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(救援に)私が来た!

 窓からこっそり中を伺い、襲撃するのによさそうな場所を探す。

 入口は見張りが立っているから近づかないようにしつつ、壁をつたいながらちょうどよさそうな場所を見つけたのでナイフを突き立てて出入りに問題ない位の穴を開けて侵入、2階の通路に身をひそめる。

 幸いというかアンドロイドやレプリカントはみんな1階で待機していて、2階からは気配も感じなければアンドロイド特有の電子音もしない。

 ……このボディ何気に高性能だよな。

 そのまま身を隠して数秒……天井が吹き飛び、同時に大量のグレネードが降ってきた。

 下で銃火器を構えていた奴らが天井に銃口を向けたが、カンカンッという足音からマリアは即座に離脱し、そのまま下に向けて手持ちの銃を乱射しているようだ。

 囮として、命令内容にも100点の回答をしてくれたな。


「ショータイムだ!」


 起爆と同時に通路から飛び降りて銃をぶっ放す。

 反動は思ったほどでもないが、やはり小柄なボディのせいで姿勢が崩れる。

 ならそのまま軸回転で四方八方に銃弾をぶち込むだけだが、弾切れだ。

 弾倉のほとんどはマリアに渡してしまったから残弾0である。

 ので、用無しとなった銃は近くにいたアンドロイドにぶつける。


 弾が入っていない銃の正しい使い方講座で教わった近接格闘戦、別名力任せにぶん殴るだ。

 致命打とは言い難いが一瞬でも怯ませられたならOK。

 その隙にナイフを首筋に突き立ててやれば動力系からのエネルギー供給ができなくなって活動を停止する。

 レプリカントの大半は爆発と、吹っ飛んだアンドロイドや部品を散弾のように浴びて死にかけている。

 今がチャンスだな。


「マリア! 残敵は任せた!」


「了解、シェルターへの入り口は舞台裏です。敵数およそ30、お気をつけて」


「お前も無理はするな。片付けたら援護を頼む」


「はい」


 言われた通り舞台裏に行けば爆破跡と、地下に続く階段。

 耳をすませば銃撃の音と、アンドロイドの稼働音。

 こちらを気にしている様子はあるが、それよりシェルターの悲鳴がでかいな。

 俺が駆け付ける前に破るつもりみたいだが……。


「甘いんだよ!」


 飛び降りるようにして、そして駆け降りるように走ると数機のアンドロイドがこちらに銃撃を仕掛けてきた。

 閉鎖的な空間故に飽和攻撃は十分な効果を発揮する。

 だが、それは統率がとれていればであって烏合の衆、命令系統のはっきりしていないスクラップの攻撃なんか穴だらけだ。

 俺が蜂の巣にされるよりも先にナイフをぶん投げて一機撃破、銃弾の通っていない場所を潜り抜けて一番近くにいた奴の首をへし折り二機目撃破。

 そいつの持っていた銃を、手を握る形で引き金引かせて残りの奴らにも対処。

 数秒で包囲網に近づいたところでようやくこちらに意識を向けた残りのスクラップ共だが、もう遅い。


「バイバイベイビー! ってな」


 倒れ伏した一機の動力部にナイフを突き立ててからぶん投げる。

 近くで倒れていた残骸を盾にして数秒、盛大な爆発と共に敵は全滅した。

 一般的にアンドロイドの動力として使われているのはプラズマだ。

 使い方を間違えるとドカンと大爆発を起こすが、その威力は火薬なんか目じゃない。

 さっきマリアが投げ込んだグレネードも半分はプラズマであり、効果範囲内の物を吹き飛ばすどころか消滅させるくらいの威力はある。

 ……ちなみにマリアに搭載されている動力は予定通りなら反物質とプラズマの二重構造になっており、いざという時に切り替えが可能となっている。

 あいつ自爆したらこの辺り一帯跡形もなく消し飛ぶだろうな。

 というかこいつら順番に自爆していけばよかっただろうに、と思ったけど辺りを見れば壊れたアンドロイドの他に銃座がいくつも破壊されていた。

 防衛装置があったから迂闊に近づけなかったわけだ。


「さて」


 念のため倒れているアンドロイド達に、拾った銃でとどめを刺していく。

 中には死んだふりをしていたらしい奴もいて、こちらの射撃に合わせて逃げようとしたのか反撃しようとしたのか知らんけどもがいている間に潰させてもらった。

 やっぱり確実にとどめ刺すのが一番だな。

 油断はダメ絶対、慢心したやつから死んでいく世の中だ。


「所長、アナスタシアだ。救援に来た」


 シェルターに取り付けられた通信機を手に声をかけると同時に向こう側から爆音が鳴り響いた。

 いや、実際に何かが爆発したわけじゃなく、中にいた奴らの歓声がそれだけデカかったという意味で。

 損耗率知らんけど銃座を含めた防衛装置の大半は潰されててじり貧だったのはわかる。

 そこで救援が来たとなったら、普通はこうなるだろう。


「お前がアナスタシアであり、救援に来たという証拠はどこにある」


「ごもっとも。そうだな、精神スキャンでどうだ?」


 生体スキャンならぬ精神スキャン。

 ナノマシンが主流な世界なだけあって精神面も機械的に調査ができるようになっている。

 普段なら洗脳されてたりとか、今の俺みたいにガワだけの人形に精神を移してコロニーに乗り込もうとするふとどき者相手に使われる技法だ。

 俺が初めてコロニーに降り立った時も、それ以降も基本的にこのスキャンを受けていると後から聞いて驚いたくらいだ。


「アンドロイド共はその辺の機材は壊していないはずだ。あいつらには意味がない代物だからな」


「いいだろう……間違いないようだな。上の戦闘は仲間の女か?」


「あんたが用意してくれるはずだったアンドロイドのマリアだ。そろそろ終わると思うが……骨格むき出しってのはさすがに時間かけすぎじゃないか?」


「それどころではなかったのでな。むしろ動けるように仕上げたことをほめてほしいくらいだ」


「じゃあ後でその禿げ頭撫でてやるよ。煙が出るくらいに撫でてやるが……シェルターの修復にはどれくらい時間がかかりそうだ。こっちは相手の本拠地叩きに行きたいんだが」


「30分は欲しい。可能ならば1時間、その間敵の足止めを頼みたいが」


「難しいな……ギルドから増援は頼めないのか?」


「連絡がつかない。恐らくは陥落しているのだろう」


 ギルドが陥落か……いよいよもってマズいな。

 本格的に時間をかけている場合じゃないようだ。


「装備はあるか」


「持ち込めたものがいくつかある。だがここの防衛に使うにせよ、攻め込むにせよ数は十分とは言えない」


「ナイフがあれば数本譲ってほしい。ここの防衛にはマリアをつけ、俺が敵を責め落とす。異論がなければ上に行って応戦、そのまま敵本拠地に突撃するぞ」


「いいだろう。ポケットに通した、持って行け」


 通信機横の壁が開いて中からナイフが7本出てくる。

 銃は失ったが補充できたし、ナイフもゲット。

 これでまだしばらく戦えそうだ。


「じゃあ行ってくる。息災でな」


「頼んだぞ」


 さて、後ひと踏ん張りってところだな。

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