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撤退戦

昨日更新できなかった分です!

「おっしゃ脱出!」


 車に乗り込み、アクセル全開でぶっ飛ばす。

 ついでに近くの車両に射撃しまくってぶっ壊して、閉じようとしているシャッターの類もレール部分を打ってぶっ壊した。

 流石にシェルターとして使えるような代物を破壊するだけの威力は無いから、そのレールを破壊して閉じられないようにするのだ。

 宇宙空間で、なおかつ小惑星を利用した代物だけに気密性がしっかりしている。

 つまるところマイクロ単位でかみ合うように作られているからこそ、ちょっとした歪みや爆発物の破片が問題になる。


 まぁ後者に関しては普通に踏みつぶされて終わるのだが、歪みになるとオートの修理機能を働かせたところで限界があるし、それも時間がかかる。

 流石にここが吹っ飛ぶレベルじゃないにせよだ。

 俺達が脱出する数秒くらいなら何とかなってしまうのだ。


「あばばばばばばばばば」


「シートベルト締めないと危ないぞ」


「今絶賛転がされてるのわからないかなぁ!?」


 レナが叫ぶが知ったこっちゃない。

 確かにトランポリンのように社内を飛び回っているが、こっちに跳んできた時は受け流してクッションに着地するようにしている。

 だが当人はその数秒後にはまた吹っ飛んでいるのだ。

 こればっかりは運動神経と反射神経の問題だから俺にはどうにもできない。

 そもそも安全運転などという言葉はここに存在しないも同然だからな!


「灰右カーブ!」


「ほぎゃああああああ!」


「からの左ドリフト!」


「ほげえええええええええええ!」


「約320度ターン!」


「あばばばばばばばばばば」


 入り組んだ道を進み、そしてようやく宇宙空間に出ようという頃だ。


「は、吐く……」


「まじか、エチケット袋どこだっけ」


「おろろろろろろろろろ……」


「あ、この野郎! 清掃代も貰うからな!」


「おかね……そんなに……ない……ガクッ」


 あ、気絶した。

 くそ、ゲロ臭いが追手は少数。

 そして眼前にホワイトロマノフとルディが主砲構えて待っている状況。

 わかりやすく臨戦態勢なわけで、シェルターすら破壊できないような車両軍じゃどうあがいても蚊の一刺しほどにもならない相手。

 当然のごとく散開して、遠巻きにこちらの様子をうかがっている。


 攻撃が来ないのでホワイトロマノフの方に着艦して、レナを引きずり降ろしてコックピットへ。

 ナノマシンやらIDやらパスワードやら生体認証やらをてんこ盛りにしているが、コックピットへの近道があるのでそこを使う。


「メリナ、状況は」


「先方から鬼電というんですかね、山のようにメッセージが届いてます。スパムですかこれ」


「いやマジもんだと思うけど……なんとなくわかるけど内容は?」


「クライアントを引き渡せと」


「ふむ……」


 まぁ予想通りと言えば予想通りではある。

 ただどうしたものか。

 眼前にホログラムとして映し出されたメッセージには先方のいい分が並べられているが、確かに法的にも諸々込みで正当性を訴えているようだ。

 実に正論、むしろ法的に不味いのはお前だぞという脅し文句まで書かれている。

 レナはこの鼠の巣穴の住民であり、今回のようなコンペティションに参加する場合こうなる事も受け入れているという内容が書かれている。

 だがその言い分が随分と上からでな……。


「……メリナ、誤射って何発まで許されるかな」


「どうどう」


 ちょっとイラっとしたので主砲の充填率を上げてみる。

 反物質砲だから跡形もなく消し飛ばせるが、流石に撃たないぞ。


「あ、小惑星から砲塔が生えてきました」


「なに?」


「一般流通している戦艦の物よりエネルギーの充填率が高いですね。それにチャージも早い」


 つまり高性能品ってことだ。

 がちがちに武装しているな、ヨシッ。


「ルディに伝達、撃て」


「え?」


「ほら撃つぞ、3、2、1、ふぉいやー」


「……小惑星消滅。いいんですか?」


 メリナが顔を青くしてたずねてくるが、問題ない。


「宇宙国際法であっただろ。一般市民の武装制限項目。それと正当防衛に関する諸々。こっちは威嚇のためにエネルギー充填率上げただけで、まだ最大出力じゃなかった。こっちから見たら一般戦艦並みの充填率をしていたあいつらが悪い」


 つまり高性能すぎて、普通の戦艦ならとっくにぶっ放せるだけのエネルギーを蓄えた砲塔がこちらに向けられていたのだ。

 そりゃ反撃されてもおかしくないよなという状況。

 更に一般市民は銃火器こそ持てるが、あのレベルの武装は国家の承認が必要不可欠となる。

 俺達傭兵もギルド所属で、諸々の講義を受けたうえで所持が許可されているようなものだからな。

 領土的にはヘパイストスの端っこなんだろうけど、そういうの抜きでやっている可能性が高いだろう。


 面白おかしい技術者連中なんて作れそうだから作った、使えそうだから使ったという行き当たりばったりをやりかねないと思っている。

 全員が全員じゃないが、そういうマッドもいるという事でここは収められる。


「というわけで帰るか」


「釈然としませんが……はい」


 実際向こうが攻撃態勢みせてくれなかったらにらみ合いのままじりじりと後退するしかなかった。

 そういう意味じゃ、助かったかな?

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― 新着の感想 ―
インド人を縦横無尽に高橋名人
 ううむ、暴食さんほどではないにしろ、随分と暴食さんムーヴに近い動きをしておられる。  まあ暴食さんなら逃げるどころか、内部で歯向かうの全部のして鎮圧して、その上で色々壊して悠々と帰るだろうけど。
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