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サブカルー

「できました、データは先方に送っていいですね」


 神妙な顔つきでメリナが要望書を差し出してきた。

 特に問題なさそうに見える。

強いて言うなら書き加えられた一文があって「今後必要以上の監視をしない、普通の傭兵と同じ扱いをすること」と記されているくらいか。


「これって書かなきゃダメか?」


「自由を要求するだけでは何かしらの理由をつければこちらの時間を買えますから」


「あー、依頼という形で拘束ができるってわけか。盲点だった」


「ふふん、見直しましたか?」


「あぁ、素直に見直した。俺じゃ気付けなかったよ」


「……たまに一人称ブレますよね。それに俺という一人称の方がなれているようにも」


「鋭いな。まぁ秘密だけど」


 いかんいかん、メリナの前じゃあまり気を抜けないな。

 まぁその生活ももう終わるんだが。


「あ、返事来ましたよ」


「早いな。全部飲むって?」


「えぇ、こちらの要望は全て了承。支払い手続きに三日貰うとだけ」


「許容範囲だな。じゃあハンガーに向かってくれ」


「すでに向かってます。私は行動も早い女ですよ」


 胸を張ってそう宣言する彼女は、なんというか歳相応の子供らしさが見て取れる。

 今までの気を張った感じは立場も考えての事だったんだろう。


「あぁ、先方にはこう伝えてくれるか? 部屋に入ってこいって」


「いいですけど……どうしてまた?」


「んー、ちょっときな臭い事もあるかなーと思ってな。そういう時俺等だと室内の方が動きやすいだろ」


「はぁ……まぁいいですけど」


「あとこの部屋とハンガーを直通にしておいてくれ」


「注文が多いですねぇ。ま、やっておきますからコーヒーでも飲んで少しはしゃきっとしておいてください。あと服装、もっとちゃんとしたやつ着て!」


「悪いがそれはできないな」


 真剣な表情を作る。

 実際できない理由があるのだ。


「まさか……今回の交渉相手を信頼していないのですか?」


「単純に動きやすい服装が好きなだけ。このままベッドに行けばゴロゴロできるしな」


「心配して損しましたよ!」


 ばたんと音を立てて扉を閉めたメリナ。

 さて、今のうちに仕込みをしておくとして……枕の下に銃は鉄板だよな!

 あとはカーテンの裏にナイフとか、テレビの裏にも武器を仕込みたいところだがこのご時世にはもうテレビなどという物体は過去の遺物らしい。

 今じゃテーブルにおける板でホログラム映像を流す仕組みになっている。

 これがテレビであり、小さな水晶みたいな映像記録媒体をセットするだけで映画とか見られる優れものだとか。


 今のところ個人的な趣味で糞映画しか見てないが、それでもなかなかレベルが高い。

 少なくとも予算の都合つかなかったインディーズレベルですら地球ではアメリカンな大手映画会社の映像に引けをとらない。

 そんな状況で神映画と称賛されるものを見てみろ、筋トレの合間に動画を見ていた俺、当然サブスクとかで映画も見ていたわけだがそういうの大好き人間だぞ。

 脳が耐えきれずにパーンするか、あるいは未来すぎてついていけないかのどちらかだ。


 読書なんかも嗜むが、ファンタジーな話はあまり存在しない。

 サイオニックという、まぁ超能力的な分野の研究も進んでいるからか魔法というものが未知の存在ではなくなってしまったのが大きいだろう。

 ただやはり主人公が最強な物語や、歴史ものは人気らしく剣と魔法の世界でSF兵器無双みたいな話はちらほらあった。

 問題点があるとすれば固有名詞がようわからんこと、武器のジャンルで知ってるのブラスターとスプリッターくらいしかないねん……。

 ピンポイントで相手の心臓だけ止める歩兵武器とかなにそれこわっとしか言えない。

 そんなの使われたら俺もメリナもいちころだな……いや、あいつ効くのかな?

 その辺もサイボーグ化の際にいじってそうだからワンチャン……。


 あとは音楽だが、ジャズかブルースが多かった。

 ポップ系のはあまり存在しなくて、有名な傭兵や兵士が好むような曲が多かった印象だ。

 もちろん無いわけではないが、探すのに一手間かかると言った感じ。

 アングラなアイドルなんかは皆無、どうやら職業適性審査みたいなのがあるらしく軽いディストピアのような様相を示していると言っていい。

 ま、死にかけの人間にそのまま死ぬか駒として生きるかを迫る世界だ、相手が赤子となれば当然のごとくそのくらいはあるだろう。

 用心するに越したことはないな。


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