物騒なティータイム
ルディのデータを送信しながら俺とメリナはアルマと一緒に優雅なティータイムである。
いや、その辺全部ルディがオートでやってくれるからね。
あとあっちもマザーとティータイムもどきをしている。
有体に言えば補給作業だな。
アロアニマのルディにはオイルと仮想いうの必要ないんだが、一部機械部品を使っている。
そこら辺の調整をしながらなので……どっちかというと整体受けながらの会話か?
ノイマンは改めてアロアニマについて研究したいという事で、限定的ではあるが情報の開示が許されている範囲+αを見ている状況。
アルマの権限で普通じゃアクセスできない所まで見せてもらっているからな。
こちらでもハッキングはするなよと伝えたうえで、そもそも生体が相手だからできないというお言葉をいただきのんびりできているわけだ。
……ハッキングできてたら俺かメリナがお目付け役をしなきゃいけなかったからな。
「それで、現代兵器とアロアニマの組み合わせ研究はどんな塩梅だ」
「んー、上手く言ってるようなそうじゃないような……」
「なんだ、歯切れが悪いな」
「局所的に見ればうまく行っているんですよ。例えば現代兵器のロマンを理解した者達や、その機能美に惚れた者達が好んで使ってます。中にはエンジンを取り込んで大幅なパワーアップをしたのも」
「悪い事じゃないが、ところどころ引っかかるな」
「……スチームパンクや現代兵器以前の、いわゆる旧型とかに興味を持つ者もいまして」
「効率より見た目を選んだか……あるいはその非効率性に興味を見出したか」
「両方です。前者だけなら外観をそれっぽくするだけでいいんですが、後者に興味を持った者は逆にパワーダウンしているんですよね」
まぁスチームパンクとか旧式という言葉にロマンを感じるのはわかる。
何なら俺もそういうの大好きだから。
「つまり結論を言ってしまえば、個性があるために研究は一進一退ってことか」
「そうです。かといって個々人の好みを否定するわけにもいかず……」
だろうなぁ。
モルモット相手だろうと餌の好みが出てくると聞く。
それがもっと高次元で知性を備えた相手となると、まぁまともなやり方じゃ通じないわな。
「結局どんな結論に至ったよ」
「研究班をいくつかに分ける事で現代兵器をメインとしたグループと、それ以外のグループになりました。一応均等に……あぁ、浪漫を理解する人間と実用性を重視する人間をという意味ですが、均等に分配できたと思います。なので大きく見れば研究は飛躍的に進んでいますが……」
「やっぱり細かく見れば問題だらけと」
まぁそうだよな。
ビーム飛び交う戦場で、蒸気のパワーで弾丸をぶっ放す……それこそ大砲でも使うような旧式兵装がどこまで役に立つかという問題がある。
そもそも音速を超えるデブリが飛び交う戦場で、ただ鉄の塊を飛ばすだけの機体がどれだけ役に立つかと言われたら……ないよりマシ、程度かな。
「あ、でもスラスターとかの効率は誰が見ても文句なしに上昇してます。追加装備としては靴くらいの感覚なので奇抜な物より実用性を重視する傾向が多いですね」
「という事は武装はアクセサリーか……そりゃ完全に行き詰ったな」
自信満々に語るアルマだったが、俺の一言で撃沈した。
「そうなんですよねぇ……彼等、種の存続とかも知ったこっちゃ無いので完全に好みだけで動いてます……だからこそ浪漫主義なんてのも生れるわけでして……」
「一応アドバイスしておくとあまり締め付ける必要はないぞ。俺のホワイトロマノフ、あれ完全に趣味で組み上げた船だ」
「……その趣味は実用性も込みですよね」
「そりゃそうだが、趣味ってのを突き詰めると今度は実用性やら機能美にも目が行くようになる。まだその辺未熟なアロアニマがどんな成長をするか。もしかしたらスチームパンクを現代兵器並みに改造し始める個体だって出てくるかもしれない。何ならそれを促す奴がいてもいいと思うぞ」
「後押し……なるほど、それは盲点でした」
まぁ研究者の立場としては、いい方は悪いが被検体の意見なんて半分くらい聞き流すくらいじゃないといけないだろうからな。
互いに語り合ってというのは今までそんなになかっただろう。
やってたとしてアルマくらいだろうし、そのアルマに限っても研究と自分で乗るのは別物と割り切っていた可能性が高い。
「せっかくだ。簡単に説明してやるとホワイトロマノフのコンセプトは強さだ。超高速で動き回って、機動力でひたすら回避。シールドと装甲を厚くして砲撃は一撃必殺。これ超強くねというのを突き詰めたパイロット度外視の浪漫機体だ」
「なるほど……それは確かにある種の浪漫ですね。いわゆる最強へのあこがれといいますか」
「限界への挑戦もあるな。このサイズで戦艦を落とせる火力を持てるように無茶をしたもんだ」
「それだけの火力となれば……はい、確かにかなり無茶が必要かと」
「それだけじゃない。こいつはオートジャイロやオートバランサーが搭載されてない。完全にパイロット依存の機体で、あとは目的地まで勝手に飛び続けるオートパイロット機能以外はほぼ俺の手動だ」
「乗る人間によって大きく性能が左右される……それ、兵器としてどうなんですか?」
「良し悪し半々。まず奪われたとしてもまともに動かせない相手なら簡単に対処できる。逆に凄腕パイロットや、こいつに慣らした奴はある程度動かせる。流石に俺並みに動かせるやつは少数だろうから代わりがいないという意味で良し悪し半々だ」
「なるほど、専用機というやつですね。それなら確かに……」
なにやら考え始めたアルマだったが、ティータイムはまだ続くのである。
この紅茶もどき、趙うめえ




