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ギルド

「あー、出撃前の宇宙海賊船46隻撃破に拠点への大規模攻撃による多大な損害……ランク詐欺もいいところと言いたいが」


 ギルドの受付に一番乗りして報告を済ませる。

 あらゆるデータが管理されているのでこの辺で虚偽を疑われることが無いのは救いだ。

 まぁあまり過信すると足元すくわれるんだがな。


「良い知らせと悪い知らせがある」


「悪い方から聞こうか」


「まず今回の仕事だがギルドとしてランクアップの条件を満たせていない。戦闘記録が無いので動いていない的を撃っていたのと変わらない扱いだ。とはいえ賞金は出るし、当然だが仕事の代金も支払われる」


「ランクはどうでもいいが金に関しては当然だな。どっちか片方でも渋ってたらお偉いさんの所にカチコミに行ってたぞ」


 今回の仕事はコロニー運営の依頼だ。

 要するに治安維持の一環だな。

 そのうえで料金渋るような真似したらメリナ経由でもっと上の人間にクレームぶち込んでた。


「で、良い方の知らせってのは?」


「今回の仕事でMVPとして認められるだろうってことだ。つまりお上からボーナスが出る。ついでにギルドも被害を最小限に抑えたという事で表彰……つっても式なんざやらないでお前のライセンスに特別な功績を挙げたという記載がされる事になる。今後傭兵仕事をしていくなら持ってて損はない」


「具体的にはどのくらい得する?」


「そうだな……例えばランクが今の物より少し高い仕事でも承認が下りやすい。それに提携企業からのサービスが割引される。あとは一目置かれるってところだな。俺達はその記載をキーと呼んでいるが、文字通り鍵だ。中堅でもこいつを持っている奴はそれなりに名が売れるようになるぞ」


「宣伝に使えるってことか。まぁそれを使って偉そうにしてると後ろから撃たれそうだがな」


「よくわかってるじゃねえか。荒くれ者ぞろいだからな、特に宇宙じゃどんな死に方をするかわかったもんじゃねえ」


 わかりやすい暗殺方法なんかじゃ相手の船に乗り込んで、乗組員ぶち殺して時限爆弾セットして終わりだからな。

 これならドッキング履歴は残っても撃破履歴は残らない。

 そういう方法で簡単に人を闇に葬れるのだ。

 まぁ他の方法だと乗組員として搭乗、からの毒殺だな。

 そんで遺体は感染症予防のために宇宙に棄てたと言えば船も手に入って丸々大儲けとなるわけだ。

 そこまで上手く行くのかと聞かれたら、上もそんな細かいこと調べるほど暇じゃないと答えよう。

 ぶっちゃけ色々調べたが、この世界の警察とか治安維持機構はザルもいいところだ。


 表向きの、それこそコロニーや居住可能惑星での安全保障は完璧と言って差し支えない。

 街中やコロニーで携行している武器を抜いただけで近くのセキュリティが飛んでくる。

 物理的に。


 だが宇宙空間に出た場合ログを調べて、怪しい所が無ければどんな内容でも深堀することはない。

 無法地帯と言っても差し支えないな。

 更に言うならそんな奴らがコロニーを闊歩しており、またコロニーの一部区画なんかは一般人立ち入り禁止レベルのスラムになっていたりする。

 それこそ非合法の薬物とか売りさばいている連中がゴロゴロいるわけだが、セキュリティはスラムに押し込めておけるならいいかと放置しているようだ。

 普通の区画に持ち出した瞬間ズドンだけど。


 この広い宇宙、命は空気より軽いのだ。


「もとよりこれ以上クルーを増やす予定も無し、仕事を堅実にこなしていくつもりだ」


「それが一番だな。だがクルーを増やさない理由はなんだ? それなりに人数いた方が便利だと思うが。少なくとも女二人旅は勧められないぞ?」


「サイボーグゴリラとバイオニクスゴリラの乗ってる船だからその心配は無用だが、とりあえず人数が増えると船長として管理が面倒くさい。あと信頼できる仲間なんてのは早々手に入らないもんだからこそありがたみがあるというもんだ」


「なるほどな……なら傭兵ギルドからの斡旋ならどうだ?」


「乗り気はしない。うちの船は色々な意味で特別製だ。少なくとも自分の船を持ったら出ていくだろう相手を一時的にでも乗せるのは断りたいな」


「いいなお前、冷静に先を見据えてる。長生きできるぞ」


「そりゃどうも」


 ギルドで金を貰ってそそくさとその場を去る。

 そろそろ入港列を抜けた連中が入って来る頃だろう。

 そう思って外に出ようとした瞬間だった。


「よう嬢ちゃん、あんたの船について聞きたいことがあるんだ」


 ……なんでこういうフラグは踏み抜くかね、俺は。

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