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待てゴラァ!

 ハンガーの扉をふっ飛ばして無理やり出港した事でクレームと、訴訟も辞さないという内容のメッセージが大量に軍部や憲兵隊から届いたが無視。

 今はそれどころじゃないので客船の位置をチェックする。


「見つけました。ポイントαとしてマークします」


「了解した。しかし……少々荒事になるな」


「ほとんど海賊行為ですからね」


「いや、そうじゃない。客船ってのが問題なんだよ」


 この世界で言うところの客船は文字通り賓客を運ぶための船だ。

 つまり帝国のお偉いさんが乗っているという事であり、当然護衛も乗っている。

 そして今回の仕事では死者を出してはいけないという縛りがあるため、俺一人でそいつらも犯人も制圧する必要があるわけだ。

 更には国際問題に発展しないように無関係な人に与えるダメージは最小限、あるいは一切の被害を与えない事が要求される。

 という内容をメリナに説明するとにやりと笑みを浮かべた。


「我に新兵器あり!」


「お前それ言ってみたかっただけだろ」


「へへっ、ばれました?」


 ここ数日暇な時間があった時は二人でイチャイチャしながらホログラム映画を見ていた。

 彼女が口にしたセリフはシリーズ500作目に作られた作品の劇場版で出てきた名言であり、なんと放送から劇場版になるまで120年の期間が要された。

 それリアルタイム視聴者の大半が死んでるだろと思ったけど、ナノマシンとかの延命で200年くらいは普通に生きられるとかなんとか。

 いやそれでも大半が見られなかっただろうけどさ。


「で、その新兵器ってなんだよ」


「私の前職に関わる話なんですけどね、ナノマシンのコントロールを一時的にダウンさせる武器なんです。といっても時間が無かったので警棒型しか用意できませんでしたけど」


「見せてくれるか」


「あいあいさー」


 まだ少しの猶予はある。

 必要なら素振りくらいはしておきたいが、ナノマシンをダウンさせるとなれば相手は生身の人間。

 以前、未強化の俺がメリナを手玉にとれたのはあくまでも戦闘経験の差から来るものだ。

 そもそもあいつは戦闘に携わる職業じゃなかったからな。

 だが今回は戦闘員だ。

 しかも護衛ができるだけの手腕があるとなれば数の暴力で俺が潰される。

 殺しは無しにしても四肢を砕くくらいは考えていたが……ナノマシンの補助がなくなった相手なら気絶させるのも容易いだろう。


「持ってきました!」


「こいつは……」


 手渡された警棒を軽く振ってみれば風切り音と同時にバチッという一瞬のスパーク。

 それよりも、こいつは凄く手になじむ。

 重さも硬さも丁度よく、護身用武器としては最高だ。


「どうでしょう」


「いいなこれ、時間がある時に予備も含めて普段使いの奴も作ってくれよ。ついでに装備として特注品も頼みたい。可能なら連合の軍部に売りつけようぜ」


「ほほう、格闘技のプロであるアナスタシアさんからの推薦なら話くらいは聞いてもらえそうですね」


「あぁ、海賊共や俺みたいな未開惑星出身じゃ意味ないかもしれないがコロニー内の犯罪行為や暴徒鎮圧用には役立つだろ。なんなら非致死性の弾丸としてエアライフル用に作ってもいいかもしれん」


「創作意欲がバリバリ湧いてきますねぇ」


「他にもグローブ型やつま先に仕込めるようにして格闘戦に特化させるのもありだな。だが今は」


「目の前の獲物に集中、ですね!」


「あぁ、とりあえず警告射撃からだ! 副砲1番2番ポイントαに向けて撃て! 同時にハッキングで船のコントロールを奪いつつこちらの要求を開示!」


「了解! ポイントα周辺の護衛艦、数4隻! こちらの警告射撃に反応して防衛体制を見せています!」


 センサーに表示されたマークがグリーンからレッドに変わり、こちらをロックオンしてくる。

 だが無意味だ!


「対空砲で護衛艦を牽制しつつ接近! ブレード展開! あちらさんには無駄な戦闘をするつもりは無く、ベルセルクの恥を逃がさないための行為だと伝えてくれ」


「そんなのとっくに終わってますよ。だからロックオンだけで撃ってこないんです」


「それで済むような、お行儀のいい奴らならいいんだけどな」


 海賊共と繋がっているかもしれない相手、それが亡命だった場合は……ほら来た!


「なっ、護衛艦3番機から反物質ミサイル射出を確認!」


「大義名分得たり!」


 急加速とバレルロールで回避しつつ3番機のコックピットだけを機体から切り離すようにしてブレードを当てる。

 この方法を使うと機体は動かなくなるけど、コックピットにいる人間は死なないからな。

 事情聴取とかに必要だろうし、生きててくれた方が何かと得だ。

 それに……。


「残りの護衛艦にメッセージを送れ。3番機の攻撃がそちらの意志ならばこちらは容赦しないと」


 反物質砲を展開して脅しを入れるのも忘れない。


「返答来ました。3番機もといコーネリア級、艦名バッカスの独断行動であり戦闘の意志は無いとのことです」


「ならコックピットの回収と、機体に取り残された整備員やらの救助を急ぐように伝えてくれ。その間にブリーチングして乗り込んでくる」


「このまま船ごと引きかえさせたらいかがです?」


「それもありなんだが、標的が何をするかわからないから抑えておきたい。船ごと自爆するというなら俺を巻き込むために引き入れる可能性もあるが……おそらくその心配はいらないだろ」


「それまたどうして」


「今まで大人しく身を隠してて、客船に乗れるくらいの身分。海賊とも繋がりがあり、ベルセルクでも要職についていた。一番美味しい汁を啜りながら欲を満たそうとしてきた奴だが、ここで死を選ぶくらいならベルセルクでやばいってなった瞬間にもっと大規模な攻撃仕掛けて個人船で逃げ出してるよ」


 その方が追いかけにくいしな。

 わざわざ客船を選んだのは亡命の意図があったと見るべき……いや、もしかしたら最初から帝国の人間だったのかもしれないな。

 家族がいるとかそういう可能性もあるが知ったこっちゃねえ。

 宇宙じゃ人の命は紙切れ一枚よりも価値がないんだよ。

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