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意地悪だよぉ!

 そう思っていた時期がありましたよくそったれ!

 敵中枢にいた指揮官らしき存在を撃破した、そこまでは順調だった。

 だがこいつらは傭兵ではなかった。


 考えてみれば当然か、傭兵は忍ばないというのが鉄則。

 なぜなら「敵は沸いて来れば沸いてくるほど美味しい賞金」であって、これだけの規模で展開できる傭兵ならばこちらをいたぶり、逃がして適当に追いかけてくるだろう。

 あるいは増援要請でもさせるかもしれない。


 だというのにわざわざ隠れて攻撃してきたことから想像するべきだった。

 こいつらは軍人、それも宇宙海賊を秘かに消していくタイプの厄介な連中だ。

 本来大規模に行われる宇宙海賊殲滅戦、その前に行われるのはそれなりに力を持った相手をそうとは悟られないように、そして巣穴に逃げ込まれないように叩き潰す軍隊が存在すると聞いた。

 その手合いだったのだろう。

 独立行動の多い部隊だからこそ指揮系統はしっかり固められている。

 安全地帯から適時目標をリストアップして送り込まれてくる暗殺部隊、最初からこいつらは頭を切り離した働き蜂の群れだった。


「目標ポイントA-4775に向けて撃て!」


「言われなくても!」


 無愛想との連携も難なく行えるようになってきた。

 とはいえこちらのミサイルは品切れ、放出した分も爆発させて残りは無い。

 あるのはドリルが二つだけであり、あとは敵機を利用した質量攻撃だけだ。


「何か逆転の手段を……」


 考える余裕がないほどの弾幕の中、それでもわずかな余裕を見つけては周囲を探索する。

 何かないか、なんでもいい、使える手段、逃げる方法、殲滅せずとも撤退させられるだけの……撤退?

 そうかそれがあった!


「チャージ完了次第ポイントE-1049を攻撃しろ!」


「そんなところを撃ってどうする!」


「いいからやれ! それとも最終講習で二人揃って撃墜されましたって書かれたいか!」


「くそっ、やってやる! それまで時間を稼げ! 30秒だ!」


「上等!」


 正直厳しい時間だ。

 援護抜きでそれだけの時間を稼ぐというのは無茶と言ってもいい。

 だがやってできない事はない。

 鈍足であろうとも、やってやれないことはない。

 問題があるとすればこの作戦が成功するかどうか、そんな事を考えるのは無駄かもしれないが一筋の不安は残る。


「コンフィグ編成、機動ペダルにて移動設定! 電子戦準備開始! 敵機撃破済み機体を全てレーダーに展開!」


 音声入力にて行われた全てが即座に実行に移される。

 足元の車のペダルにも似たそれが一気に10個に増えて操作が難しくなるが、できなくはない。

 流石に精度は落ちるが回避そのものは可能だ。

 そして電子戦、これは海賊が行う攻撃の一つだが一般的な船も使用可能な技術であり、要するにハッキング、あるいはクラッキングだ。

 相手の船のコンピューターを乗っ取りこちらの意のままに動かす事ができるようになる、言いかえるなら内部の空気を全て抜いてぶっ殺す事もできるような、生殺与奪権の奪い合いとなるものだが狙いは生きている相手じゃない。


 レーダーに映し出した撃破済みながらに損傷の少ない機体である。

 コックピットを潰されれば当然対処可能な人間はおらず、できるのは自動防衛プログラムによる防御のみ、一つ抜ければ同一プログラムで守られている船ならば一瞬で突破できるようになるようなものだ。

 まずはその一つに集中する。

 電子戦開始、敵機の防衛プログラムは優秀だが融通が利かないところがある。

 ならば自己矛盾を発生させることで回路の一部を破綻させることで穴をあけられる。

 それをこじ開け、大事に守られている心臓部を掴み……。


「取った! 撃墜済みの艦を全て配置しなおす!」


 コントロールこそ奪ったが武装は無理だ、そっちは別の……それももっと強固なプログラムで管理されつつ敵軍全体で監視されている。

 だから今できるのは移動がせいぜい、だがそれで十分。


「おらよっ!」


 近くに来た機体を足場に敵のコックピットのみを破壊する。

 続けざまに移動しながらの破壊、あと20秒。


「そこだっ!」


 さながら艦隊指揮のごとく敵機を操り移動させながらこちらもダンスゲームのごとく足を動かして移動と攻撃を繰り返し数を増やしていく。

 これで残り10秒。

 あとはできる限り敵を一か所に集めつつ、目標ポイントに最大速力で船を向かわせてジェネレーターのリミッターを外しつつ、一番足の速い機体にしがみつきながらポイントへ向かう。


「今だ!」


「当たるんじゃねえぞ!」


 打ち出されたビーム、それは俺が集めた機体群を貫き一瞬の静寂をもたらした。

 直後、既に機体から脚を離して離脱した俺に多大なGが襲い掛かる。


「ぐっ……」


 リミッターを解除しオーバーヒートさせたジェネレーター、それがいくつも同時に爆発を起こしたのだ。

 それこそ追いかけてきた連中を巻き添えに、欠片も残さないほど消滅させる程度の威力で全てを薙ぎ払いながら。

 ダンゴムシの頑丈性と、そして相手にしがみつけるという特性があるからこそできた行動だ。

 敵軍の2割を攻撃で破壊し、それらをかき集めた爆発で4割を吹き飛ばした。

 ここに真っ当な指揮官、女王蜂様がいれば見抜けたかもしれない単純な罠だがこちらを殺す事しか考えてない働き蜂の集まりだと逃げてるようにしか見えなかっただろう。

 これでようやく手札が揃った。


 武装だけみれば俺はドリルしかないが、だからこそ近寄ってほしくない。

 だがこちらばかりに気をとられていては無愛想に撃ち抜かれる。

 さて、ここにいない指揮官が真っ当な相手ならここで退却を選ぶと思うがどうくる……6割の損耗、たった二隻相手に半分以上を失った。

 これはある種の賭けに近い。

 ここで引いてくれれば終わるが、総力戦で犠牲覚悟で潰しに凝られたら対処はできても同じ方法は使えず、そして打開策も無くなる。


 数秒の睨み合いが続き、そしてその時は訪れた。

 まるで空間に飲み込まれていくように敵がワープアウトしていく。

 離脱を選んでくれたらしい。

 ……ふぅ、これで終わりか。


「さぁ! 決着をつけるぞ糞女!」


「あ? あぁ、お前に一言、いや二言いっておくか」


「なんだ」


「一言目、よくやった」


「なっ、急に何を言う!」


「二言目、ばーか」


「お前……」


 銃口がこちらに向いたというアラートが鳴り響くが無視、それに構うまでもなく先ほどまでスクリーンに映し出されていた映像は消えて特殊な技術で再現された操縦席もただの椅子に戻った。


「はい、お見事でした。これにて最終講習終了となります」


「あぁ、本当に疲れたよ……先に飯食っておいてよかった」


「あら、先に食事した人は大体シミュレーターを吐しゃ物で汚すんですけどね」


「いや、栄養を摂取してなかったら頭が回らず負けてたな。状況から察することもできるが……まぁその辺の説明は私よりあいつにしてやるといい。まだ理解していないようだからな」


「そうですね、音声を切っていますが色々文句を言っているようですし」


 はぁ……もう少しあいつも勉強した方がよさそうだな。


StarFieldのシミュレーターは許さん、スキル上げに使うが許さん

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