のんびりできると思おうなよ?
「むりぃ……」
「いや、敵の3割撃墜して発生源の大型種も全滅させてなにを言ってるんですか?」
あいつらそんな強くは無いんだよ、厄介でもない、近づいて反応弾ぶつければ大型種は大抵死ぬし増殖能力も失う。小型種は小回りが利かないからバランサーとジャイロきって急旋回すれば勝手に事故起こすし、中型種はブレードで対処すれば問題ない。
ただしあくまでも対処法であって攻略法ではない。
「さすがに数の暴力には勝てなかったよ……」
「その数の暴力をここまで減らすのは偉業通り越して異常かと……」
「訓練すればだれでもこのくらいはできるぞ……その間に血反吐吐くことになるが」
G負荷とかも再現されるため何度か吐きかけた。
オートバランサーとジャイロなんかはゲームでも使ってなかったから問題なく動かせたが、最初の頃は画面酔いしたな。
これにGがかかるとなると文字通りの意味で血反吐を吐くことになるだろう。
「確認なんですが、あなたエースパイロットとかそういう部類ですよね。そうだと言ってください」
「上澄みで二つ名持ちではあるが替えの利く傭兵だったぞ。俺より上の人間は覚えてる限りで4桁はいる」
「……未開惑星って恐ろしい所なんですね」
「そんなエースパイロットを外宇宙の探索に送り出すわけないだろ常識的に考えて。使い捨ててもいい相手を選んで依頼してくるんだよ。今回は帰還できるかどうか、帰還できたとして母星でどれくらい時間が経ってるかわからんから前払いで色々仕入れたがな」
「その、色々とは?」
「コールドスリープポッド、これは船のB17地区に置いてあるから調べてくれ。それから医療用ポッド、B18地区。あとは電子生命体積んだロボットとか、それなりに高額なパワーアーマー。あと武器弾薬に……あぁ、暇つぶしに育てられるようにプランターと種も用意したな。あれもコールドスリープさせてあるから問題なく使えるが違法か?」
「えぇ、動植物のコロニーへの持ち込みは基本禁止となっています。どのような病原菌や微生物があるか、コロニーにどのような影響を与えるのかわからないので」
「そうか、じゃあ処分するなり研究するなり好きに使ってくれ。お代は頂くが」
「わかりました。手配しておきます」
ゲーム時代の話ではあるがアクアリウムとか船内に設置できたんだよ。
金はかかるし、場所をとるから使ってる人はあまりいなかったけどな。
俺みたいにクルーをロボットで固めてれば問題ないんだが、知的有機生命体をクルーにしているとストレスゲージみたいなのがあってそれが限界突破すると暴動に発展することがある。
多くの場合札束ビンタで何とか出来たし、最悪の場合は銃弾で解決していたがそれを防ぐのがアクアリウムなどの調度品だった。
要するに安定剤の一種ではあるんだがな。
他にもドラッグなどでいう事を聞かせることもできたが、それはそれで罰金や逮捕、クルー没収や薬切れで暴れだすなどの問題もあってあまり使われることは無かった。
皆無ではないのがゲームならではというべきかもしれんが、これが現実であるなら気を付けた方がいいかもしれんな。
「あぁ、それと確認だが俺はこの後どうしたらいい? 一応テストも終わって、教育プログラムを受けるようになるのは分かってる。その上で何かするべきこととかあるか?」
「そうですね、生体認証システムなどで防護されている部分の解除くらいはお願いするかもしれませんが理由如何ではその辺の免除も可能です」
「そうか、なら一個厳重に封印してある物体があるがそいつの解除だけは拒否させてもらう。理由は単純、弾そのものをワープさせて狙撃できるような危険な兵器の設計図だからだ。他人に渡すのは危険すぎる」
「それが事実かどうか、その辺りの確認をさせていただきますがよろしいですね」
「こっちの記憶を読むとかそういうのじゃなけりゃ構わんよ」
「嘘発見器みたいなものです。イエスノー以外にも判断できるんですよ」
「そりゃ便利」
「当然ながら判別方法は機密事項ですけどね」
でしょうねぇ、、そんな代物。
抜け道があるとわかったらそりゃみんな嘘つくから。
地球にあった嘘発見器なんかは痛みで誤魔化せるなんて話もあったっけ。
「で、話は少し戻るがその手の危険兵器の設計図とかの引き渡しは拒否してもいいんだよな」
「構いませんが、同時にこちらからも封印措置をさせていただきます。具体的には今行われている施錠の上から我々星系軍が別の施錠を施す形ですね」
「二重ロックで誰も使えないようにするわけだ。しかしここに入ってるのはどうする?」
側頭部をつついてみればメリナはにっこりと笑みを浮かべた。
「さすがにそこまでは制限しませんが、それが敵に鹵獲されたり情報漏洩した場合は相応の措置を講じます」
あ、はい。
多分あれだな、物理的データ的様々な方法で頭の中見てから宇宙遊泳だ。
「それでは、そろそろ居住区へご案内しましょうか」
「あぁ、流石に少し疲れたんでな。頼むわ」
身体はともかく精神的にだいぶ疲れたわ……しばらくのんびりしたいもんだな。