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帰還不能!?

 ベルセルクよ、私は帰ってきた!

 と思ったのもつかの間、通信機からけたたましいアラートが響き渡る。


「どした?」


「本星より緊急通信です。現在謎の機械兵達と交戦中につき着艦不可能……宙域にも複数の敵影ありとのことです!」


 機長の言葉に少し考えを纏めてみる。

 機械兵に、ベルセルク本星の宙域を囲えるほどの船、そんなものをどうやって用意したのか。

 ……考えるまでもないか。


「お前の仕業か」


 ルイス・ローメン、今回の主犯であるおっさん。

 暴徒鎮圧用に用意されていた手錠でがっつり拘束しているが不審な動きを見せれば電流がビリっと流れて気絶させる仕組みだ。

 電子と物理両方の鍵が必要になってくるハイテク手錠である。

 ちなみに夜のプレイ用に痛くないけどたまに電流流れるバージョンもあるとか……業が深いな。

 ともあれこのおっさんによって用意されていたのは間違いない。

 宙域を包囲している船は盗んだパーツから組み上げたキメラ艦だろう。

 機械兵は……まぁ惑星上に住んでいればそのくらいは用意できるだろうけど、どこに隠していたかが問題だよな。

 ともすれば共犯者が他にも出てくる可能性あるし。


「は、はははっ! 道連れだ! 貴様らも共に死ね! そしてベルセルクだ傭兵だとのたまわっている奴らは皆帝国に喰われてしまえ!」


「うるさいから黙ってろ」


「がふっ」


 顎に一発蹴りを入れて気絶させる。

 ……いびきかいてるけど、自発呼吸してるからヨシッ!


「ちょいと失礼」


「あっ、なにをっ」


「失礼と言った」


 コンソールを立ち上げて本星から受け取った敵の展開図を見る。

 まんべんなく、とまでは言えないが地上からの攻撃は難しい位置に陣取っている。

 それに大気圏突破で直に叩こうにも、突破時は垂直にぶちあがってというのが基本だから上を取られている以上狙い撃ちにされるだろう。

 しかし……。


「……妙だな」


「何がですか?」


「この敵船、完全に機体を同期させたように動いている。人間技じゃない」


「どういうことですか? 機体同士で光速通信による同期ならば不可能ではないかと思いますが」


「そういうレベルじゃない。なんていうか……そうだ、まるで一人のパイロットが同時に複数の船を動かしているような感じだ。二次元的な動きしかしていないんだこいつら」


「え? あっ!」


 宇宙には上下左右の感覚は無い。

 それは自らの意志で設定する物であり、まるで衛星軌道をなぞるように動くこいつらは重力に引っ張られないギリギリのところでグルグルとベルセルクを周回しながら包囲している。


「……護衛艦、聞こえるか」


「こちら護衛艦セレストマグナ1。この包囲を突破しての着陸は不可能だ」


「いや、そうじゃない。そちらでレーダーを展開してほしい。捨て駒になれという意味ではなく対人レーダーで敵船を調べてくれ」


「それは……」


「今は1秒も惜しい。このままだと乗客も巻き込まれるかもしれないから頼む!」


「わかった。……いや、待て、反応がない? レーダーを直に当てたのにこちらに反応すら示さない? どういうことだ?」


「数百数千どころじゃない数の船。どうやってそんだけ用意したかは知らんが、宇宙は物を隠すにはもってこいの場所だ。いざという時勝手に動くようにプログラムしておけば何かあっても逃げてくれる。最悪の場合時間稼ぎもできるという都合のいい駒だ。無人機なんだよ、あれは」


 あまりに平面的で不自然な動き、まるで初心者の初フライトみたいだ。

 ゲームだったら最初のうちは弱い宇宙海賊がメインの敵だし通用するんだが、軍隊とかが敵になった場合簡単に撃ち落とされる。

 それを脱却するのが最初の関門になるのだが、複数の機体でとなると話は変わってくる。

 要するにNPCってことだな。

 AIすら搭載していない、プログラム通りに動いているだけの案山子だ。


「メリナ、本星を包囲しているのは全て事前にプログラムされて動いている無人機だ。頼めるか?」


「どこまでやっていいですか?」


「穏便にと言いたいところだが、恐らく全ての機体が同一のシステムで動いている。一機、内側から書き換えてやれば全部同じ末路だ」


「なるほど……じゃあ穏便にウィルス流しますね」


「気取られるなよ。無人機とはいえ数が多い。俺は客船の中で動けないし、メリナはホワイトロマノフでの戦闘に不慣れだ。……このおっさん連れてそっちに戻ればよかったな」


 一応他の乗客に逃げられたり、妙な真似されないようにこっちに残ったのが仇となったな。

 あの程度の動きならダンゴムシでも……いや、待てよ?


「なぁ機長。この船にダイブ用の器具はあるか?」


「あぁ、乗客が暇をしないようにVRで遊ぶための物はあるが……何をするつもりだ?」


「本星との通信を継続しつつ、導線を途切れさせないようにしてくれ。地上に秘密兵器があるからそいつで機械兵を黙らせてくる。メリナ、穏便にってのは撤回だ。最速最短で潰してくれ」


「了解! そんじゃウィルスなんて玩具は捨てて本気のハッキングテクニックを見せてあげます!」


「俺はドルグで行く。それと所長に連絡入れて俺達が注文していたアンドロイドボディを戦闘モードで起動させるように伝えてくれ」


 人形のボディだが、専用の道具が無くてもVRなどに使うダイブマシンがあれば利用することはできる。

 ドルグの名で活動していた人形は俺の遺伝子とナノマシンに紐づけされているからダイブさえできれば問題なく使える。

 指輪とかピアスみたいな道具で遠隔操作することもできるらしいけど、それを覚える暇も無かったし面倒だったからな……。


「はい! あ、既にコアとなるAIは入ってますから人工皮膚とか気にしなければいつでも動けるという話聞いていたので要請後すぐに合流できると思いますよ」


 アンドロイドボディもドルグ人形も同じ養成所に保管されている。

 すぐに取り出せて、合流も素早く、そして武器の調達も簡単となれば……と思ったけど十中八九養成所は真っ先に包囲か、さもなくば攻め落とされてるだろうな。


「そいつは重畳。じゃあ、ミッションスタートだ!」

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