表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/106

やっぱディストピアじゃねーか!

「なにやってんですかねぇ……」


「今回は俺は悪くないぞ」


 船に戻りメリナの詰問に応えていくが、これだけは言っておく。

 俺は悪くねえ! 俺は悪くねえ!


「まぁ確かに、向こうには前科が色々あったみたいですけど……少し考えればわかりますよね? アナスタシアさんみたいな華奢な人が大暴れしてギルドに行ったらどうなるかくらい」


「せいぜいがチンピラに絡まれる程度だろ。運が良ければ酒でも奢ってもらえるかもしれん。実際ただのチンピラだったし」


 あれなら身体強化してなくても勝てたな。

 銃は確かに怖いが銃口が向いていない所に弾丸は飛ばない。

 近づいて腕をきめてしまえば一方的に勝てる相手だ。


「チンピラと言いますが、調べたところ怪しい事していた形跡が軽く3桁、実証できたものだけでもその倍はあるんですよ?」


「そんなの野放しにしているギルドが悪い」


「あのですね、傭兵というのはどこ出身であろうと傭兵国家ベルセルクの国民として扱われるんです。あそこは治外法権、普通のコロニーじゃ表立って問題起こさなければある程度は黙認されてしまうんですよ」


「仕事しろよ外務官……」


「しているから今回釈放されてお咎めなしだったんです。むしろ手札が増えたと上は喜んでいるでしょう」


 手札ねぇ……それあんまり意味ないと思うな。

 相手は国家で、こっちも国家。

 だけどこっちの腹の中には虫がいる。

 傭兵なんてピンキリだが宇宙海賊よりも厄介な連中だからな?

 自爆覚悟ならコロニー内でミサイルぶっ放せばそれだけで大惨事起こせる。

 そんな相手に変な札出したらどうなるかわからんぞ。


「なにを考えているかはよくわかりますが、上もそこまで馬鹿じゃないですよ。被害は最小限に、敵へのダメージは最大限にが基本です」


「人間を数字でしか見てないタイプの言い草だぁ……」


「そりゃ個々人まで考えてたら宇宙での生活なんてできませんよ。昨日までの隣人が今日の宇宙海賊、そんなもんですよ?」


「おっかないな、俺の所じゃ昨日までの隣人が今日の宿敵で明日の友人だぞ?」


「一回宿敵挟んでる時点で同類ですからね? それに友人って……殺し合った相手と仲良くなれる方が不思議です」


「割とよくある話だったぞ。敵対陣営にいたけど戦ってみると同じような戦法だったり、あるいは自分に足りない部分をカバーできるような戦い方してて連絡とったら意気投合とか」


 まぁゲームだからこそだけどな。

 無論船をロストした場合はそううまくはいかないが。

 意外とあるものだが、その常識をひっくり返す連中も結構いた。

 ランカートップの奴とか一人で戦況ひっくり返すからイベントになるとあらゆる陣営から声がかかるんだよ。

 そしたら最終的にリアルマネー持ち出してきたりする連中もいて、中には犯罪ギリギリな事もやってくる輩まで出て、運営がこれはいかんと共闘型の個人イベントを増やしたりしてた。

 チーム形式じゃトップランカー10位くらいまでを集めて、NPCの機体と並べて一つのチームにされたりもしてたな。

 結果一人勝ちしてその手のチームバトル系イベントは出禁になってた。

 公式出禁、別名殿堂入り、なおネカフェ名義のアカウントで参加して滅茶苦茶に引っ掻き回していった模様。


「未開惑星だからな、人口も少ないし敵対なんて一瞬だ。明日は誰が敵になるかわからない、なら気が合うやつ、背中を任せられるやつと仲良くするのは当然だろ?」


「それは……そうなんですか?」


「そうなの。以前話した宇宙怪獣の一件だってやばかったぞ。敵対関係にある奴らもその時ばかりは共闘してたし、味方同士で連携取らないと母星が滅びてた。まあ……一人突出した馬鹿がいたがそいつの活躍無ければ俺たち全員死んでたな」


 しつこいようだがゲームでだけどな!

 少なくとも当時使ってたプロトロマノフは大破、それを改修して今のホワイトロマノフがあるわけだが。

 予備として使っていたサツマって言う船と合わせて今の形になった。

 武装は近接ブレードオンリーの馬鹿みたいな機体だが機動力と運動性はホワイトロマノフより3段階くらい上なんだよ。

 その分操作が難しかったけど、ホワイトロマノフもちょっと細工してあるから同じような動きはできなくもない。

 やらないけどな。

 少なくともリミッターを5段階くらいかけて、セキュリティはスタンドアローンで孤立させているから物理的に乗り込まないとどうにもできない。

 おまけにそこにたどり着くまでに認証が10回くらいあって、俺の認証以外は受け付けないようにしているから万全だぜ!

 ……いや、フラグっぽいな。

 やめておこう。

 口に出さなければフラグは成立しないからな!


「ともあれ、無事釈放されたわけだし金も手に入った。面倒なあれこれもそろそろケリがつく。この辺りの稼ぎも減ってきた。となればだ」


「次の狩場に行くわけですね?」


「おう、どこに行きたいかとか希望あるか? というか俺はその辺疎いからわからないんだが」


「そうですねぇ……この辺りだと7つ先の星系の治安が悪いみたいです。宙域の4割がレッドゾーンですね」


「4割って……行政仕事しろよ」


「してるから4割で済んでるとも言えます」


 ……やばいな、この世界本格的にディストピアだぞ?

 戦力と金とコネが無いと詰んでたな……危なかったぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ