残敵掃討
敵の拠点は潰した。
そこから出てきた軍用機も大半を巻き込んで消滅させて、何機かは余波で内部系がぶっ壊れて動けない様子。
そいつらを撃ってもいいんだが、放置決定。
あとでアルマ艦長に引き渡して、情報引っこ抜いてもらいつつ機体の解析をしてもらおうという魂胆だ。
まぁ自爆されたらそれまでなんだが、エネルギーの総量を見る限り敵の船は大したエンジンじゃない。
悪くない性能ではあるのだが、せいぜいがランク3の上位ってところだ。
船の武装にはランク付けがされており5段階でわかれている。
駆け出し傭兵が使うようなのは大体がランク1の上位からランク2の下位、ランク2の中位が使えれば上等と言ったところ。
軍用機は最低でもランク3の中位からスタートなので、そういう意味では結構いい性能していると言える。
ただ所詮はそれだけ、ホワイトロマノフはランク5を超えたEXという分類の装備で固めた、デメリット無視して性能だけで語れば最強の船である。
ホワイトロマノフの機体構成は動画で配信してからは扱いこそ難しいが使いこなせれば強いという扱いで攻略サイトにも載っていた。
ただ、その性能を十全に活かすとなると並々ならぬ訓練が必要になって来るし、超高性能のレーダーが拾うデータの処理を迅速に済ませなければいけない。
それができる事を前提として組んでいるので、基本的に似たような武装で固めつつレーダーやセンサーと言った物は別のをというのが多かった。
なおPvPというプレイヤー同士の戦いになるとそのレーダーとセンサーが物をいう超長距離射撃戦になるのでそこをダウングレードしている相手に後れを取ることはない。
みんなだいたい同じ主砲と、ラスプーチン積んでたんだがその組み合わせだけテンプレになっていた。
なおそれを揃えるのに途方もない苦労と時間が必要なんだけどな。
「さて、生き残ってる敵はどうだ?」
「逐次撃墜されています。苦戦している地区はありま……あ、一部の船が作戦領域を離脱しようとしてますね」
「敵か?」
「敵がこちらの傭兵を連れたままです」
「そうか。じゃあその敵に副砲撃て」
「了解、発射します」
メリナに指示を出し、撃たせた副砲が作戦領域を出ようとする敵を爆散させた。
同時にコールが鳴り響く。
「こちらホワイトロマノフ。キャプテンアナスタシア。何か用か?」
「俺等の獲物に何しやがる糞アマ!」
「お前らの自殺を止めてやったんだ。感謝しろ。アウト」
それだけ告げて切る。
状況がわかってないやつに何を言っても無駄だろう。
そう思っていたら再びコール。
今度はアルマ艦長だ。
「失礼、キャプテン。今の行動についてお聞きしたい。傭兵間のやり取りに文句を言うつもりは無いが、あなたにしては不可解な行動だったので」
「この宙域の外に出ようとする敵がいました。ほとんど包囲されていて、向こう側にはデブリ帯しかないはずだというのにどこに逃げるつもりだったんでしょうね」
「……なるほど、後続部隊ですか」
「さすが、話が早い。お……私の予想では後続部隊か、あるいは本隊が後ろに控えてる可能性がありますから。流石に拠点失ったとなれば撤退するでしょうけど、情報を持ち帰られるのも、情報源を引き渡すのも後々面倒なのでこちらの判断で阻止しました」
「了解しました。こちらでも注意しつつ、状況を見て離脱しようとする相手は撃破します」
「可能なら傭兵全体に注意喚起を。追いかけてもいいが巻き添えになるかもしれないと言っておけば無茶はしません。引き際をわきまえないならいずれ死ぬ奴らです。それと航行不能になっている船の座標をマークして送ります。余裕がある艦があれば拿捕と捕虜の捕獲に向かわせてください。自爆にはご注意を」
「了解しました。アウト」
「メリナ、データ送信を」
「はい、79%送信済みです。それと拠点内を探っていますが生存者はいないと思われます」
「よし、そのままレーダーの方を注視しててくれ。こっちはやばそうなところを見つけ次第援護に入るか、増援を潰す。レーダーの8割はそっちで使って構わん」
「いいんですか? 2割で戦場を俯瞰するのは厳しいと思いますが」
「十分だ」
この程度の戦場なら2割のデータがあれば十分対処できる。
ホワイトロマノフを使いこなすための条件としてレーダーセンサー系の管理があるが、これを可能にするテクニックで必要なだけ情報を集めるというのが基本だ。
優秀過ぎるシステムのせいで数㎝の欠片も映し出してしまうから、それをカットして大体1割の能力で戦う。
10割使う時は戦場ではなく通常航行で全天広範囲スキャンしながら何かないかと探す時くらいだ。
今回はメリナに8割の権限を渡して敵拠点と戦場の俯瞰を頼んだが、2割もあれば戦場全体を確認しつつ、後方部隊に気を付ける事もできる。
円形に情報を拾いながら、1点だけ探れば大体当たるからだ。
特に今回は敵が同じ方向に逃げてくれているからどこを探ればいいかわかりやすい。
ブラフの可能性や、遠回りの可能性も考えたが違ったとしてもその延長線上をと考えればいいのだ。
一から計算すると面倒極まりないが、基本的にコンピューターに任せれば問題なし!
こういうのは機械に任せるのが一番楽なんだよなぁ。