SFってエロ方面も強いよね
「こっちは一段落したよー。けどやっぱり治療はむりー」
ノイマンからの通信で船体の、まぁ主に外殻だな。
装甲と外付けのシールド発生システムの修理が完了したという旨の報告が入った。
アロアニマの脳みそも元来シールド発生システムに似た物を持っているが、これは肥大化した脳が周囲の磁場に影響を与えて弾道を逸らすとかそう言う類だったはずだ。
だから直撃コースの弾丸が少し逸れる程度でしかなく、宇宙での戦闘で使うような亜光速クラスの物はクリティカルは避けられるがどっかに当たる可能性が高い。
逸らしきれないのだ。
結果的にシールド発生システムだけは追加でつけられることが多かったんだが、たまーにそれすら断るような機体もいた。
エルザがそうでなかったのは救いっちゃ救いだが……。
「随分低品質なシステムだな」
「僕達は船そのものではなく彼女たちの事を調べさせてもらっていますからね。余計な予算は使いたくないですし、旧式を流用してもらう事が多いんです。なにより戦闘になる可能性が低いのでこれで十分だったんですよ」
なるほど、言わんとすることはわかる。
それに聞く限りじゃエルザの祖先だかの母体、俺達の間じゃ名前すらなかったしプレイヤーが持てるという情報すらなかった物だが、アロアニマの最終形態とも言われている惑星クラスまで成長した個体に近づくにしてもシールドは意味を成さないだろう。
なにせ局所的なブラックホールだの超高温だののエレクトリカルなパレードだ。
「メリナ、うちの倉庫に予備パーツがあっただろ。あれを搬出してくれ。そいつをやるから取り付けを許可しろよ?」
眼前のアルマ、そしてエルザに問いかける。
「そこまでお支払いできませんよ?」
「こっちとしても信用はしてほしいし、なんなら信頼だってほしい。それにクライアントが旧式シールドだったせいで全部おじゃんになって俺の経歴に傷がつきましたってのも避けたい」
最悪ヘパイストスから抗議が来て俺がお尋ね者になる可能性だってあるからな。
「なるほど、僕は構いませんよ。貰えるものは病気と不幸以外なんでも貰うので」
「私も構わないけど……不細工な装飾品は嫌いよ?」
気に入らなかった場合一時的に身に着けるのはいいけど、今後使うかどうかは別という事か?
「今データをそっちにおく」
「なにこれすっごい可愛い!」
キーンと耳鳴りがするほどの大音量で通信が入ってきた。
途中でメリナがボリュームを落としてくれたからか、最後の方は聞き取ることができたが……気に入ったみたいで何より。
「この流線形の形すごくいい! 今までのごつごつしてたから原石アクセサリーみたいに思ってたけど、これすごくかわいい!」
「き、気に入ったなら何より……」
「……エルザがここまで喜ぶの、初めて見ました」
「だってあんた達乙女心わかってないし、持ってくるパーツはどれも不細工なんだもん! もっとこういうのあるなら教えてよ!」
「……メリナ」
「先方の使っているシステムから現代までの諸々のカタログを送信しますね」
一言で理解してくれる相棒……流石としか言いようがないな。
一番付き合いが長いのもあるが、戦場で命をかけた戦いで背中を任せられる相手だ。
それに夜も共にしているからこそ阿吽の呼吸が生まれているのかもしれない。
言葉にならない状態とか、言葉で指示を出している暇がない状況でもこちらの意図を察して行動するって言うのは普通の関係性じゃ難しいからな。
「気に入ったなら取り付けるぞ。それと旧式の物は外すがいいか?」
「そうね、後で返してくれるならいいわよ? ……あっ、この砲塔すっごくセクシー!」
想い出の品みたいな感じなのかもしれんが……セクシーな砲塔ってなんだよ。
アームストロングサイクロンジェットアームストロング砲か?
「……どうしましょう。今後この手の装備とかも用意してあげた方がいいんでしょうか」
「御機嫌取りにはいいかもしれんが、不穏分子が最新装備のアロアニマとか言う最悪な状況が生まれるかもしれんってのだけは理解しておけよ」
俺の言葉にアルマがブツブツと何かを呟きながら考え始める。
何を考えているのかはわかるが……多分この程度の事でも機密情報になるのかもしれんな。
「あとうちにある装備の一覧だが気に入ったものがあれば……物によってはプレゼントしてもいいぞ?」
さすがに渡せない物もあるからな。
ワープ狙撃砲とかいうとんでも兵器なんかこいつらに持たせたら何やらかすかわからん。
ゲーム内じゃシステム上超高度な演算ができればコックピット内部を直に焼き払えるような代物だったが、実装されてて発見されたCPUの中でもユニークで最高クラスの物を使ったとしてもそこまでの精度は出せなかった。
とある変態が自力で演算してピンポイント攻撃とかしてたけどさ。
そいつの場合はほとんど固定砲台だったからランカーにはなれず、複数の相手からの狙撃に弱かったし近距離戦は壊滅的だったから。
「あ、このブレード! これちょうだい!」
「お、いい所に目を付けたな。エルザの装備してるブレードは二世代前くらいの物なんだが、こいつは最新鋭だぞ。性能は全面的に向上して、見た目もシャープに変化した事で軽量化、護身用程度に持っておくような輸送船もあるくらいだ」
「やっぱり人気なのよね! 見た目もさることながらこの形状、エネルギーの効率的な分配システム、職人のこだわりが見られる逸品よ!」
「そういう系統だとこういうのもあるぞ。近中距離用の換装式砲台で実弾、ビーム、小型ミサイルを打ち分ける事ができる」
リボルバーの弾倉みたいに砲塔と弾丸を入れ替えることができる装備だ。
重量があるのと、複雑な機構だから整備が面倒というのを除けばかなり優秀な兵器だ。
これはゲーム内の物ではなく、ベルセルクで試作された品である。
「うーん、すこしローリーな感じで趣味じゃないわねぇ。それよりこの砲は貰えるかしら」
眼前に出てきたホログラムに写っているのは手持ちの中では三番目くらいに凶悪な物だった。
一番がワープ狙撃砲、次がホワイトロマノフの主砲、そしてそれに続く三番目であり僅差でという物体なのだが……。
「使えるのか? これめっちゃエネルギー使うぞ」
「うーん、補給さえできればよねぇ」
「そのエネルギーは生命体からしか接種できないって話じゃなかったっけか」
「あ、それは誤解よ? 基本的に私達は生物と同じように有機物からも栄養を摂取できるし、あなた達が言うところの船のようにエネルギーの譲渡を受ける事もできるの」
「マジか」
「ちなみにエネルギーが充填されれば私の本体も一気に回復するわ。そうなればしばらくは光合成とかダークマターからエネルギー摂取して問題なく動けるようになるし、その武器も使えるわよ」
……サラッととんでもない事言いやがった。
アルマが固まっているくらいだ、俺はもちろん専門家も知らなかった事なのだろう。
「おいアルマ、ショックを受けてるところ悪いが俺達は作戦を詰める。エルザは補給口を開いてこちらからの充填を受けろ、メリナは補給と向こうの要請があった装備の搬出。ノイマンは装備の取り付けだ。先方の物は丁重に船に運び込め」
「「あいあいさー」」
メリナとノイマンが同時に返答。
続けてホログラムに映し出されていたエルザの外観が少し変化し、ぐわっと動いたかと思ったら装甲の一部が大口を開けるようにして動いた。
内部機構である本体……つまりは肉の一部が見えるのが少しグロイ。
「乙女の素肌、普段なら絶対見せないけどあなた達なら少しくらい許してあげるわ」
「そりゃどうも。で、目の前でショックで固まってるクライアント様はどうすればいい?」
「放置でいいんじゃない? その子新しい情報とか掴むとしばらく硬直して考え事始めちゃうから。作戦なら私と詰めればいいでしょ」
「そうもいかん。アロアニマはまだ人権が認められていないから人間と交渉したって言う証拠が必要になるんんだ。その辺差別思想を持っているわけじゃないが世の中こういう決まり事って言うのは重要だからな」
「面倒なのね。じゃあちょっと強制的に起こすわ……きゃんっ!」
「どした?」
「あなたの船から凄い量のエネルギーが……ひんっ! これ、っすっごぉ……癖になっちゃいそう」
「そ、そうか」
「んひぃっ!」
エルザが喜んでいたのとは別にアルマが艶っぽい悲鳴を上げた。
「え、あ、ちょっ、エルザ! あれは無しって!」
「だってずっと放心してたみたいなんだもん。さっきの話は後で詳しくしてあげるから今はその人間と交渉と作戦の詰めをしなさいな」
「うぅ……恥ずかしい声出ちゃった……」
顔を真っ赤にしているアルマ。
やっぱり触手服じゃねえか、それもがちがちのエロ方面もできるやつ。
マジで変態か……?