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爆発オチなんてさいてー!

 床に隠されていた扉が開くと同時に突入、なんて真似はしない。

 メリナのスキャン情報を端末に表示してもらって確認する。


「一本道っつーか部屋が一つか。それに深い所にあると思ってたがそうでもないな」


「反物質の量もこうして直に測定すると少ないですね。養成所くらいは吹き飛びますが……ベルセルクの崩壊には至らないかと」


「ってことは、生体反応の方が本命か」


「わかりません。一つ言えるのは反物質をブラフに何かを企んでいる可能性が高いという事です。十分にご注意を」


「了解だ。そちらも宇宙の方を頼んだぞ」


 互いに敬礼して俺は地下に降りる。

 深さにして100mくらいか、空気の問題とかその辺は大丈夫だという診断だったのでデータ、というよりメリナのハッキング技術を信じて一気に梯子を下りる。

 昔やったゲームの女主人公がかっこよくてさ、梯子の横掴んでずさーって一気に降りるやつ。

 それを試してみたんだが、怖くて漏らすかと思った……あと手が焼けるように熱い。

 一応近接戦闘用グローブみたいなのは付けていたし、レーザー相手でもある程度耐えられる素材だけど中身が耐えられないんだな……。


「こいつは……」


 そんな恐怖心とか全部投げ捨てて降りた先でライトをつけると奇妙なものが目に入った。

 例えるまでもなく、ドリルだった。

 四つの支柱がそれを支えていて、世間的にドリルと認識されるアレがくっついているなんかの装置。

 見た目は鉛筆を支える四つの柱って感じだな。

 その横には小さな瓶が一つあり、よく見れば人の形をしている。

 ただ異様に小さく、そして羽が生えている。


「おいおい、いつからファンタジーな惑星になったんだここは」


『汝……』


「お?」


『我をここより助けよ』


「えーと、もしかしてお前か?」


『然り、人ならざる人よ。我をここより解き放ちたまえ』


「そりゃあちょっとどうだろう。この施設がどういうものか考えたうえで、あんたがどういう風に利用されているかとか考えないといけないからな。とりあえず端末繋いで相棒にスキャンさせるが」


『やめておけ、外部からのあくせすとやらがあった場合、この鉄の杭は即座に射出されると言っていた』


 ……ハッキング対策ってやつか。

 メリナの技術は目を見張るものがある。

 一流どころか、超一流を超えた最上級と言ってもいい。

 けど、そのためには導線が必要だ。

 スタンドアローンで動いているような、つまりはネットワークに接続していない機械相手じゃ俺が端末なんかを繋いでやらないとハッキングはできない。

 その導線である俺が今回は足手まといになったわけで……戻ったら少し教わるか。


「鉄の杭ってのはこのドリルの事でいいんだよな。どういうもんだ?」


『我の知っている話ではこの星を突き破るものだそうだ』


 あぁ、なるほど。

 惑星ってのは基本的にいくつかの層に分かれているが、みんな御存知マントルとかそういうやつ。

 地球でもどっかの国がめっちゃ深い穴を掘って、地層調査したけど後年堀進めすぎると層に傷がついて人類絶滅の可能性が云々なんてことも言われていた。

 層一つ貫くだけでもまずいってなら、全部ぶち抜いて惑星そのものに風穴をあけたらどうなるか。

 仮にその温度に耐えられなくても……まぁこの辺の心配はそんなにいらないんだが、耐えられなくても地中深くで小量とはいえ反物質がドカンといけば結果はお察し。

 おそらくこの機械そのものの動力であり、爆弾でもあると考えるべきだ。

 惑星の破壊方法としては存在がバレなければという大前提があるが、お手軽で安価だな。


「止める方法は」


『我の力を使う』


「悪いがオカルトに頼っている時間は無いんだ。詳しく説明してくれ」


『その時間も無し、あの扉が開かれてからおよそ300秒。残り600秒でこれは作動する』


 ……時限爆弾かよ!

 わざわざ15分って制限つけてるのがいやらしいというか、腹立つな。

 説明役にこいつを置いているのも理由あっての事なんだろう。

 例えば今の俺みたいに、開放するか殺すか悩ませたりな。

 逃げる時間が無いという事実を突きつけて、その上で希望を与える。

 本当に腹が立つやり方だ……が、的確ともいえる。

 だってめっちゃ惑わされてるもん俺!

 とりあえず落ち着け、こういう時程状況確認だ!


『汝、我をここより解き放ちたまえ』


「……こいつはガラス瓶だな。割と簡単に割れるが内部に電圧がかかっている」


『我の力ではこの透明な壁をやぶれぬ。雷の力に我の力が封じられている』


「こっちの支柱は戦艦の装甲と同じだな。破壊は現実的じゃない」


『然り、それほどまでに頑丈な物質を我は知らぬ』


「で、あのドリルはレアメタルの塊ってところか? 耐熱と頑丈性だけを重視したような物体だが……ケツの機械に反物質動力炉を積んでいるわけだ。そっちは柱と同じと」


『然り、あれを壊すは至難の業」


 ん、大体わかった。

 やっぱり確認は大切だな!

 まずドリルを支えている支柱だが、こいつをぶち壊してドリルを横倒しにするのは現実的じゃない。

 専用の道具と人員がいれば話は違うが、時間が足りない。


 次にドリルの破壊だけど不可能、少なくとも俺が知っている限りレアメタルの中でもどちゃくそ頑丈なのは反物質での対消滅にすら耐えるって話で、そりゃもはや物質としてどうなんだよと言う話になる。

 こう、反物質動力炉の部品として扱われているけど炉の中で一番高価だったりする。

 そんなもんをぶっ壊すのは現実的じゃない。


 じゃあ目の前のガラス瓶に封印されてるフェアリーを解放してやるか?

 そんなわけねえじゃん、こいつ間違いなく普通の存在じゃねえもん。

 こっちに来てから宇宙で生活する知的生命体のデータを片っ端から閲覧したが、こんな奴は生命体として記録されていなかった。

 多分レプリカントの類だと思うけど、まぁまともじゃない。


 ならやることは一つだ。

 ドリルのケツ、見たところ整備用のハッチは見当たらないがよじ登ってみればわざとらしい取っ手がついていた。

 散々嘘をついて人を疑心暗鬼にさせて、そこを抜けたら今度はわかりやすい物が置かれている。

 そういうのを警戒して時間を無駄に使う事になると精神的な罠が多いな。

 まぁ、情報の断片を与えられてここに来たなら疑い続けるしかないだろうけど……俺、今全部直感に任せて行動してるから関係ない。

 取っ手を掴んでこじ開けて、中を見れば謎の配線や配管、その奥には鉄の心臓と呼ばれる動力炉が一つ。

 ……こいつはダミーだな。

 本命は他にあるが、システムを動かすためのものだ。

 多分この部屋の設備を維持するためのものだ。

 先に壊したらいけないと俺の中の幽霊的なあれが囁く。


 ドルグのボディできてよかった、生身の身体じゃ機械の配線を壊さず内部にもぐりこむのは無理だった。

 それにこのボディ壊す前提で動かないといけないのも事実だしな。

 反物質ってのはそれだけ危ないんだよ。


「あった」


 深く深く潜り進んだ先で見つけたのは第二の鉄の心臓。

 近づくだけでチリチリとした痛みが走る。

 おそらく対消滅、周りの機材には影響を与えないが生身で近づくとこうなる。

 反物質が漏れているのではなく、防衛機構のようなものだ。


 いくつかの配線を見て、下に伸びている物と上に伸びている物を見分ける。

 最初は上に向かっていても途中から下に戻って来る物もあれば、その逆もある。

 正しく分解しなければ一発でドリルが地面に潜り始めるだろう。

 あのフェアリーの言ってたことが本当なら、残り時間でそれを見破って解体するのは無理だ。


 だけどさ、もっと簡単な手段があるんだよな。


 反物質の動力炉、その横を頭と片手だけを守って通り抜ける。

 めっちゃ痛い、そもそも守れるものじゃないけど配管とか盾にどうにかこうにか進めている状態だ。

 脚なんか残っているか確認する余裕はない。

 右手が消し飛んでいるのはわかるが、それは単純に血が飛び散っているからだ。

 頭が無事なのはこうして思考できているからで、左手はまだ神経が通っているからか痛みで繋がっていることがわかる。

 ただ、ぬるりとした感触もあるから指の何本かは消えているかもしれない。


 けど、防衛機構を抜けられた。

 あとはドリルの真上に来られたという事実と、俺が持っている武器が誘爆しなかった事に感謝するだけだ。

 あの場所で起爆しても問題なかったけど、確実にとなるともっと深く潜りたかったからな。


「最後は赤い配線と青い配線ってのがお約束だが……今回はそうじゃないんだよなぁ!」


 大型のプラズマグレネード、反物質とは違い対消滅ではなく強力な磁場によって物質を分解する爆弾。

 それを起爆させた。

 ドリルを動かすための動力が反物質でも、その通り道が消えたら動かす事は出来ねえだろってな。

 ……まぁ養成所は吹っ飛ぶかもしれないし、ドリルが動き出す可能性もそれなりにあるけど俺にできるのはこれが限界だ。


 後は野となれ山となれってな!

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