やべーのできた!
しばしのティータイムを終えてアルマにレナを引き渡し、俺達は退散する事にした。
もう少しのんびりしてもいいんじゃないかと言われそうだが、まだ仕事が残っているのでな。
……とか考えてたら、最期の仕事は普通の荷運びである。
ただ単純に飛び回る宙域が面倒くさかっただけなので特に語る事は無い。
具体的に言うとマザー周辺の荒れた宙域よりはちょっとマシ程度の場所を延々と飛び続けて、荷物を受け取ってはおろしの繰り返し。
強いて言うなら途中で宇宙海賊、それもかなりなのある相手と見受ける輩に出くわしたくらいだった。
いや、普通に強かったんだけど、結局その程度。
ルディが全方位爆撃かまして退路絶ったところに反物質砲ぶち込んで消滅させた。
まさに語ることも無い、傭兵の日常といった感じの仕事だったな。
「つーわけで全部終わったぞ、所長」
「ご苦労、こちらも任務完了の報告は受けている。随分派手に立ち回ったな」
「その必要があっただけだ。本当ならもっと静かに暮らしたいもんだがね」
「ははっ、どの口が言う。それよりお前のアンドロイド、完成したぞ」
その言葉に報酬云々の話は吹っ飛んだ。
確かに前払いみたいな形で腕輪型デバイスを貰っていたが、それ以上にアンドロイドのマリアをやべー性能に仕上げてくれるというのが今回の目的だった。
ついでに金ランクへの昇格もあるのだが、それは実のところどうでもいい。
銀ランクなら大抵の仕事は受けられるし、それなりの収入になるから多少贅沢してもお釣りがくるような日々を過ごせる。
具体的に言うと毎日食費に1万円くらいの金額ぶち込んで、三日に一度ゲーム買って、1週間に1回高級ホテルで寝泊まりできるくらいに稼いでいる。
それでいて貯金もできる程度の額が入ってくるのだ。
これ以上は手に余るというのが本音だけどな。
「で、マリアの調子は?」
「あー……過去に例を見ないというか、空前絶後というか……」
「アンドロイドの組み上げに使う言葉じゃねえな」
「見てみりゃわかる」
そう言われて案内された先で見たのはラフな格好をして、目鼻立ちが整った美人。
俺が注文したマリア本体と、そしてオプションパーツと呼ばれた物達だった。
……本体を1としよう。
対してオプションパーツが100くらいの割合になっているんだが?
「俺から説明しよう。あのオプションパーツには複数種類があってな。室内戦闘を考えた物、宇宙空間の戦闘を考えた物、空中戦を考えた物、そして全部を想定したものがある」
「水中は?」
「本人の膂力だけで十分だ」
「そか」
「続けるぞ、それぞれ特色はあれど内容は同じ。アンドロイドを繋いだらあとは本人の意思で動かせる」
「人間……サイバネティック手術で強化してても使えたりするか?」
「無理だ、エネルギーが足りないし動かせても本人がバラバラになる」
メリナがバラバラになるレベルの推力か……え、それに耐えられるの?
マリア大丈夫なん?
「言わんとすることはわかる。サイバネティクス系がバラバラになる出力に耐えられるかという話だろう。有体に言ってしまえばオプションパーツ付きでブラックホールに突っ込んでもそのまま突破できるだけのパワーと頑強製を兼ね備えている。もちろん耐反物質も万全だ」
「だれがそこまでやれと」
「最高の仕上がりをと言われたからうちの連中が好き勝手に改造していってな……結果、合法違法問わず最上級の品質を持ったアンドロイドが完成したわけだ」
あー、そういう作る系のゲームで言うところの品質999みたいなあれか。
結果として飛んでも兵器が完成したという事になるが……待てよ、これって結構重要案件だな。
俺がホワイトロマノフを操縦する、メリナとノイマンが補佐につく。
で、ルディが相手を足止めする役割として、マリアが小型偵察機を兼ねた突撃隊長になれば合計3機による包囲戦もできるようになってくる。
……いや、包囲する前にオーバーキルになるけどさ。
「ちなみに反物質砲とミサイル持ちだ」
「どうしてそこまで本気出したん?」
「そりゃ隙に改造していいって言われて、上限を突けなかったお偉方が悪い」
「だなぁ」
「あとちょくちょく確認しなかったお前も悪い」
「だなぁ」
「そしてなにより、こんなになるまで放置してた俺も悪い」
「そうだよなぁ!」
所長の胸ぐらをつかみたくなるのを必死にこらえたよ、糞が!
まぁ戦力が増えるのは悪い事じゃないんだけどさ……今うちの人口比率、人間の方が少数なのはどうなん?
人間は俺とメリナ。
人外はノイマンにルディ、そしてマリアとなるわけだ。
……肩身が狭いわけじゃないが、たぶんついていけない話とか出てくるんだろうなぁ。




