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新しい仕事

「……で、厄ネタ押し付けておいて今度は仕事を斡旋か? 俺も大仕事終えた後だし少し休みたいんだが?」


 その日の夜はしっぽりとメリナといちゃついて……というか苛め抜かれてぐったりと眠った。

 向こうもフラストレーション溜まってたのか俺で発散されて、俺は俺でなんか知らんがこの関係性が気に入っているのかされるがままになっているんだが……それはいい。

 うん、この際俺がどんどん雌にされているのはどうでもいい。

 どうでもいい事にしておかないと俺のアイデンティティが崩壊しかねないから深く考えない。


「すまんが急を要する仕事と、そしてベルセルク全権力者達からの依頼だ」


「まーた厄ネタか?」


「いや、違う。お前の昇進に関わる事だが、とりあえずこれを見ろ」


 差し出されたのは一枚の書類。

 宇宙にまで来ると紙は結構高価なんだが惑星上だと普通に使われるし、コロニーでも重要な物はデータとバックアップ用チップと書類の三つで構成されている。

 破棄が楽だし、データみたいに簡単に吹っ飛ぶことは無い。

 エフみたいな存在がいる以上データを引っこ抜かれる危険性もあるが、それもある程度は抑止できる。

 押印なんてのも復活したらしいが、それは結局のところ人の眼で見て、そんで承認したという証が重要ってことだな。

 一部じゃ貨幣の代わりにレアメタルを使っていたりするわけで、アナログはセキュリティという面では別の強みがあるわけだ。


「こいつは……俺達の評価か?」


「そうだ」


 ずらりと書き連ねられたのは俺達の戦績。

 そしてそれに基づいた評価だ。

 注釈として最上位をAと位置付けて、最低がC-だ。

 だというのに俺の個人戦闘能力や宇宙船操舵技術なんかがA+と書かれているのは気になるが……つーかアルファベットあるんだな。


「状況判断能力B+……指揮能力A……それに協調性に至っては存在しないはずのA+か。随分高く買ってくれてるな」


「あぁそうだ。お前の事を高く買っている。だからこそこんな短期間で昇進の話が出たわけだが、傭兵として特例というのはどんな時でも発生する。しかしそのために制度を作っていたら追いつかないから都度相応の試練を与えてそいつが上位にふさわしいか調べるのが通例になっている」


「ほとんど制度じゃねえか……あ、いや、制度って形にするとそれ目当ての奴がやらかすから上層部しか知らない暗黙の了解みたいになっているのか?」


「察しがいいな、その通りだ」


 制度ってのは決まり事で、今回の場合はこんだけ凄い奴がいたらこういう処置しようぜという話になる。

 ただそれが普通になると悪用する輩も出てくるから一般には知らされない、特例として扱い続けているというわけだ。


「じゃあどんな無茶ぶりされるか、聞いてもいいか?」


「これだ」


 今度はブレスレットが差し出される。

 よく見てみると中にチップが入っているな……なんだこれ。


「それはお前が使っている端末以上の性能を持つインターフェイスだ。既存の通話などの連絡はもちろん、ギルド直通のやり取りも可能だ。並のジャミング程度では防げず、見た目もアクセサリーそのもの。なおかつ超高速通信だけでなく超光速通信すらも可能だ」


「まじかよ、お高いんじゃねえの?」


「仕事の報酬に色を付けた。そしてこれから無茶ぶりするための前払いと慰謝料だと思ってくれ」


 そんなもんを渡されるとか不安しかないんだが?

 まぁはめてみるが、体内のナノマシンと共鳴するような感覚がした。

 続けてこちらの身体情報が登録され、腕にぴったりとくっついた。

 文字通り張り付いているというか、引きはがそうとしなければとれることは無いだろう。


「中に今回の依頼が入っている。読んでみてくれ」


「えっと、操作はこうやって……こうか? っておい、多すぎないか?」


 ナノマシン操作と言えば難しく聞こえそうだが、脳波コントロールできる端末。

 ちょっと考えただけでシステムが動いてくれる。

 無意識に考えてるエロい事とかは検索されないみたいだけど……ちょっと扱いが難しいな。

 普段は既存の端末を使おう。

 それより問題は依頼の数だ。

 軽く見積もっても10個はある。


「全部をこなせというわけではない。その中から三つ完遂できればこちらはお前を昇進させる。もちろん断ってもいいが今の調子では同じような状況になり、更なる難題を押し付けられる可能性が高い」


「……三つでいいんだな?」


「あぁ、そうだ」


「わかった。今すぐ決めなきゃいけないわけじゃないなら持ち帰って仲間と相談させてもらうが構わないな」


「無論だ。じっくり選んでくれ」


「そうさせてもらうよ」


 所長室を出て、大きくため息をつく。

 まったく、なんて面倒な仕事を振ってくれるんだか。

 宇宙海賊退治くらいなら楽でいいんだが、今回はそうじゃない。

 仕事の大半が面倒かつやりたくない系筆頭だ。


「ま、順当に骨拾いが安パイだろうな」


 頭の中に流れ込んでくる情報の中にある、墜落した宇宙船の回収という仕事。

 ゲーム内だと生存者がいなければ、あるいはいなくなればその宇宙船を手に入れる事もできるというそれなりに美味しい仕事だった。

 なにせ滅茶苦茶高価な船をただどころか報酬付きで手に入れられるチャンスだからな。

 だがこの世界の場合、船は持ち主のナノマシンと連結されている。

 出元が筒抜けになるわけで、更には今まで使ってた船や拾った船がそのままどこかに転送されるようなことも無い。

 更に言うなら墜落したって時点でどっかしらぶっ壊れているわけで、修理が必要になってくるから大半はパーツぶっこ抜き用なわけだが……手続きとかが面倒だとわかってスルーしていた仕事だ。

 ただそんな仕事でもこの中じゃ随分と楽な方に見えるから不思議だな……。

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― 新着の感想 ―
これ、ある程度相手の性格を分析した上で選び抜かれた依頼群で、自由に選ばせてる体ではあるものの、実は選択肢ないやつでは…? まぁ、自分が達成や生還可能な依頼を見抜くのも傭兵としての能力だと言われてしまえ…
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