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やべー奴ら

「名前を聞かせてもらえるか、もう一人のクライアント殿? あぁ、船体識別コードとか通称ではなくあんたの名前だ」


 アロアニマは生物だ。

 故に個体識別番号とかそういうのとは別に名前を持っている場合が多い。

 それも「親」から貰った名前である。

 EFで言うところのマザー、つまりはノイマンみたいな総支配者的なポジの奴だな。


「あら、詳しいのね。じゃあ改めて私の名前はエルザ。これでも結構な古参よ」


「俺はアナスタシア、今回の依頼を受けて来た。外でドローン動かしてるのはEFのノイマン、コックピットにいるのはメリナだ。できれば穏便に話し合いがしたいがどうだ?」


「最初に喧嘩腰だったのに随分な事言うのね」


「依頼内容が骨拾いだ、誰が相手でも同じ対応だった。こうして話ができるならこちらとしてはそれで済ませたからな」


 何より人質がいるといってもいい状況だ。

 俺の船にアルマがいるなら向こうも迂闊な事はしてこない……と願いたい。

 あいつらの死生観、人間とは別物だからな。

 例えるなら生き物=壊れやすい玩具程度でしかない。

 ついでに死んだとしても脳みそ抽出して持ち帰って分析して、そんで何かしらの方法で培養して巨大化させて新しいアロアニマにするなんて設定があったはずだ。

 こいつらは基本的に宇宙船の姿をしているが、外見はランダムに数万パターンでパーツを張り付けている。

 中には地上を移動できるようなキャタピラがついた奴なんかもいて、戦車として活動できるという利点持ちもいた。

 まぁこいつ……エルザはその辺全部捨てているんだが、着陸用の脚やらがない事からもしかしたら反重力システムで常に浮遊しているのかもしれない。

 その場合も戦車としての運用が可能だから怖いな……。


「なるほどねぇ。まぁいいわ。ただし今回の依頼の詳細を詰めさせてもらうわ」


「あんただけじゃなくアルマも納得いくような内容で、俺達もそれに見合った報酬が貰えるなら問題ない。あとできれば短期間で終わると嬉しいな」


 昇級用クエストあと二つ残ってるからな、手っ取り早く終わらせたい。


「それなら問題ないわ。こちらが要求するのはまず修理と補給ね」


「今やっていることだな」


 外でノイマンが必死こいて修理している。

 といってもアロアニマって生物だから一般的な修理ってあんまり意味ないんだよな。

 栄養とかそういうのを与えるべきで、今やってもらってるのは外装と武器の修理って感じだ。

 それでも一軒家サイズだから……まぁ宇宙船としては小柄な方だが、そんなもんについてる砲塔とかの修理ってなると結構な手間なんだが。


「それと私達を狙っている連中の排除」


「高いぞ?」


「いいわ、言い値で支払うから」


 ちらりとアルマを見るとお茶を飲んでホッとしていた所だった。

 こんこんとテーブルを叩くとびっくりしてこちらに視線を戻してきたが……この緊張感の無さでよく生き残れたなこいつ。


「エルザが敵排除を要求してきて言い値を出すと言ってるが、追加依頼って扱いでいいか?」


「えと、はい」


 迷わないのか……けどさっきまでの抜けた感じじゃない。

 ちゃんと自分の意志で了承している。

 流されてるだけじゃないってことだ。


「相手は誰だ。あぁ、今のはアルマへの質問だ」


「えーと敵って言うのは僕たちを追いかけている人達の事ですよね。だったら兄さん達ですね」


「身内争いか……ヘパイストスの情勢に巻き込まれるのは避けたいんだがな」


「あ、よくある事なのでベルセルクへの抗議とかは無いはずです。あったとしても僕たちが勝てば握り潰せます」


「それは勝てたらだろ? 大丈夫なのか?」


「はい、とある宙域まで護衛していただければですが必勝の策があります」


 そこまで言うなら……いや、疑いがないわけじゃないんだが、納得させるだけの力強さを感じた。

 かなりヤバい隠し玉があるんだろうなこれ。

 アロアニマ持ってて、正式にパイロットとしても認識されている様子で、なおかつ本人から直々に守れと言われる程度には信頼関係も築けている。

 そんな相手の言葉なら多少の疑いはあれど納得はしてやれる。

 ただ……。


「条件として俺達の無事は保証しろよ? あぁ、戦闘ではなくその隠し玉を使う際のだ」


 ちょうドデカい反応弾とかで纏めてどっかーんなんてのは嫌だからな?

 超重力砲とか、衛星砲とか、とにかく大量殺戮兵器系でドーンと来るようなのは避けてほしい。


「それは大丈夫です。隠し玉と言いますか、後継者が就任するための物ですから。そこにさえ辿り着いてしまえば確実に勝てます」


「……随分な自信があるみたいだが、就任のために必要なのは書類とかじゃないのか?」


「私達が紙切れや電子の文字列だけで身体を調べるのを許可するわけないじゃない。人間如きと違うのよ?」


 ……うん、まぁそうよね。

 こいつらプライド高いからこそゲーム内じゃ改造不可能レベルの存在だったわけだし、SFゲームなのに宇宙船との好感度とかもあったんだから。


「じゃあその宙域と経路の話をしようか」


「目的地はここから30万光年ほど離れたところですね。近くまではワープ航行で行けるのですが、数光年ほど自力で移動する必要があります。そしてその際に待ち伏せを受ける可能性も」


「そしてその数光年の範囲内を普通の船が移動するのはほぼ不可能と思ってちょうだい。磁気嵐や異常重力、局地的に恒星にも匹敵する熱力場や、逆に絶対零度になっているような空間に異常がある場所だから」


「そいつはまともじゃないな」


 まぁ熱力場というなら放射的ではなく内側に向かってひたすら熱を貯め込んでいるんだろう。

 その手のポイントはサーマルセンサーで掻い潜れるが、それを邪魔する磁気嵐と普通のセンサーが役に立たなくなる異常重力。

 普通の船じゃ足を踏み入れた瞬間死ぬのは間違いないな。

 運よく隠し玉に辿り着いても何らかの認証が必要なんだろう。

 ……ぶっちゃけここまで聞いて、何を隠しているのかは大体わかったけどさ。


「で、その目的地はあんたらの親玉か? それとも成長した子機か?」


「子機の方よ。と言っても相当古い世代だし私からしたらご先祖様みたいな存在だけど……本当に詳しいわね」


「父が長年かけた研究結果のほとんどを言い当ててますね」


 チャッという、小さな音と共に銃口がこちらを向いていた。

 いつ、どこから、どうやって持ち込んだとか聞くのは無粋というか意味がない。

 その銃口は宇宙服から触手のように伸びていたからだ。


「おいおい、まさか宇宙服までアロアニマか?」


「本当によくご存じで……貴女の事を教えていただけますね? 少なくとも信頼関係を築くというならその程度はしていただきます」


「メリナ」


「もう送りましたよ」


 テーブルのホロディスプレイを起動させて俺の経歴を映す。

 未開惑星出身で、ナノマシンを保有していなかった。

 そしてホワイトロマノフの性能を見せればその信憑性はかなりの物となる。

 一般に流通してないし、宇宙海賊……たとえレッドカラーズやベルセルクを含め他星系国家の共同作業ですら作れないだろう機体って評価を受けているからな


「俺のいた惑星はアロアニマとの戦闘が結構な頻度であったからな。多少研究も進んでいるんだ。逆にだだっ広い宇宙で偶然遭遇したあんたらよりも、本星を襲撃されていた分研究も進んでいたんだよ。必要なら俺の持っているアロアニマに関するデータも全部やるが……いくら出す?」


「そうですね、貴方の命を助ける対価というのはどうですか?」


「はははっ、嘘だけじゃなく脅しも下手だなぁ。俺が死んだらデータが消えるようにしてある可能性もあるし、お前らは逃げきれないから依頼を出してきたんだろ?」


「……バレましたか。失礼をお詫びします。とりあえずそうですね……うちで出せる限度ギリギリとなるとこのくらいです。あ、依頼含めてですけど」


 言い値って言ったら上限額書かれた小切手出してきやがった……差し出された端末には億単位の金額が記されている。


「ちなみに前金だとこのくらい」


 桁が一つ減ったがそれでもとんでもない額だ。


「こんなにはいらない。ただそうだな、前金の代わりに教えてくれよ」


「何をですか?」


「男のふりしてる理由。ヘパイストスは研究内容重視なら男女関係ないだろ?」


「趣味です」


 ……言い切りやがったぁ。

 いや、最初に見た時から歩き方とかで女だとわかっていたんだけどさ。

 ずっと僕って言い張ってるし座る時の仕草とかも男っぽく見えるようにしていた。

 こう、男装コスプレイヤーさんがポージングに気を付けているような感じだったんだがなぁ……。


「ってことは何か? その触手服も趣味か?」


「これは研究の一環でもあるので……でも趣味も含んでますね、はい」


「変態だー!」


 今日一番の叫びが出た。

 それと触手服ことアロアニマスーツからも直撃しないように計算された無数の弾丸が出てきた。

 やべーな、あのエロスーツ。

 銃口の向きとか直前で変えてくるから真正面からの殺し合いになったらほぼ確実に負けるわ。

 実戦仕様の触手服……エロ仕様抜きのバージョン、いくつか融通してもらえないかな。

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― 新着の感想 ―
アルマ艦長っていう同じ名前のキャラいましたよね。 男で同名かと思ってたら女ですか、なんで同じ名前にしたんですかね?
おお
触手服か...閃いちゃうな..
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