしたね。じゃあ何か悪事を働く予定とかありますか?」


「ないわ! いやド直球で聞いてくるなおい」


「そういう仕事ですし、迂遠な言い回しで適当にはぐらかされても困るので」


「それはそうかもしれんが、もうちょいなんとかならんのか? 警察に取り調べされてるみたいでなんかちょっと微妙な気分になるぞ?」


「実際似たようなものですから。はい、じゃあ次はスリーサイズを教えてください」


「知らん、最後に測ってからだいぶ変わってるからな」


 嘘はついてないよ嘘は、実際男の身体の時はしょっちゅう測ってたから覚えてるがこのボディのスリーサイズなんか知らんし滅茶苦茶変わってる。

 ちょっと歩くだけでもバランス崩しそうになるんだよ、このたわわのせいで!


「……ちょっと失礼しますね?」


「は? ひゃっ、ちょっ、どこさわって!」


「むむむ……なんで下着付けてないんですか?」


「知らんよ! クローゼットにもなかったし着替える暇もなかったんだから仕方ないだろ!」


 めっちゃおっぱい揉まれてるがなんだこれ、こしょばゆい!

 ぞわぞわする!


「まずは下着の手配からですね……もしかして下も?」


「そっちは履いてる! だからズボンを下ろそうとするな!」


「チッ……まぁいいでしょう」


 舌打ちしやがったぞこいつ!

 くっそ、やり返してやりたいが女性相手にそういう事をするのは男としてのあれこれが邪魔をしてくる!


「あとスリーサイズは上から88、59、83ですね。ナイスバディ」


「なんでわかるんだよ!」


「コロニー港のセンサーは優秀ですから、人体スキャンしてそのデータからスリーサイズや体重を見破るのは簡単ですよ」


「プライバシーはどうした! つーか触る意味!」


「たまにいるんですよ、おっぱい偽装して爆弾持ち込む輩とか、妊婦さん偽って違法薬物運ぶ密輸業者とか。触ったのは趣味もありますが危険物隠していないかの確認ですねぇ」


「……理解したが納得いかない」


 今も昔も、地球も異星もやることは変わらないわけだ。

 そのチェックが入念でスリーサイズまでばっちりスキャンされるという事を除けばだがな。

 そういや昔乗り合わせた飛行機がハイジャックされて一緒にいたジャーナリストと政府のお偉いさんの二人が鎮圧してたな。

 俺も手伝ったがありゃ別格に強くて、途方もなくいい女だった。


「では最後の質問ですが……本気で軍とか役所に来る気ありませんか? ある程度の独断行動は許可しますし地位も与えます。賃金も通常の3倍だしますよ。それから船は今の物を使っていただいて構いませんし、その修理や補給なんかも軍が全額持ちます」


「嫌だ。どうしてこんな怪しい根無し草を欲しがるんだよ」


「それはほら、船に爆弾仕掛けておけばいつでも処理できるし割と感情的になりやすい所もあるので御しやすく使い捨てにしても惜しくなく、そしてうまくいけば勝手に戦果上げて上司の私の評価も上げてくれるような人物見つけたらねぇ」


「シミュレーターのあれが適当なハッキングの結果だったらどうするんだよ。あとマジで犯罪組織とかとの関係者や敵国家の回しもんだったら」


「そうなんですか?」


「違うけどさ」


「はい、嘘じゃないので問題ありません。というかそもそもアレをハッキングできるような腕前なら別方面で欲しいですね。星系連合に対する反逆の意思もないみたいですしね」


「無いというか右も左もわからないというべきだろ。インプリンティングみたいなもんでとりあえず守ってもらえそうと擦り込まれてるだけだ」


「そうですか。まぁ困った時はいつでも言ってくださいね? しばらく指揮下に入るというだけでも歓迎しますので」


「そうかい、そうなったらよろしく頼むよ」


 ……あれ? 最後の質問とか言ってたけどサラッとうちに敵意無いだろうなお前って聞かれたな。

 誘導尋問に引っかかった事になるが敵意を持つ理由が無いからいいけどさ。

 やっぱこの姉ちゃん抜け目ねえな。

 今後言質取られないように……いや取られてるわ、いざとなったらよろしくって言っちまったわちくしょう!


PセルフのフォトンをトレミーⅡとかに積んだ感じです。

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― 新着の感想 ―
[一言] セレナ・ホールズ侯爵令嬢と同じようなことを言ってる(笑)
[一言] >そういや昔乗り合わせた飛行機がハイジャックされて一緒にいたジャーナリストと政府のお偉いさんの二人が鎮圧してたな。 >俺も手伝ったがありゃ別格に強くて、途方もなくいい女だった。 暴食さん「…
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