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ゲーム装備引き継いでSF世界でTS無双……できるのかな?  作者: 蒼井茜


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戦法:突撃

「おらおらぁ! 道をあけろスクラップ共が!」


「マスター、アンドロイドを揶揄しているのであれば私もスクラップという扱いになります」


「マリアは未完成&俺とメリナの最高傑作だから別枠!」


「ありがとうございます」


 そんな軽口を叩きながら敵陣を突破していく。

 しかし……酷い光景だな。

 学生たちの死体が転がり、彼等が作ったであろうバリケードを逆に利用されている。

 そいつをマリアがグレネードでふっ飛ばして俺が切り込むという形になっているのだが、わざわざ守りを固めるあたりここの防衛機能は陥落寸前ってところか?


「マリア、生き残り本当にいるのかこれ」


「養成所内のカメラをハッキングしたところシェルターにて戦闘準備中のようです。多数のレプリカントとアンドロイドが攻撃を加えておりあと30分もすれば陥落するかと」


「ってことは所長はシェルターを最終防衛拠点にしたわけだ」


 考えはなんとなくわかる。

 多分まともな入口は一つしかないシェルターで敵を迎え撃ちつつ、緊急避難路的なところから戦力外の学生を逃がす算段なのだろう。

 一方で一部の学生はこうして囮にされたわけだが……傭兵らしい判断ではあるな。

 胸糞悪い話だが少数の犠牲で多数、あるいは将来性のある奴らを守れるならいいってことか。


「他に生き残りは」


「シェルター以外で生存、あるいは今から救援に向かい生存率が上がる者はいません」


「そうか」


 要するに全滅寸前、今生きているのはいるけど俺達は間に合わないってことだ。

 まったく……嫌な選択を取らせたこと、後で文句言ってやる。


「……メリナ女史から通信、敵司令部は傭兵ギルド地下にあり。ただしギルド直通ではなく地下通路を使わなければ到達できないポイントです」


「よく地下までわかったな……いやそれより、その地下通路で一番近いのはどこだ?」


「養成所訓練室です。現在最も敵兵力の多い場所です」


「シェルターへの攻撃は陽動か……とはいえ助けないわけにもいかないな」


「マスター、提案ですが二手に分かれるというのはいかがでしょう」


「悪いが却下だ。マリアが完全な状態ならまだしもそんな状態で行かせられない」


「御自身より私の心配ですか」


「今の状態なら俺の方が……あ、いや、どうだろう。この身体リーチ短いし筋肉も足りてないから微妙だな」


 自分とは真逆の見た目という事で男児の身体を選んだから格闘戦は苦手だ。

 ナイフで戦っているけど、それはあくまでも弾薬の少なさからであって好んでやっているわけじゃない。

 ……いや、嘘です近接戦大好きです。

 でも本当なら生身で暴れたいです。


「とにかくだ、今はシェルターの安全を確保してから訓練室に行く。俺達がコントロールパネルをどうにかする前にシェルターが破られるのが先だろうからな。そうなれば誰が俺に報酬を出して、マリアのボディを完成させてくれる?」


「了解しました。では手早く順番にという事ですね」


「そうそう、急いては事を仕損じるってな」


 格闘技でもよくあることだが、テンポとリズム、そしてタイミングが重要だ。

 今回の場合敵数が多いからリズムは相手が掌握しているが、そこに俺達という不協和音が乱入して乱す。

 これがテンポの掌握で、どのタイミングで不協和音ぶち込んでやれば効果的かという点がタイミングの掌握だな。

 これを端的に言い表すなら「場を支配する」ってやつだ。

 格闘技ってただがむしゃらに殴ったり蹴ったりしてるわけじゃなくて、相手の呼吸を読んだ会話みたいなものだからな。

 その延長線上には今回みたいな銃撃戦があって、そこから更に進展させると船を使った戦いとかにもなる。

 一方で戦争ともなるとあちこちでオーケストラがテンポとリズムの奪い合いしているから一か所で勝っても他で負けて、総合的に得点が多く失点が少ない側の勝利になる。

 この時重要なのは味方を増やす事、つまりは世論を味方につける事だがこの宇宙はその辺滅茶苦茶下手くそなんだよな……。

 いや、一周回って上手いのか?

 距離が離れているのもあるけど、星間国家同士で戦争始めたら両方に売り込みかけるからな。

 特需品という事で値段は跳ね上がるし、双方得点も失点もデカくなって最悪共倒れになるが売り込みかけた奴らは得をする。

 損をするのは国家の後ろ盾を失った一般市民くらいだ。

 金目当てに戦場に行った傭兵は、この世界に限っては自業自得ってとこだな。

 任務は自分で選べるし誰の命令でもないから。


「まもなくシェルターです。入口は体育館ですが地下に最終防衛ラインを引いている模様。現在館内はアンドロイドとレプリカントが陣を敷いています」


「そうか、なら正面突破は諦める」


 っと、敵さんも結構余裕あったみたいだな。

 徐々に追い込んで、外からの救援を阻止しつつ的確に追い込んでいっている。

 案外出向直後くらいには動いていたのかもしれない。

 後手に回ったツケが来たが……地下シェルターなら多少無茶しても大丈夫だろう。


「マリア、持っている手榴弾全てを上からばらまくぞ」


「上から、ですか」


「そうだ、屋根に穴あけてそこからばらまく。ただしそれはマリアの役目であり、囮だ。危険だが頼めるか」


「お任せください。ボディは交換が可能ですから電子脳さえ無事なら……」


「いや、命令だ。危険だと思ったらすぐに退避。替えがきくからって無謀な戦い方していたらそれが当たり前になる。そうなったら最後、完全に壊れるまで戦い方を修正できなくなる」


 ちょっと、先輩の事を思い出した。

 滅茶苦茶強い人だったけど、その打たれ強さを過信してパンチドランカーになって引退していった人だ。

 本人は命があって儲けものと言っていたが、医者曰く下手したら死んでいたという。

 それからは格闘技界でセコンドやコーチの仕事をしていたが、どこか寂しげに現役選手を眺めていたのを覚えている。

 俺が挨拶に行っても羨望と哀愁と嫉妬の混ざった表情をしていたから、そのうち会いに行くこともためらうようになったんだよな……。

 もし帰れたら真っ先に会いに行きたい人でもある。

 それを思い出すと無茶な戦いをさせる気にはなれないな。


「無線だとアンドロイドに気づかれる可能性がある。そちらのタイミングで攻撃を開始しろ。俺は手榴弾の爆発音に合わせて行動する。その後は上から射撃で援護、いいな」


「了解しました、御武運を」


「お互いにな」


 さて、大暴れの時間だ!

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