表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/106

意外な再開

「どっこいせ!」


 断熱圧縮熱だか摩擦熱だかしらんが船体のシールドが赤熱する中、レーダーが全滅しているので目視で大気圏突入をすることになった。

 船での目視って二種類あってな、普段はセンサー系の一部で外部カメラが働いているんだが、それを補正してモニターに映し出す方式。

 一番ポピュラーで、守りが厚い部分だけど正味なくても同じと言っていい。

 要するにカメラ映像で、勝手な補正がついているとなれば電子戦が得意な相手だと真っ先に潰される場所の一つだから。


 もう一つはちょいとややこしいんだが、計器が全部壊れた際にせめてもの抵抗ができるように外部を視認できるハッチがある。

 そっから鏡で反射させて物理的に外を見る方法で、潜水艦の潜望鏡に近いな。

 ただこれ、補正が全くないからこそ見える範囲が狭く情報量も少ない。

 音速を超えるが亜光速まではいかないかなくらいの、普通のフライトでも見えたと思ったらぶつかる直前という状況だったりするので趣味で覗き込むやつはいても実際に使う事はあまりない。

 普通の船ならばな。


 戦闘中だとカメラなんて普通にぶっ壊れたりするから傭兵の必須スキルの一つになりつつあるとかなんとか。

 俺はゲーム時代はその辺没入感のためにコックピット内から外を見る一人称視点を使っていたから、そこまで苦労は無かった。

 三人称視点で遊んでたら苦労してたかもしれんけどなぁ。


 ともあれ、そんな光景を亜光速で通り過ぎる中、目視で距離と速度を計算して姿勢を変えた旅客機はミシミシという嫌な音を立てながら姿勢を変えて地面への激突を免れた。

 宇宙港に止めてる暇が無かったので街中への緊急着陸だが、できるだけ養成所に近い所を選んでもらった結果傭兵ギルド本部の目の前に着陸。

 メリナが「あ、やべっ」とか通信で呟いていたのでどっかぶつけたか擦ったんだろうなと思うけど後回し。


「メリナ、どうだ」


「地続きで、こんだけ近いと楽ですねぇ。ほいほい……あれ、まださっきの生体反応があります」


「それは無視していい。それより外部からのアクセスは即座にって話だったがどうするんだ」


「そこは所詮マシーンですよ。いくら人の手で設定していようと防壁を突破するなり、問答無用でプログラム全部破壊したり、負荷を与えてシステムダウンさせるなりありますが今回は穏便にいきます。……はい、反物質動力炉停止っと」


「早いな?」


「えぇ、外部からダメなら内部からってマシーンを騙しました。それと惑星スキャンの精度もばっちりなので確認しましたが、ギルド本部やそれ以外の重要拠点にも似たような仕掛けがされていたのでそっちも止めてあります」


「そうか、座標をマークしてマッピングしておいてくれ。ついでに隠し通路への鍵とかも」


「もうやってますよーっと、はい完成。今傭兵ギルドに正式に要人護衛の依頼を出したのでしばらくすればそちらの船に傭兵が来ます。ただ一応シールドは展開しておいて……ほしいんですけど、大丈夫ですか?」


 こちらの船の状態を見て言っているのだろう。

 まぁ尾翼は吹っ飛んで、機体には亀裂が入りそうになっている。

 貨物室なんかはそれ自体が強力な金庫であり、シールドを自発的に展開できる仕様だが無理やり電力奪ったからシステムダウン中。

 客の中には怪我人もいるが、些細な事なので放置してもよさそうだ。

 クレームが来ても所長にぶん投げるし。

 それ以外には無茶な挙動でエンジンがちょいと悲鳴を上げているが、飛ぶわけじゃないから問題は無し、ジェネレーターの方はエネルギーの総量がダウンしているから廃棄交換コースだろうけどまだ動かす分には問題ない。

 安全マージン的には「動きは鈍いけど安全性は保たれている」という状態だな。


「シールドだけなら問題ない。傭兵が来たら教えてくれ」


「あ、いえ、もう来てますのでドア開けてもいいですよ。それともこちらでやりますか?」


 ふむ……通信を端末に切り替えるか。


「こっちで会話をしよう。俺が出迎えるから合図をしたら開けてくれ」


「了解です」


 ずかずかと、死屍累々と言った様子の客室を通り抜けてハッチ前に出る。

 吐瀉物と血と、シートベルトが間に合わずあちこちぶつけた奴らが転がってたが死人は無いから大丈夫!

 めっちゃブーイングされて怒鳴られたけど、そんだけ元気なら気にする必要すらないな! ヨシッ!


「開けてくれ」


 合図と共にハッチが音を立てて……止まった。

 ギギギとフレームが悲鳴を上げているからどっか歪んで開かなくなったんだな。


「外にいる傭兵、ちょいと離れててくれ」


 僅かな隙間から声をかけると人の気配が少し遠のいた。

 なので問答無用でハッチを蹴り飛ばすと、やはりフレームにガタが来ていたのかバギンッと音を立ててドアが外れて、そのまま地面に転がった。


「……ま、まぁどうせ使い物にならなかっただろうしな」


 言い訳をしながら来た傭兵達を品定めしてみるが、敵意のある奴はいないよう……ん?


「あれ、あの時の無愛想じゃん。久しぶり」


 俺がこの世界で初めて降り立ったコロニー、メリナと出会い、そして傭兵としてのいろはやこの世界の常識を知りながら試験を共にした無愛想ガキがいた。

 こんなに早く本星の本部で仕事できるとか、こいつ結構有能なんだな。

 名前忘れたけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ