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余暇

「また負けたあああああああああ!」


 盛大な台パンをかましてくれたのはクライアント様である。

 暇を持て余した俺達はトランプで遊んでいた。

 面白い事にこの時代になってもカードは消えておらず、ちゃんと紙のトランプだ。

 電子でも遊べるんだが味気ないのと、ノイマンの不正防止のためにもな。


「なんで勝てないのよ!」


「いいか、周りをよく見ろ」


「えぇ……?」


 クライアントの不機嫌そうな顔を見ながら辛うじて大貧民を逃れた俺はカードをシャッフルする。

 一見綺麗に混ぜているように見えるが、いかさまをしているが気付かれない。

 いや、正しく言うならメリナとノイマンにはバレているがスルーされている。


 こいつら、デックをいじる程度のいかさまは大した問題じゃないんだよな……。


「まず俺、動体視力滅茶苦茶いい。射撃タイミングを見極めることができるくらいに些細な動きに敏感でもある」


 トリガーに乗せた指の動きを追えるくらいには目は鍛えている。

 ついでに医療用ポッドで多少の治療をしたので両目共に5.0の視力を誇っているのだ。

 見え過ぎるから逆に眼鏡で補正するレベルになったが、メリナ曰くギャップ萌えとのことで今の数字を維持している。


「次にそこのメリナ、全身サイボーグ化されている。動体視力はもちろん瞬発力なんかも俺より上だ。あとうちではノイマンが来るまでデータの専門家だったし、今でもちょいちょいコードいじって遊んでいる」


 つまり電子戦はもちろん、単純計算では絶対に負けない人類の頂点みたいな奴だ。

 生きてるスパコンみたいな存在だからな。

 まぁ弱点はあるけど、カードカウンティングみたいないかさまは朝飯前。

 特に俺がデックいじくってるから数えやすくて、俺たち全員の手の内がバレていると見ていい。

 だから俺もメリナに勝てていない。


「そして電子の妖精ノイマン、メリナが生きてるスパコンならこいつは蠢く量子コンピューターだ」


 物理的ないかさまは不可能だが、そりゃもうくっきりと俺達の手札がバレていると思うべきだろう。

 ちなみに今まで麻雀などのテーブルゲームをしたが全部こいつが1位取っていった。

 辛うじて勝てたのは船を使ったシミュレーション戦闘くらいなもんで、それ以外はアナログも電子もゲームじゃボロ負けである。


「で、あんたはちょっとインプラント強化しただけの一般人」


「最初から勝ち目無かった!?」


「気付くのが遅かったな。子供でもすぐにわかりそうなもんだが」


「いや、だって……」


「言わんとすることはわかる」


 今回のクライアントは見た目からして荒事に慣れているタイプだ。

 なんというか、巨大スパナで男衆をぶちのめしていきそうな感じのタイプ。

 今でこそ余所行きの格好をしているから一般人に見えるが、実態はパワフルな女だと見受ける。

 脳みそまでマッスルな感じの。


 対して、まず俺。

 ジーパンと白ワンピの組み合わせで清楚に見せかけているので、一目見ただけでは傭兵とすら思われない。

 ちょっといい所の商家の箱入り娘と思われかねない様相をしているのだが、僧衣風にキャラメイクした結果今に至る。


 次にメリナだが、お堅い官僚という空気がいまだに残っている。

 つまるところゲームでいかさましたり、ドンパチするタイプには絶対に見えないという事だ。

 今もタイトスカートのスーツ姿だしな。

 普段表に出さない秘密兵器でもあるから、数少ない生身である脳みそに全部の筋肉が行っているんじゃないかというレベルで直情的だとはだれも思っていないらしい。

 周りの評価は美人秘書で大人しい文官という定評だが、実際はゴリラだし性豪と行っていいレベルで夜は激しい化物だ。


 そしてノイマン。

 見た目は可愛い妖精、中身はインターネットに解き放たれた悪鬼羅刹の類。

 興味の赴くままにデータ改ざんやハッキングを繰り返す様は見た目を当てにしてはいけない典型例と言える。

 実際こいつが作ったプログラムの大半は俺もメリナもまともに解読できない。

 というかそもそも俺はプログラムを読むとか無理で、メリナはマシンとため口きけるくらいにコードに精通しているんだが、それでもほぼ買い得不可能というのはもはや新しい言語を生み出しているようなものだ。

 そして暇つぶし感覚に暗号を作るので、ルディもホワイトロマノフも日々セキュリティが強化されている。

 素直に喜ばしいんだけど、もう俺たち全員その暗号突破できないから万が一の時は爆散しかねない恐怖もあるのだ。


 そしてこの場においてドローンで参戦しているルディは一見すればただの玩具。

 その正体は宇宙怪獣の端くれと言えるような存在であり、本体は俺達の身の丈よりでかい脳みそだ。

 つまりそれだけ頭がいいという事であり、IQなどの測定は人類基準でしかないというのもあるが測定不能である。

 人類の中に生まれる天然物の天才がいたとして、それを人工的に作り上げたのがメリナ、偶発的に生まれて育っているのがノイマン。

 それらの再現をしたのがここにはいないアンドロイドのマリア。

 そして人間如きと比較できるはずもない大天才のルディという立ち位置である。

 俺? 以前心療内科で調べてもらったけど97だった。

 うっかり対戦相手殺した後でナーバスになってた時期だったのもあって、数値が低めに出たんだろうという診断だったから普段は100ちょい位じゃないかとのことである。


「なんにせよ、あんたに勝ち目は最初からなかったわけだ。そもそも俺に勝てないのにこいつらに挑むの無謀の極みな」


 電子ゲームでもこのクライアントには余裕で勝てる。

 反射神経の問題というべきか、小足見てから昇竜余裕でした。

 FPSにしたってちらちら物陰からこっち見てくるし、弾避けようと之の字移動するけどあまりにも教科書通りの動きだから逆に当てやすかったりする。

 それ以外もシールドからの掴みとか簡単に引っかかるし、レースゲームだってドリフトして横腹に当てて落下防止&妨害が成り立つ程度にはやりやすい相手だ。


「ま、相手が悪かったな。賭けて無くてよかったともいうか」


「も……もう一回!」


「はいはい」


 フライトは順調、この調子なら明日には何事もなく目的地に辿り着いているだろうな。

先週は普通に更新忘れてました!

焼き土下座で反省……。

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