表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/106

骨拾いミーティング

「骨拾いですか? なんか不吉な異名の仕事ですね」


「まぁ真っ当な仕事ではあるんだが……裏事情が多すぎてな」


 通称骨拾い、何らかのアクシデントで惑星上に不時着したり、宇宙空間で救助待ちの船の事である。

 グレーゾーンなど存在しない、完全なホワイトな仕事のはずが依頼人も受注者も人間だからな。

 抜け穴見つけてブラックに変えてくるんだよ。


「ようするに不測の事態で動けなくなった船の救助なんだが、悪用されやすいんだ。その辺はノイマン、お前に事前調査頼むぞ」


「え? あたし?」


「お前なら船の履歴だのトランスポーターだの確認できるだろ? 他の連中にばれないようにしながら」


「まぁ、この船の設備とあたしの能力ならそのくらい楽勝だけどいいの?」


 ちらりとメリナを見ている。

 二重の意味での確認で、メリナというハッキングの天才がいて、さらにこの船のシステムを一時的にでも使うという危険性に対するものだ。

 なお前者に対してメリナは許可してくれている。

 後者は俺次第という事になっているのだ。


「面倒な仕事の中でも比較的まともなの選んだんだ。その中でお前の力が必要だから頼ってる、信頼を得るチャンスだろ?」


「それで自分が危険になっても?」


「傭兵なんて金のために命を懸ける。そのために名声も得たい。結局命をチップに仕事してるんだから今までと変わらんよ」


 少し考えた様子のノイマンだが、すぐに力強く頷いた。


「うん、人間の行動原理がよくわからなかったけど少し理解した! じゃあ今回は真っ当にお仕事するね!」


 真っ当じゃない時があるのか、と思ったがこいつが捕まった経緯からして真っ当じゃないわ。

 人権も糞も無い場所でハッキングしてたんだからまともじゃない。


「というわけでメリナもいいか?」


「艦長の判断に従うだけですよ。でもなんで骨拾いなんて不吉な異名を?」


「話せば長くなるが……まず依頼人だな。今回は裏が取れててちゃんとした相手なんだが、宇宙海賊と繋がりのある連中がこの手の仕事を振って待ち伏せして、救助に来た傭兵を襲う事がある」


 ゲーム時代でもよくあったが、騙して悪いがってやつだ。

 なんなら依頼人が実は宇宙海賊でしたというオチもあるわけだし、傭兵と宇宙海賊両方やってる奴もいる。

 ゲームだとその辺緩かったんだけど、リアルになったことでナノマシンによる情報記録からそういう手段はほとんどなくなった。

 まぁそれでも仲介人を使うとかの方法で似たような行為はできるんだけどさ。


「で、もう一つが不時着した船が自分の船よりも性能が良かった場合だ。これは傭兵側が裏切るパターンだが依頼人は既に死亡していた事にして壊れた船を貰っちまう。そのまま自分が使っていた船のパーツや、それを売った金で修理して使うようになる。どっちにせよ依頼人か傭兵が死ぬから骨、その情報を集めるために奔走するギルドが忙しくなるから骨拾いが通称だ」


「ははぁ、なるほど。そんなことが……」


「だから大抵の場合骨拾いの依頼は表に出回らない。それなりの信用が無けりゃ受けられないし、依頼出す側もそれなりに余裕が無けりゃ出さん。珍しい仕事であるのは間違いない」


「じゃあ今回はアナスタシアさんが認められたという事ですか?」


「いや、試されてる」


 俺の人となりとかその辺も含めて、メリナという政治家紐付きの見張りがいる以上余計な事はしないだろうというのは大前提だ。

 だが一方でノイマン、エフという存在を手に入れた俺は事実上透明人間みたいな行動もできるようになった。

 ナノマシンの情報を書き換えるくらいはできるようになったわけで、つまり海賊行為してもばれないわけだ。

 そんな俺がどんなことをするか、相手はそれを知りたがっているのだろう。

 もちろん今回だけではなく、今後一挙手一投足全てに注意が向けられるようになるのは間違いない。

 だとしても、こいつは手元に置いておいた方がいい武器だ。

 厄ネタだけど他人に預けられるほど安定した存在じゃないってことでなぁ……ある意味反応弾みたいなもんだよな。


「ねぇねぇ、ちなみにあたしの名前って何か由来あるの?」


「ん? あぁ、俺のいた惑星でコンピューターの祖となった人物だ。数学者を集めてコンピューター造る際に試験をしたんだが、他の人が電卓だの計算機だのそろばんだの持ち込んだ中でそいつだけが手ぶらで参上。問題を出されたらちょっと上向いて考えて、一番早く正解を導いたってとんでもない人物だ」


「へぇ、結構凄い人なんだ」


「凄いどころじゃないぞ。そいつを祖としたコンピューターは量子コンピューターに取って代わられるまでずっと使われ続けたくらいだ。スパコンとか含めて、各国の中枢に深く根付いていたし一般家庭でもそうだったな」


「つまり……アナスタシアさんの惑星ではほぼ全ての電子機器の親みたいな感じなんですね?」


「コンピューター制御が一般化した状態だったしそうだな。この船は量子コンピューターではなく反物質コンピューターだからまた違った理論で動いているが……俺はその辺詳しくないから」


 設定上反物質と量子とダークマターがどうの、とか言う話だったがフレーバーテキストなんて詳しく覚えてない。

 強いて言うならこの船の技術は突き抜けているというべきか。

 まぁそれでも他で代用できる範疇だから国もばらして検査してそのまま返してきたわけだが。

 代用無理だったら買い取りの話が来ていただろうし、最悪殺されて奪われてたかもしれん。

 ……まぁそうなったらこっちもそれなりに、暴力的な手段に出るけどな。


「あとはアニメでとんでもない操舵技術持ってる操舵師も同じ名前だったが、俺の世代だとそっちの方が有名だったな」


「その人はどんなことしたの?」


「単体大気圏突破能力のない船で、浮遊システムなんかも無い宇宙船を使って大気圏内バレルロール」


「……頭おかしいの?」


「命令した艦長が頭おかしかったんだと思うぞ」


 あれはまぁ、うん、俺もできなくはないがホワイトロマノフだからこそだ。

 一般に出回ってる船でやれと言われても超小型機とかじゃないと無理だし、そもそも傭兵が持つような船でやる事じゃない。

 軍艦でもできるけどそれは技術力の問題で、今一般的に軍事採用されている船は全部浮遊システム、立ち上げたら反重力とかで勝手に空中で姿勢制御してくれるようなものが積まれているからな。

 俺は邪魔だから外したけど。

 ホバリングはゲーム時代じゃ一般的な技術だったし、初心者卒業の第一歩くらいでみんな使ってなかったなぁ……。

 結構重量あるし、制御システムのコスト食うからマジで初心者用だったんだよな。

 たまに浮遊システム積んだまま上級者の仲間入りする段飛ばしなんかもいたけど、そいつらも結局は仲間の勧めで練習したりしてた。

 まぁそのたびに船爆散させると金が溶けていくからシミュレーターだったけど、宇宙空間じゃマジで意味のない代物だったからなぁ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ